【書籍発売記念連載】アメリカ海兵隊の新たな部隊「海兵沿岸連隊(MLR)」の注目装備を解説!「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」【第2回】
2025.12.19MADIS Mk.2


このMADISは、基本的にMk.1とMk.2のペアで運用され、Mk.2はペアの指揮統制能力を備えている。Mk.1搭載のスティンガーは低空を飛行するジェット機やヘリコプター、固定翼の大型無人機など、また30mm機関砲や7.62mm機関銃は比較的小型のマルチ・ローター式無人機(いわゆるドローン)の迎撃にも適している。
今年(2025年)1月には、ハワイのポハクロア演習場で第3海兵沿岸連隊(MLR)に所属する第3沿岸対空大隊(編制などの詳細は後述)がMADIS Mk.1搭載の「スティンガー」の初の実弾発射を実施。同年4~5月には、第3沿岸対空大隊のMADISがフィリピンで行われたアメリカ軍とフィリピン軍の合同演習「バリカタン25」に参加。2025年末現在では第3沿岸対空大隊に本格的な配備が進められており、他の沿岸対空大隊にも配備がされていく見込みだ。









MRICの概要

MRICは、Medium-Range Intercept Capabilityの略で、イスラエルで開発された防空システム「アイアン・ドーム」の海兵隊バージョンといえる中距離用の防空システムだ。
地対空ミサイルや射撃統制システム、アメリカ製の対空レーダーなどで構成されており、前述のMADISよりも大がかりなシステムだ。ミサイルの射程は公表されていないが、少なくとも前述のMADISに含まれている「スティンガー」よりも射程が長い。
原型である「アイアン・ドーム」はもともとロケット弾などの迎撃用として開発されたものだが、アメリカ海兵隊に配備されているMRICのおもな目標は巡航ミサイルやMADISの射程外の航空機(無人機を含む)などだ。
最大20連装のミサイル発射機が大型トレーラーに搭載されるなど、JLTVをベース車両にしているMADISやNEMESISにくらべると機動性がやや劣る。



MLRと対空中隊の編制
あらたに編成が進められている海兵沿岸連隊(MLR)は、大隊規模の沿岸戦闘チーム、沿岸対空大隊、戦闘兵站大隊を基幹としている。
この中の沿岸対空大隊は、本部および役務(サーヴィス)中隊以下、MADISを装備する対空中隊1個、航空管制(エア・コントロール)中隊1個を基幹としており、状況に応じてMRICを持つ対空中隊が1個配属される。
MADISを装備する対空中隊は、対空小隊4個を基幹としており、各対空小隊は射撃班(セクション)3個からなる。各射撃班はMADISのMk.1とMk.2の2両1組のペアで構成されるので、中隊全体ではMADISのMk.1とMk.2が各12両、計24両が配備されるわけだ。

MADISは機動性が高く、味方の地上部隊などに随伴して防空にあたる。
一方、状況に応じて沿岸対空大隊に増強されることになっているMRICを持つ対空中隊は、対空小隊4個を基幹としている。各小隊には射撃統制システムと発射機4基が配備されるので、中隊全体では発射機は計16基となる。
MRICは、MADISに比べると機動性がやや低く、前方で拠点となる遠征前方基地(Expeditionary Advanced Based、略してEAB)の近辺などに展開して、やや広い範囲の防空にあたることになっている。
ようするに海兵沿岸連隊(MLR)は、前回解説したNMESISによる対艦攻撃能力にくわえて、今回解説したMADISと状況によって増強されるMRICによる防空能力を持つのだ。

アメリカ海兵隊の新しい戦い方とは
アメリカ海兵隊が、これらの対空中隊が所属するMLRなどを活用して、どのように戦おうと考えているのかについては、「イラストでまなぶ!用兵思想入門」シリーズ最新刊となる「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」を参照していただきたい。
本書では現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由やその用兵思想を、イラストを交えつつ解説している。
日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が、抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、ぜひご一読いただけたら幸いである。
田村尚也(たむら なおや)
ミリタリーライター。著書に「用兵思想史入門」(作品社 刊)、「萌えよ戦車学校」シリーズ(イカロス出版 刊)、「イラストでまなぶ!用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン 刊)などがある。『魔法少女特殊戦あすか』、『ガールズ&パンツァー 劇場版』『ガールズ&パンツァー 最終章』などコミック・アニメ作品の軍事監修なども手掛ける。





















