30年目のゼイラム
2021.08.18ゼイラムソフビキット復刻記念、竹谷隆之が再び挑む“超・造形世界”。
地球へ逃亡した生体兵器とそれを追う女バウンティハンター、そして彼らの戦いに偶然巻き込まれる不運な地球人たちの死闘を描いた、雨宮慶太監督のSFアクション映画『ゼイラム』がなんと2021年で公開30周年! そしてそれに合わせて、海洋堂より、映画公開当時に販売した本作のメインキャラクター、ゼイラムのソフビキットの復刻が実現した。ちなみにこちらのキット、映画撮影にも使用された竹谷隆之製作によるコンセプトモデルをベースに、竹谷氏自身が製品化のためにディテールを加えたという、ある意味プロップレプリカとも呼べる逸品。現在の目で見ても全く見劣りしない造形は、本作を知らない若いクリーチャーフィギュアファンも必見である。
今回はそんな名作キット待望の復活ということで、原型を手掛けた竹谷隆之自身に作例製作を依頼。谷口順一とのタッグで、キットを活かしたディテールアップ版と大胆アレンジの末に誕生したオリジナルゼイラム「女ゼイラム」の2体を製作した。
ディテール追加でゼイラムの和風テイストを強化!
30年の時を経てゼイラムのソフビキットが再販されるということで、作例を作る機会をいただき、せっかくなので「キット尊重アレンジ」と「好き勝手アレンジ」の2パターンを作って楽しませていただきました!
まずは「キット尊重アレンジ」。キットは右手に銃を持つ仕様になっていますが、今回はゼイラムなどの初期の雨宮慶太作品に貫かれる日本古来のモチーフをSF的にアレンジした“宇宙の和風”を強調するべく、錫杖(に見えるもの)を持たせることにしました。他には、細かい装飾を付け加えたり、マントの端のバサバサ加工、眼にLEDを仕込んだり……このゼイラムは仕上げまで谷口順一さんに担当していただきました。(竹谷)
こんな『ゼイラム3』が観たい! 竹谷隆之、大胆アレンジで女ゼイラムを作る!!
「好き勝手アレンジ」のほうは、まあキャッチーなのに越したことはないので“女ゼイラム”にしてみました。昨今、艦船や飛行機、怪獣や戦国武将までもが女子にアレンジされる時代ですので! 加えて個人的に“こんなゼイラム3が観たい!”という下心も! 作り始めた当初は、原作者であり監督の雨宮さんにも知らせず勝手に楽しんでいたのですが、撮影の3日前に良心の呵責に耐えかねメールしましたら「もっと艶っぽく」と言うので「最後にクリアー吹きます(意味が違う)」と答え、さらに「みんなが欲しがるように」とも言うので、「製品原型じゃなくって改造作例です!」的なやりとりでことなきを得ました(得たのか?)。
作業は、ある程度の下ごしらえを僕がしたところで谷口さんに引き継いで、仕上げをまた僕が担当しました。使用したキットのパーツは頭部まわりと右肩の武器、装飾の一部くらいです。体は畏友・韮沢靖が所有してたジャンクパーツの中にあった裸体女性素体(出処不明)のポーズを変えて糸ハンダ貼り、つま先はたぶん牙狼系の何か、腕はスカルソルジャー、左手先は縄文傀儡、マントは昔作ったコトブキヤのコルム……と、身近なもので構成しました。カサ(ゼイラム本体)の後ろから伸びる骨はたぶんイタチ、肩に巻いたのはヘビで、骨オヤジこと斉藤淳司さんにいただいたものです。背中に貼ったのは北海道で拾ったカモメの腰骨。カサから伸びた骨の先端はタラの下顎。大腿部外側に貼ったギザギザは戦車プラモデルの軟質素材キャタピラをカットしたもの。他のギザギザは別の仕事用にデジタルで作ってもらったものの副産物です。
色は、以前『仮面ライダーZO』という映画の現場で脚本にないキャラを出そうと雨宮さんが突然言って「ライダーの緑の反対色の赤にしよう」ってことになったのが面白かったので、それからというもの、何かっていうと赤に塗りがちです!(竹谷)
海洋堂 ソフビキット ゼイラム改造
ゼイラム
製作/谷口順一
女ゼイラム
製作・文/竹谷隆之
造形協力/芹川潤也・磨田圭二朗
骨素材提供 /斉藤淳司(骨オヤジ)
ゼイラム ソフトビニール製組み立てキット
●発売元/海洋堂●13200円、10月25日再販予定●約34cm●原型/竹谷隆之●ソフビキット
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