HOME記事その他【書籍発売記念連載】アメリカ海兵隊の新たな部隊「海兵沿岸連隊(MLR)」の注目装備を解説!「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」【第2回】

【書籍発売記念連載】アメリカ海兵隊の新たな部隊「海兵沿岸連隊(MLR)」の注目装備を解説!「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」【第2回】

2025.12.19

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MADIS Mk.2

▲MADIS Mk.2は指揮統制能力を持ち、車体4面にマルチミッションレーダーaCHR(Advanced Compact Hemispheric Radar)のアンテナを備えているのが特徴。なお、写真の車両は武装が取り外された状態となっている
▲2025年1月、ハワイ海兵隊基地で撮影されたMADIS Mk.2。Mk.2の遠隔操作式武器架はMk.1と同型のRS6だが、武装は7.62mm機関銃と30mm機関砲のみとなる。第3海兵師団長クリスチャン・F・ウォートマン少将と第3海兵沿岸連隊の将校達がMADISについて議論している
▲MADIS Mk.2の車体を左側から見る。MADISはオシュコシュ社が開発・製造する統合軽戦術車両(JLTV)がベースとなっている

 このMADISは、基本的にMk.1とMk.2のペアで運用され、Mk.2はペアの指揮統制能力を備えている。Mk.1搭載のスティンガーは低空を飛行するジェット機やヘリコプター、固定翼の大型無人機など、また30mm機関砲や7.62mm機関銃は比較的小型のマルチ・ローター式無人機(いわゆるドローン)の迎撃にも適している。
 今年(2025年)1月には、ハワイのポハクロア演習場で第3海兵沿岸連隊(MLR)に所属する第3沿岸対空大隊(編制などの詳細は後述)がMADIS Mk.1搭載の「スティンガー」の初の実弾発射を実施。同年4~5月には、第3沿岸対空大隊のMADISがフィリピンで行われたアメリカ軍とフィリピン軍の合同演習「バリカタン25」に参加。2025年末現在では第3沿岸対空大隊に本格的な配備が進められており、他の沿岸対空大隊にも配備がされていく見込みだ。

▲写真左側がaCHRを装備するMk.2、右側がスティンガーを装備するMk.1。それぞれの違いが分かりやすいカットだ
▲2025年1月ハワイ州のポハクロア演習場で行われた訓練で、MADIS Mk1がターゲットの小型無人機システムに向けてスティンガーを射撃する
▲2025年4月、フィリピンで実施された米比合同演習「バリカタン25」に参加した第3沿岸対空大隊のMADIS
▲「バリカタン25」におけるスティンガーの射撃シーン。写真右側の空中に、ミサイル本体から分離したブースターが写っている
▲30mm機関砲XM914E1用の30mm×113弾薬(訓練弾)
▲2025年9月、日米共同による実動訓練「レゾリュート・ドラゴン25」に、アメリカ海兵隊の第12海兵沿海連隊(沖縄)第3海兵沿海連隊(ハワイ)が参加。沖縄県の陸上自衛隊石垣駐屯地に展開した際、記者会見が行われた。写真はその際のもので、左からアメリカ海兵隊のMADIS Mk.1とNMESIS、および陸上自衛隊の03式中距離地対空誘導弾と12式地対艦誘導弾。同盟関係にある日米両国が連携をより深めていくことで、抑止力となることを期待されている
▲アメリカ空軍のC-17輸送機で空輸されたMADIS Mk.1(左)とMk.2(右)。同機のカーゴスペースはMADISを2両並べて搭載できるだけの幅があることが分かる
▲こちらの車両は開発中のMADIS Mk.2(試作型)で、7.62mm機関銃M134(通称:ミニガン)とマルチミッションレーダーRPS-42を装備していた。車体がJLTVの試作型であるのも、現行の量産型と異なる点だ
▲MADIS Mk.2(試作型)のミニガンで撃墜された、マルチ・ローター式無人機の残骸。いわゆる「ドローン」への対処「C-UAS(Counter-Unmanned Aerial Systemsの略)」も、MADISの重要な役割のひとつになっている

MRICの概要

▲2024年1月、バージニア州のクアンティコ海兵隊基地にて展示されたMRICの発射機。2025会計年度からの配備に向け、海兵隊システムコマンドによってテストされる

