HOME記事キャラクターモデル【PLAMAX ドラグナー開発秘話】MAX渡辺と企画担当に聞く「大張正己氏 が描く線への強い“こだわり”」【機甲戦記ドラグナー】

【PLAMAX ドラグナー開発秘話】MAX渡辺と企画担当に聞く「大張正己氏 が描く線への強い“こだわり”」【機甲戦記ドラグナー】

2025.11.04

OBARISMに挑む
マックスファクトリーの流儀

 別冊「ホビージャパンエクストラ 特集:アニメーター・大張正己“バリってる”造形の魅力」を締めくくる本記事は、ホビーメーカー「マックスファクトリー」へのインタビュー。10月末に発売された「PLAMAX 1/72 ドラグナー1」の発売で注目を集める彼らは、アニメーター・大張正己氏の描くダイナミックな描写をどう立体物として表現するかに挑んだ。その過程には、大張氏 が描く線への強い“こだわり”、リフターというオリジナル要素とのバランス、設計段階での幾度にもわたる調整があった。
 “バリってる”とは、造形する者たちにとって目標なのか、それとも結果そのものなのか。熱量たっぷりに語る彼らの言葉から、時代を超えて受け継がれる“マックスファクトリー流”の造型哲学を紐解いていく。別冊の中では10ページにわたる濃厚なインタビューで展開した本記事を、キットの発売に合わせて一部抜粋して公開。これを読まずして、ホビーの進化は語れない。

(聞き手/ホビージャパン編集部)

▲ 左から ヒナト氏、I.G.坂井氏、MAX渡辺氏

MAX渡辺 (写真右)
マックスファクトリー、代表取締役社長

 マックスファクトリーの社長を務めながら、月刊ホビージャパン でも毎月作例を掲載し続ける、今やホビー業界で知らない人はいない模型鉄人。

I.G.坂井(写真中央)
マックスファクトリー、企画部

 「PLAMAX ドラグナー」をはじめPLAMAX『装甲騎兵ボトムズ』シリーズの他にもさまざまなフィギュアの企画も担当するベテラン。

相樂ヒナト写真左)
マックスファクトリー、制作チーム、原型師

 PLAMAXシリーズではminimum factoryシリーズの躍動感あふれる原型などを数多く担当。将来有望な若手原型師。

PLAMAX 1/72 スケール XD-01ドラグナー1

●発売元/マックスファクトリー、●販売元/グッドスマイルカンパニー●9800円、10月予定●1/72、約24.5cm●プラキット


──みなさんにとって“バリってる”とは何ですか?

MAX渡辺:いきなりなんだけど、 “バリってる”って何を指してるのかイマイチわからないかも…( 笑 )。
I.G.坂井:確かに、僕たち当時のビークラブを見ながらあーだこーだ言いながらものを作ってるから、今の大張さんの“バリってる”について語れるのかなっていう(笑)。
MAX: “バリってる”っていう言葉自体、僕使ってないなぁ。
:言葉自体は認識はしているんですけど、使いはしないのかな。僕たちが造形物を作る方法としては 、“バリってる ”ように作るというよりは「大張さんの絵に忠実に作ろう!」みたいなスタンスなんですよ。
MAX:ちなみに“バリってる”っていう言葉はいつから使われてたんだろう?
:結構前じゃないですか? もしかしたら『ドラグナー』より前かもしれませんね。
MAX:一目で誰が描いたかすぐにわかる、みたいな意味合いで使われてたのかな。 “佐野ってる”とか“カネダってる”っていう言葉があったんじゃない?

