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エヴァフィギュア・インパクト
あるいは『エヴァンゲリオン』が美少女キャラクターフィギュアにもたらしたもの

2021.07.23

エヴァフィギュア・インパクト 月刊ホビージャパン2021年9月号(7月21日発売)

文/島谷光弘(ホビーマニアックス)
協力:首藤一真

 現在当たり前に存在するアニメキャラクターの立体化というフィギュアジャンル。このフィギュアの発展・拡散の各段階において大きな役割を果たしてきたのが『新世紀エヴァンゲリオン』。極論すれば『エヴァ』がなければ現在のような方向性の市場ができていたかどうかもわからない(少なくとも違う様相を呈していたはず)。
 ここではフィギュアにおいて『エヴァ』が果たした役割を、いわゆる美少女キャラクターという側面に絞って、キーになったフィギュアとともにその始まりから最新状況までを辿ってみよう。(本文中はすべて敬称略)


エヴァンゲリオンがフィギュアに与えた衝撃

▲ 最初に登場したコトブキヤの綾波レイ(原型:深山伸志)と海洋堂の綾波レイ(原型:寺岡邦明)。写真は20年12月エヴァワンフェスの展示から

エヴァンゲリオンの放送開始とレジンキット

 『新世紀エヴァンゲリオン』登場前夜。アニメキャラクターの立体商品は、未塗装・未組み立てのガレージキット(以下レジンキット)を主なステージとして、人気キャラが続々と商品化されていた。1992年の『美少女戦士セーラームーン』では表現技術はさらに進歩し、ファン層も急速に拡がっていた。
 そして1995年、満を持して始まった『新世紀エヴァンゲリオン』によってアニメキャラのレジンキットというジャンルは爆発的に拡大。人気、技術の両面でさらに発展していくことになる。
 『新世紀エヴァンゲリオン』のレジンキットとしては、TV放送直前のワンダーフェスティバル(以下ワンフェス)で庵野監督自身が企画したエヴァ初号機の作画参考モデルを発売(ただし売り上げは芳しくなかった)、翌96年1月に開催されたTV放送スタート後初のワンフェスでは早くも海洋堂とコトブキヤから初号機と綾波レイが登場、凄まじい大人気となる。なお、どちらが最初の綾波レイのフィギュアかというのは、それぞれ言い分や証言があって断言しづらい。続く96年夏にはメーカーだけではなく当日版権でも大人気となり、会場は無数の『エヴァ』関連商品で満ち溢れた。そしてこの『エヴァ』人気がワンフェスというイベント自体の運命を切り開くことになった。『エヴァ』以前、ホビーイベントのJAF-CONが『セーラームーン』や『機動戦士ガンダム』などの、レジンキットでも人気の高い作品の権利を独占していたため、ワンフェスは存続の危機を迎えていたのだ。ワンフェスというイベントがその後ホビージャンルで果たした大きな役割を考えると、これはまさしく運命を変えた瞬間といえるだろう。

▲ 96年3月時点で発売されていたフィギュア。海洋堂、コトブキヤ以外に、ツクダホビー、ムサシヤ、烈風がレジンキットやソフビキットを出している(月刊ホビージャパン96年5月号)

