鈴村健一 我が暮らし特撮と共に
【WEB版】第4回「兄弟戦士の出動だ!」
2025.11.21

「宇宙船vol.190」では『星雲仮面マシンマン』の話をしました。1984年の作品なので、既に宇宙刑事シリーズも3作目の『宇宙刑事シャイダー』が、戦隊シリーズは『超電子バイオマン』が放送中。スーパー戦隊と宇宙刑事シリーズが当時のヒーローの2大看板として君臨している中に、突如現れた『マシンマン』はまさに青天の霹靂。衝撃が走りました。
マシンマンも乗り物がカッコいいんですよ。マシンドルフィンっていう車なんですけど、なんとドルフィンジェットというジェット機とロボ形態の3段変形できるという、当時としては画期的なマシンでした。この頃バンダイから発売されていた、ロボットから乗り物に変形する『マシンロボ』という玩具のブームがあって、マシンドルフィンの変形機構はこの『マシンロボ』の系譜にあたります。後になって知ったのですが『マシンロボ』のデザインを担当されていた当時のバンダイ役員の村上克司さんは『宇宙刑事ギャバン』など特撮作品にも大きな影響力をもった方として有名ですが、『マシンマン』の仕掛け人のひとりなんですね。なるほどなあ! と思いました。
このカッコいいマシンドルフィンにも突っ込みどころがあって、変形機構の関係なのか、マシンマンはドルフィンの中にうつ伏せに寝そべって乗って操縦するんです。顔と路面が近すぎて運転しづらくない? と心配になります。そして、なんと言ってもロボ形態。玩具のCMで「マシンからジェット、そしてロボへ」って言ってるんだけど、なかなか登場しない。いつ出てくるんだろう? とワクワクして待っていましたが、ついに最後まで出てこなかった!! どうやら玩具限定のギミックだったようです。
同じく村上さんがデザインを手掛けたコン・バトラーVの超合金にも玩具オリジナルの「重戦車形態」っていうのがあって、これは後にグランダッシャーっていう突撃形態としてアニメにも登場します。登場するかどうかわからないけど、遊び方のバリエーションを豊富にするための形態を盛り込むのが村上イズムなんですね。
『マシンマン』の後を受けて1985年1月から放送されたのが『兄弟拳バイクロッサー』。これも好きでした。僕には弟がいるので、バイクロッサー・ケンとバイクロッサー・ギンになりきって家でよく遊びました。バイクロッサーに変身する水野兄弟の家のタンスが異次元空間でバイクロッサーの基地と繋がっていて、タンスを開けて中に入ると変身するんです。現代の『仮面ライダーゼッツ』にも通じる秀逸な設定でしょう?(同じ石ノ森章太郎先生原作ですからね) 「行くぞ!」「おう、兄さん!」って僕たち兄弟も家のタンスを開けていましたよ(笑)。『バイクロッサー』って、当然「バイク」に乗ってるんですけど、2人いるから「倍」、クロスをするから「クロッサー」。バイクと倍とクロスのトリプルミーニングなんです。ネーミングも秀逸です。
『バイクロッサー』で一番の見どころはブレーザーカノンというバイクロッサーの必殺技です。バイクに乗って走ってきた弟を、兄が担いで撃つ。これが子供たちの間で話題になりました「担ぐ必要ある? 重くないの?」って。
でもね、子供の僕にはカッコよく見えてました。当時ちゃんと担げる仕様の玩具も出ていたけど、僕は自転車を担いで真似していましたね。
ただ、今振り返ると『マシンマン』も『バイクロッサー』も予算がない中で頑張って作っていたんじゃないなかと思うんです。マシンドルフィンのロボ形態も出てこなかったし、『バイクロッサー』に至っては最終4話はメインキャストの方たちが集まって「僕たちの戦いを振り返ろう」って言って作品のおさらいをする、いわゆる総集編が放送されました。35話から38話が総集編で、そのまま番組は終了。子供心にも「信じられん!」と思ってました。4本全部見ましたけどね。新しいお話を作れなかったんでしょうね。
この総集編は衝撃的でした。長年特撮を観てきたけど、『バイクロッサー』くらいじゃないですか? 僕が出ていた『魔進戦隊キラメイジャー』も急遽内容を変えて4本の総集編を放送ことがあったけど、あれはコロナ禍で撮影ができなくなったことでの苦肉の策でした。総集編の作り方としては『バイクロッサー』と似ていましたけどね。4本っていう本数も踏襲している。いや、踏襲したわけじゃないですけど!
『バイクロッサー』の後番組は作られず、このシリーズは2本で終わりました。でも『マシンマン』も『バイクロッサー』も子供を苦しめる悪者と戦う、子供のためのヒーローに全振りした秀作です。大人の鑑賞にも耐える現代の仮面ライダーやスーパー戦隊とはまた違った、非常に味わい深い作品だと思います。東映特撮ファンクラブ(TTFC)などで視聴できますので、ぜひ観てほしい。
僕のおすすめは『マシンマン』のお便りコーナーです。番組後半から主人公のニックと相棒のボールボーイが視聴者から送られてきたハガキを読み上げて、質問に答えてあげるコーナーができるんですけど、ここでもニックは真摯に子供たちの疑問に答えてくれます。こういうところも含めて、ちゃんとヒーローしてるんですよね。
文◎鈴村健一
タイトルデザイン◎野中剛

鈴村健一(すずむら・けんいち)
声優。9月12日生まれ。大阪府出身。主な出演作に『グリッドマン ユニバース』ナイト役、『勇気爆発バーンブレイバーン』ブレイバーン役、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』シン・アスカ役など。『仮面ライダー電王』リュウタロス役、『魔進戦隊キラメイジャー』魔進ファイヤ役など特撮作品への出演も多い。
「我が暮らし特撮と共に」誌面版は宇宙船にて連載中
鈴村健一コラム「我が暮らし特撮と共に」は雑誌「宇宙船」とホビージャパンウェブで交互に連載! 誌面版の次回は12月27日発売「宇宙船vol.191」にて!
鈴村健一
声優。9月12日生まれ。大阪府出身。主な出演作に『グリッドマン ユニバース』ナイト役、『勇気爆発バーンブレイバーン』ブレイバーン役、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』シン・アスカ役など。『仮面ライダー電王』リュウタロス役、『魔進戦隊キラメイジャー』魔進ファイヤ役など特撮作品への出演も多い。