── ありましたね。

MAX:そしたらきっと、“ カネダってる ” が最初なんじゃないかな。それこそ彼の作画は一目でわかったからね。『ダグラム』でも描いてたし、彼が 手がけたダグラムはほかの回とは全然違う飛び方をしてたよね 。

― 当時のアニメ誌だとアニメーターの名前もよく出てきましたよね。

MAX:そういう、アニメーターに着目するみたいな視点が出始めたのは『OUT』からだよね。 あの雑誌が起点になって、例えば「あの時の作画 、すごく良かったよね 」みたいな話をオタクたちが始めて、「それって誰が描いたの?」って突き詰めていく流れができた。たとえば『ボトムズ 』 だったら谷口さんが描いたキリコ。「あ、 このキリコはちょっと違うよね」って。そういう潮流があったからこそ、 “バリってる”って言葉も生まれたんじゃないかって思う。
 そのまた昔は誰がどの絵を描いたかなんて、 ほとんど気にもされてなかったから。『マジンガーZ』の何話のどこのシーンを「誰が描いたんだろう?」なんて話は一切出てこなかった。
:確かに今より情報がなかった時代ですからね。アニメ情報誌が出てから、やっとわかるようになったんですよね。

──さて、ようやくドラグナーについてのお話ですが(笑)。今回この造形に至るまでどのような経緯があったのでしょうか。

MAX:まずは原型となるレジン版の造形があったんです。月刊ホビージャパンでも当時作例として 製作したものが掲載されました。それで、このレジン版の原型を使ったマスプロ製品を作ろうっていう企画が出たんです。けれどMAX合金の商品が出るまでは、そこからさらに10年の時が経ったんですよ。
:実は発売されたのって意外に最近なんですよね。
MAX:もしかして出せたりするかな…。みたいな打診をして、それが成就するまでに6~7年かかっ て、開発にも2年近くかかりました。
MAX:ただこの商品「MAX合金」って銘打っているんだけど、そんなに合金使っていなくて、ほぼプラの成型だから軽いんだよね(笑)。
:当時、ユーザーから結構指摘されてましたよね。
MAX:軽い割には高いとか言われたんですけど、当時の技術とウチの体力からするともう奇跡のプロダクトなんですよ。 よくこんな の出せたなって思う。難しい造形にもチャレンジしてるんだけど、 この当時の金型の技術って、やっぱり今と比べたら手作業で合わせていくからだいぶ精度は落ちるじゃない 。 そんななかでよくここまでやってくれたなっていう感覚です。当時のウチとしては随分背伸びしたなぁって。
 合金トイって、やっぱり超合金をはじめとして、 生産工場がそれなりにダイキャストの扱いに慣れてるわけで、ウチではジェネシックガオガイガーやゴーダンナーなどの商品をやってたから、それなりノウハウはありました 。 けれどこのドラグナーは今まで作ってきたどの合金商品よりシャープネスを出したかったわけで。どこを金属にするのかって 設計が出した答えは、金属のパーツはフレームにしか使ってないという。大張さんの画風再現を強くイメージしてるから、パーツ形状がすごく可塑性の高い、彫刻的な形をしている。面がダレたらいやだ! みたいな話で当初ダイキャストだった部位をプラに変えていったらほぼ全身プラスチックになったんです。
 これを発売できた時点ではまぁまぁイイものができたとは思ったんだけど、時間が経って振り返ってみると心残りがあちこちに、ね。そこからさらに 15年ぐらいが経ってようやくプラキットとして出せるように諸々状況が整ったんです 。
:企画進行していることを完全に伏せて進めてたのは、うちとしては珍しいですよね(笑)。僕らって「こういう企画やってるよ!」って言いたがるじゃないですか。
MAX:目立ちたがりみたいに言うなよ(笑)。
:もちろん情報を事前に出すことも考えたんですけど直前まで隠してていきなり、こう、何ていうか …。でっかいサイズのインパクトも含めてなんかズゴン!っていう驚きのアイテムにしたかったから……
MAX:若干頭の悪い表現だけども(笑)。
: それで結局発表した日に受注を始めることにしました 。

▲月刊ホビージャパン2000年1月号にて掲載された多胡智之氏原型による1/100のドラグナー 。ポリパテによるフルスクラッチモデル。翌月の2月号ではMAX渡辺がフィニッシュした作例が掲載された

▲ポリパテからレジンに複製され、その後MAX合金として生まれ変わったドラグナー 。大張氏によるパッケージアートも魅力的だ
▲ 今回発売されたドラグナーのテストショット。MAX合金の形状を踏襲しながら、各部がさらにブラッシュアップされている

オープニングで見た航空機らしさを追求する

──どのように企画が立ち上がったんですか?