造形表現の発達

 文字通り『エヴァ』一色となったワンフェス。やがてその熱気は一般流通のレジンキットに波及し、『エヴァ』のレジンキットが全国の模型店に並ぶようになった。この頃の人気は圧倒的に綾波レイ。二次元のキャラクターを三次元の存在として創造する技術はつねに進歩していたが、多数の『エヴァ』フィギュアが作られることでそのスピードは加速した。メーカーも個人も問わず誰かが作った新しい表現方法を他人が真似て工夫し、さらにそれを他の誰かが深化させる。そういったやりとりを、前例がないほど多数の原型師たちが参加し、かつ短時間で行われていったのだ。それだけの熱気と集中がその場にはあった。アニメを制作したガイナックス自身が積極的に資料提供を行うなど、造形家たちに働きかけていたことも特筆すべき点だろう。
 そういう状況の中で、『エヴァ』以前から活動していた原型師、『エヴァ』をきっかけに誕生した原型師などが多くの成果を発表していく。あげたゆきを、宮川武、桜坂美紀、片山博喜、suzu、BOME、智恵理、竜人などがワンフェスで当日版権フィギュアを発表し、メーカーの一般販売フィギュアの原型を手掛けるようになる。彼らは00年代にかけてその後のフィギュア造形そのものを牽引していくことになる。この時期の造形表現の進歩は『エヴァ』に限らず、その後のフィギュアジャンル隆盛の礎ともなっていったのだ。

▲ G-PORTから販売された竜人のプラグスーツフィギュアはそのクオリティで当時決定版とも言われた(月刊ホビージャパン97年9月号)。竜人はその後も数々の衝撃的なフィギュアを発表している
▲ マックスファクトリーから登場した、あげたゆきを原型のソフビ完成品フィギュア(月刊ホビージャパン97年4月号)

塗装済完成品の始まり

 『エヴァ』のファンはレジンキットを組み立てられるようなコアな層ばかりではない。そこに完成品需要も当然あるのだが、90年代後半はちょうど塗装済み完成品フィギュアが市場に出回り始めた時期。まだ技術や商品としてのノウハウがあまり確定してない頃ではあったが、『エヴァ』という作品はある種実験的な側面を持つ商品を投入するのにも格好のタイトルであったため、いち早くさまざまな商品が展開されている。
 96年9月に発売されたのが、ソフビ製塗装済み完成品フィギュア。人気の高かったあげたゆきを原型の1/4スケール綾波レイをマックスファクトリーが商品化したものだ。原型の再現度も非常に高く、見事な出来で大ヒットとなったが、製造にかかる手間も想定以上だったようで人気の割に同種の商品は多くない。
 マスプロダクトな商品ではバンダイのカプセルフィギュア、ガシャポンのHGシリーズで塗装済みの『エヴァ』フィギュアが96年末に発売されている。デフォルメのソフビ製指人形などでは以前から塗装済みはあったが、金型を使ったリアル頭身のアニメキャラ系では95年末発売の『セーラームーン』と並んで最初期の商品のひとつ。ガシャポンでは03年から「HGIF 貞本義行コレクション」として、貞本(義行)イラストのタッチを活かしたシリーズも長期に展開された。

▲ セガの「ウォーターシーンハイグレードフィギュア」。これがその後のプライズフィギュアの流れを変えた
▲『エヴァ』はUCCの缶コーヒーとのコラボも話題になったが、付録として完成品フィギュアも登場している