 MRICは、Medium-Range Intercept Capabilityの略で、イスラエルで開発された防空システム「アイアン・ドーム」の海兵隊バージョンといえる中距離用の防空システムだ。
 地対空ミサイルや射撃統制システム、アメリカ製の対空レーダーなどで構成されており、前述のMADISよりも大がかりなシステムだ。ミサイルの射程は公表されていないが、少なくとも前述のMADISに含まれている「スティンガー」よりも射程が長い。
 原型である「アイアン・ドーム」はもともとロケット弾などの迎撃用として開発されたものだが、アメリカ海兵隊に配備されているMRICのおもな目標は巡航ミサイルやMADISの射程外の航空機(無人機を含む)などだ。
 最大20連装のミサイル発射機が大型トレーラーに搭載されるなど、JLTVをベース車両にしているMADISやNEMESISにくらべると機動性がやや劣る。

▲トレーラーに搭載されたMRICのランチャーユニット。ミサイルのコンテナには、「アイアン・ドーム」を製造するイスラエルのメーカー、ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズのマークが描かれている。写真のランチャーユニットに装着されたミサイルコンテナは1段(5発)だが、最大で4段重ね(20発)にして運用することもできる
▲2022年9月、ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場で行われたMRICの命名記念式典で、主任技師のマイケル・クラップ氏がシャンパンボトルをランチャーに叩き付けて門出を祝った
▲同月ホワイトサンズにて行われた実弾射撃試験では、巡航ミサイルを模した複数の標的機の撃墜に成功している

MLRと対空中隊の編制

 あらたに編成が進められている海兵沿岸連隊(MLR)は、大隊規模の沿岸戦闘チーム、沿岸対空大隊、戦闘兵站大隊を基幹としている。
 この中の沿岸対空大隊は、本部および役務(サーヴィス)中隊以下、MADISを装備する対空中隊1個、航空管制(エア・コントロール)中隊1個を基幹としており、状況に応じてMRICを持つ対空中隊が1個配属される。
 MADISを装備する対空中隊は、対空小隊4個を基幹としており、各対空小隊は射撃班(セクション)3個からなる。各射撃班はMADISのMk.1とMk.2の2両1組のペアで構成されるので、中隊全体ではMADISのMk.1とMk.2が各12両、計24両が配備されるわけだ。

▲海兵沿岸連隊の編制 (「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」より)

 MADISは機動性が高く、味方の地上部隊などに随伴して防空にあたる。
 一方、状況に応じて沿岸対空大隊に増強されることになっているMRICを持つ対空中隊は、対空小隊4個を基幹としている。各小隊には射撃統制システムと発射機4基が配備されるので、中隊全体では発射機は計16基となる。
 MRICは、MADISに比べると機動性がやや低く、前方で拠点となる遠征前方基地(Expeditionary Advanced Based、略してEAB)の近辺などに展開して、やや広い範囲の防空にあたることになっている。
 ようするに海兵沿岸連隊(MLR)は、前回解説したNMESISによる対艦攻撃能力にくわえて、今回解説したMADISと状況によって増強されるMRICによる防空能力を持つのだ。

▲MADISとMRICがそれぞれ担当する領域 (「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」より)

アメリカ海兵隊の新しい戦い方とは

イラストでまなぶ!用兵思想入門-現代アメリカ海兵隊の戦い方編表紙

 アメリカ海兵隊が、これらの対空中隊が所属するMLRなどを活用して、どのように戦おうと考えているのかについては、「イラストでまなぶ!用兵思想入門」シリーズ最新刊となる「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」を参照していただきたい。
 本書では現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由やその用兵思想を、イラストを交えつつ解説している。
 日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が、抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、ぜひご一読いただけたら幸いである。

イラストでまなぶ!用兵思想入門-現代アメリカ海兵隊の戦い方編サンプル01
イラストでまなぶ!用兵思想入門-現代アメリカ海兵隊の戦い方編サンプル02
イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編サンプル03
イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編サンプル10

イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編

●発行元/ホビージャパン●2200円、発売中

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田村尚也(たむら なおや)

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