『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。オルフェウスらの協力によりハクバ救出作戦は成功する。日が暮れ始めた九海港では黒の騎士団員たちによる回収作業が慌ただしく行われていた……。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
モデル製作 おれんぢえびす、コジマ大隊長
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.014|『私のことはMとお呼びください』
日が陰りを見せ始めた九海港。コンテナが積み上げられた港に、輸送車両や救護用の医療車、破壊されたナイトメアを移動させるための重機など、黒の騎士団の車両が何台も乗り入れられている。オルフェウスたちとリビングナイツとの戦闘はすでに終わっており、ドクの通報で駆け付けた黒の騎士団員たちが、慌ただしくその対処に追われていた。
「傷病者の確認を最優先。グリーンまでは手当のあと、護送車に乗せろ」
「武装解除の確認を怠るな!」
「ナイトメアは輸送艇で回収する!」
リビングナイツのパイロットや潜水艦を運用していた乗員たちが次々と護送車に乗せられていく。その様子を遠巻きに眺めていたドクのもとに、壮年の黒の騎士団の部隊長がやって来る。
「あなたが通報をくれた……?」
「ええ。エージェント新月のドク・ジョブズです」
「すごい状況ですな。また戦争が始まったのかと思いましたよ」
部隊長が周りに転がるサザーランドの残骸などを見て苦笑する。
「まったくです。でも、事件的にはやっと終わったって感じですかね」
と晴れ晴れとした笑顔を見せる。
九海港から遠く離れた建設中のハイウェイに2台のトレーラーが並んでいる。ガナバティのものと、ハクバたちのものだ。生存を隠すオルフェウスたちに配慮し、黒の騎士団への引継ぎをドクに任せて、距離を置いたのだ。
「うおっ、あんなにも黒の騎士団の連中が来るのか。あのドクってガキんちょに任せて来ちまって大丈夫だったのか?」
九海港の様子を双眼鏡で確認していたズィーがハクバに問う。
「心配ない。ドクは機械いじりだけじゃなく、ああいった対応も得意なのさ」
そう答えつつ、オルフェウスに視線を移すハクバ。
「しかし、今回の件は助かった。あんたたちのおかげで命拾いしたよ」
「なに、俺たちはサトリの依頼を受けたに過ぎない。礼ならサトリに言ってくれ」
「依頼? サトリが?」
ハクバが隣にいるサトリの顔を見ると、照れくさそうに微笑んでいる。
「う、うん。勢いで……」
「格好よかったわ。あの時のサトリ」
「えへへ」
マリーベルにも褒められて、さらにサトリは頬を染める。
「ピースマーク最強のエージェントに依頼してくれるなんてな。ありがとよ、サトリ」
「ハクバにお礼を言われるなんて、なんだかくすぐったいな」
「言い値でいい、って啖呵を切ってたものね」
ますますモジモジとするサトリを見て加虐心が刺激されるレディ・レディ、つい茶々を入れてしまう。
「はあっ? 言い値? サトリ、お前そんなこと言ったのか!?」
「えっ? あっ、うん。勢いで……」
「それも勢いで言っちまったかぁ」
エージェントに荒事を頼むといかに高額であるかを知るハクバ。しかも、今回は伝説のエージェントへの言い値での依頼ということで、普段は冷静なハクバでもさすがに素っ頓狂な声を上げてしまった。しかし、それもこれも自分の命を救うために尽くしてくれた方法だということもわかっている。
「って言っても、命には代えられないからな」
問題ない、という意思表示でハクバはサトリの頭をポンと撫でる。
「すぐにキャッシュを用意するよ」
「ふっ、その必要はない。そもそも俺もあんたには、クライアントを守ってもらった恩がある」
クライアントという言葉を聞いて、オルフェウスが拠点で話していたことを思い出す。
──ああ。ピュアエレメンツGをイワンのもとから奪ったのは俺だからな。
──俺はある人物からの依頼でイワン・スヴォロフのもとからピュアエレメンツGを盗み出した。
──依頼人は追われている身でな。その追手に対抗する手段としてピュアエレメンツGが必要だった。そして、俺は依頼人の意志に賛同した。だから、協力したんだ。
「クライアント……。やはり彼女がオルフェウスのクライアントだったのか」
と、レディ・レディのそばにいる幼い少女を見やる。
「はい。私がピースマークのオズにピュアエレメンツGの奪取を依頼しました。私の身を狙う彼らリビングナイツとたたかうために」
少女の視線の先には、グラナードとの戦いで傷付いたピュアエレメンツGがヒザをついて佇んでいる。
「というわけだ。クライアントの命を守ってもらった礼に、今回の件はチャラにさせてもらう」
「え~っ? あれだけやったのにタダ働きだってのかよ」
「野暮なことを言うんじゃねぇ。さっ、俺たちゃ撤収の準備をするぞ」
ぶうたれるズィーの首に太い腕を回して自分のトレーラーのほうへ向かうガナバティ。その背中に向かってサトリが思わず呼びかける。
「あっ、おじさん! 新月に取り付けてくれた十徳ナイフの腕……」
「言ったろ、サービスだよ。お嬢ちゃんの心意気、気持ち良かったぜ」
と、手を振って行ってしまう。その背中に「ありがとう」と言葉を送るサトリ。その様子を見ていたハクバは、改めてオルフェウスに問う。
「もう行くんだな、オルフェウス」
「ああ。クライアントから受けた依頼はミスター・ハクバたちのおかげで終えることができた。隠れて生きる身の俺たちはまた姿を消すさ」
「そのことなんだが……」
「申し訳ないが、スカウトはお断りだ。今はマリーのそばにいることを優先したいんでな」
その言葉が聞こえ、少しだけ悲しそうな顔を見せるレディ・レディ。
「そうか。余計なことを言うところだった」
「なに、依頼があるなら、そこの仲介人を通してくれれば、いつでも話を聞こう。俺は今やフリーランスのエージェントだが、彼女、レディ・レディからの仲介じゃないと依頼を受けていない」
と、レディ・レディに笑顔を送るオルフェウス。そんなことを言われたレディ・レディのほうは少し驚いた顔をしつつもまんざらでもない顔を浮かべ、「いつも頼りにしてる」とだけ言って、そっぽを向いてしまう。
「ミスター・ハクバ、最後にひとつ。彼女のことだ」
オルフェウスが少女に聞こえないよう、ハクバの耳元に口を寄せる。
「短い間の付き合いだが、わかったことがある。彼女にはあんたのような人間が必要だ。彼女は……」
「わかってるさ。俺は彼女のような子供たちをひとりでも多く助けるためにイザヨイのエージェントになったんだから」
と、左腕の布に触れる。
「そうか。俺のほうは余計なことを言ってしまったようだ」
その布がサトリから聞いたハクバの家族の形見であることを悟ったオルフェウスは、自分のお節介を自嘲する。
「では、またどこかで」
マリーベルをともなってガナバティたちの待つトレーラーへと乗り込んだオルフェウスは、何事もなかったかのように去ってしまう。
「行っちゃったね」
走り去るトレーラーに向けて振っていた手を下ろすサトリ。
「なに、またどこかで会えるさ」
言いながら、残った少女とレディ・レディに向き直るハクバ。
「さて、これからのことなんだが……」
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