完成品フィギュアの発展

 00年代に入って、完成品フィギュアはさらに広がりを見せる。
 01年には貞本義行のコミック版で、サンタ服姿のレイとアスカのフィギュア付き単行本が角川書店(現KADOKAWA)から登場。その後大ブームとなったフィギュア付録付きコミックスや雑誌の先鞭をつける。なお、貞本版コミックスの付録フィギュアでは、03年に浅井真紀が原型を手掛けた綾波レイの可動フィギュアも登場している。後にfigmaやメガミデバイスなど、数多くの可動フィギュアを手掛けた浅井氏の完成品可動フィギュアとしては最初期のひとつとなっている。
 チョコエッグで確固たる地位を築いていた海洋堂は、02年にカプセルフィギュアK&Mシリーズで『エヴァ』を展開。低価格でハイクオリティなこのシリーズは、00年代前半に起こったカプセルフィギュアブームの中核のひとつをなすシリーズとなる。さらに海洋堂はエヴァ各機のアクションフィギュアに続いてキャラクターの可動フィギュアも展開。07年にリボルテックフロイライン第1弾として綾波レイを発表している。同時期にスタートしたマックスファクトリーのfigmaと並んで、美少女キャラクターアクションフィギュアというジャンルを作ったとも言えるシリーズなのだ。
 そして『エヴァ』が大きな影響を与えた完成品フィギュアジャンルがもうひとつ。それが塗装済み完成品フィギュアのもっとも手軽な一大市場となっているプライズ(景品)フィギュアだ。
 90年代のプライズはぬいぐるみ中心に大ブームになっていたが、90年代半ばくらいから塗装済みフィギュアのプライズもぼちぼち登場していた。ただし、それらの造形や塗装クオリティは、決してコアなファン層を満足させるものではなかった。そこに登場したのがセガプライズの「新世紀エヴァンゲリオンウォーターシーンハイグレードフィギュア」。01年に登場したこのフィギュアは、レジンキット原型で大人気だった宮川武が担当。ヒザから上のみを製品化することで全体のボリュームをアップさせるとともに、レジンキットのフィギュア表現技法に基づく初の塗装済み完成品フィギュアとしたのだ。同時期からあげたゆきをも原型を担当。その後もワンフェスでレジンキットを発表していた原型師が続々と参入し、レジンキットの造形テイストを取り入れたプライズフィギュアを次々と発表するようになる。それもほぼ毎月新作を出すというハイペース。やがてはプライズフィギュアオリジナルの衣装も登場するようになった。現在では世界的に人気となったフィギュア・カルチャーの礎となったプライズフィギュアの進歩と発展に『エヴァ』が果たした役割は非常に大きいのだ。
 そして、もちろん通常の塗装済み完成フィギュアでも格好のモチーフとして多数のスケールフィギュアが登場。等身大からミニフィギュアまでさまざまなボリュームのものが、さまざまなスタイルで発表され続けている。

▲ 海洋堂のリボルテックフロイラインは第2弾でアスカも登場(月刊ホビージャパン08年2月号)。現在もリボルテックの新作として『エヴァ』が登場している

アマチュア版権システム

 一般販売の完成品フィギュアが大きな動きを見せている02年、ガイナックスが『新世紀エヴァンゲリオン』を含め独自のアマチュア版権システムをスタート。イベントごとに申請が必要だった当日版権から、1年間有効なアマチュア版権システムに移行する。年間の販売個数などいくらかの制限はあるものの、個人でも通販対応が可能になるなど自由度の高いシステムで、これは『エヴァ』の版権管理がガイナックスからカラーとグラウンドワークスに変更された現在も引き継がれて存続している。
 イベントごとに手続きが必要な当日版権に比べて、事務手続きが楽になるというだけではなく、このアマチュア版権システムは造形に関しての自由度が非常に高いという特徴もあった(正確にはこの自由度はアマチュア版権になる前から存在した)。原型師の個性を活かした造形や独特のモチーフ、オリジナルアレンジも幅広く認められている。このことによって『エヴァ』のフィギュアはさまざまな造形テイストの物が登場し、レベルの底上げや表現の幅の広さにつながることになり、ひいては造形業界全体の隆盛にも結びついているともいえるのだ。

現在、これから

 幅広いファン層から支持されている作品ということでは、『ガンダム』シリーズなどと比肩しうる存在になっている『エヴァンゲリオン』。だからこそ商品企画面でも造形面でも新たな試みを行いやすいため、さまざまなタイプの商品が出ている。
 さらに、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では新たなキャラクターやメカ、コスチューム、シチュエーションが多数登場。それらはこれから続々と立体化されることになる。造形表現・技術はまだまだ進歩し、ホビー市場の状況も変わり続けていくだろうが、『エヴァンゲリオン』はつねにその最先端にあり続け、市場全体を牽引することになるはずだ。『新劇場版』は完結したが、フィギュアでの展開はまだまだこれからなのだ。

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ⓒカラー ⓒカラー/Project Eva. ⓒカラー/EVA製作委員会

島谷光弘(ホビーマニアックス)

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