:僕が言い始めて、当時先輩に相談したん です 。僕がPLAMAXに入る前からこの合金商品の存在は当然知っていて、すごくかっこよかったし、しかもこのテイストのドラグナーって実はプラキットではまだ無いから、PLAMAXにできないかなっていう話をしたら、すぐに版権元さんに問い合わせてくれたんですよ。
 ただ、先行してHGやアクションフィギュアがありましたし、古くは旧キットの1/100も1/144もあって、当然それらは全然違う商品なんだけど、ドラグナー1は潤沢に商品化されているんですよね 。そんななかで、ウチが出すんだったらそれまでとは違うアプローチの造形が出せると思ったんですけど、それだけだと「また新しいドラグナー1が出たけどすでに何個も持ってるからいいや」ってなりかねないんじゃないかと思ったんです。
 キット代を極端に安くするのは難しいし。それなら、自分たちの好きな造形を存分に活かせるサイズ感にしようという方向になりました。さらに、“航空機らしさ”を強調しようという話にもなったんです。
  やっぱりアニメで見た、まるで『トップガン』のようなオープニングの発艦シーンが、一番心に残っている人が多いですし、「じゃあ飛行機のスケールでやったら面白いんじゃないか」というアイデアが打ち合わせを重ねる中で出てきました。そのほかにも、「同スケールのデッキクルーを隣に置けるようにしたら面白いよね」とえらく盛り上がりました 。
 いったんMAX合金のデータを1/72サイズに拡大したものを簡易出力してみたら、笑っちゃうぐらいデカかったんですけど、実現不可能ではないなと思ったのでデカい仕様でいくことになりました(笑)。
MAX:ほんとバカなメーカーでしょう(笑)? 企画書の段階で「ウン、いいじゃない」とか、軽口を叩いてハンコを押してね、いざ出力品を見たら、「めちゃくちゃでけぇじゃねえか!」って言って半分キレるっていう(笑)。
 1/72スケールだと、MAX合金から少し大きくしないといけないよな、っていうのは体感でわかってはいたんだけど、やっぱり体積がデカくなるってヤバいんだよ。
:体積の計算って長さの3乗ですからね。なんならボリュームは倍ぐらいのイメージですよね。特に、頭部ってMAX合金の大きさだと表現に限界があって、いくらこの小さいパーツの中に造形を詰め込んだとしても、金型の都合で無駄になっちゃう部分も多いんですよ。ただ1/72スケ ールぐらいまでおっきいと、純粋に“彫刻物”として楽しんでもらえるくらいにはなったのかなと思いますね。
相樂ヒナト:僕が入社したとき、最初に仮出力品が出てたんですけど、初めて見た時はやっぱ り「 うっ 」と思いましたね。
MAX:引くほどデカいからね(笑)。
:でも不思議だよね。もう今は開発スタッフ の誰も「デカい」なんて言わなくなったもんね。
:慣れって怖いですよ。原型を出す最後の方の工程の時に、シャープに形状が出る方式で出力した出力品を見て、「なんか1/72の飛行機みたいだな」 ってぼそっと言ったら、みんなに「 逆だよ!」って笑われました(笑)。
:そりゃそうだ、1/72の飛行機みたいに作ろうとしてるんだから(笑)。
:でも、本当にこのリフターだけ持って見てみると、なんかスーパーホーネットみたいなマス感があって面白いんですよ。
:飛行機模型みたいに、いろんな会社から 同じモチーフが出るって、それだけでも比較できて楽しいですよね。 ロボットプラモでもいろんなメーカーから同じモチーフの商品が出て、それぞれ造形が違って比べて楽しめるのは、「こういう解釈があったのか!」みたいな発見があって面白いし、それをお客さんも楽しんでくれているのは 、 やっぱり僕らとしてもすごくやりがいがあります。

▲ 2024年の全日本模型ホビーショーで発表され話題となった本商品。約24.5cmという圧倒的なサイズだ

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Ⓒ「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

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