【カードゲーマーweb】ブシロード・木谷社長に独占インタビュー! 「ブシロード戦略発表会2025 秋」振り返りとTCG業界を語る
2025.11.06『ヴァンガード』『ヴァイス』『ゴジカ』『エボルヴ』の疑問をブシロード社長に直撃質問!

9月24日に配信された「ブシロード戦略発表会2025 秋」では、ブシロードが展開するカードゲーム10タイトルの最新情報が一挙公開された。本記事では、ブシロード・木谷高明社長に後日インタビューを実施。発表内容の振り返りを中心に、ブシロードカードゲームやTCG業界についてお話をうかがった。

───まずは、9月24日に配信された「ブシロード戦略発表会 秋」を振り返って、100点満点で評価をお願いします。
木谷高明社長(以下「木谷」):今回は80点ぐらいかなあ。これまでの発表会よりは少し低めの点数をつけています。というのも、単純に各タイトルから発表できる情報量が少なめだったかなと。そのぶん、来年1月12日(月・祝)の「カードファイト!! ヴァンガード 15th Anniversary ブシロード新春大発表会2026」ではカードゲームにとどまらず、それ以外の情報も盛りだくさんでお送りします。今回はそこへ向けての溜めだと思っていただきたい。次回は100点を目指して頑張ります。
───「2025春」から今回まで、全体時間が3時間弱と共通していますが、この時間は意図的に統一されているのでしょうか。
木谷:これはそうですね。長すぎるとお客さんも飽きてしまうのでなるべくコンパクトにはしたい。タイトル数が多いので難しい部分もありますが、目安として3時間前後というのは意識していますし、これからも継続していきたいですね。また、配信時間を夜にしたことでよりたくさんの方にご覧いただけるようになったので、こちらも維持していきたいです。

───ここからは発表のあったタイトルから一部をピックアップしてご質問させていただきます。まずは、『カードファイト!! ヴァンガード』(以下『ヴァンガード』)について、TVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード Divinez デラックス決勝編」が最終回を迎えましたが、木谷社長の感触をお聞かせください。
木谷:『ヴァンガード』における最高峰の大会を、緊迫感のある形で描けたのはよかったですし、準決勝のアキナ対ミチルの盛り上がりや、決勝戦のアキナ、エリカの元兄妹対決といった見どころもあったんですが、もう少しおもしろくできたかなという後悔も残っています。Dシリーズも4年経ったことでどうしても登場キャラが増えてきて、その人たちが予選と決勝トーナメントに出るとなると、カードゲームを盛り上げるアニメとして描かなくてはならない人物やデッキタイプも多くなっていくわけです。そうすると、主人公や周りにいる人たちをしっかり描くっていう部分が少なくなってしまうんですよね。手広く魅力を紹介できたぶん、それぞれの濃度は薄くなってしまったかなと。
───スペシャルシリーズ「Master Deckset 羽根山ウララ」ブースターパック「武奏烈華」版は「Master Deckset 廻間ミチル」に続き、最新パックの同梱版として再リリースされています。こちらはスタートデッキとしての位置づけとして展開しているものかと存じますが、今後はスタートデッキに置き換わるものになるのでしょうか。

木谷:置き換わることはありません。今回のような商品は、既存のキャラクターが長く活躍していて、連動するブースターもたくさん出ているなかで、シリーズの途中からでも新規参入ができますよという位置づけになります。なので、もし今後新しい主人公が出たり、新しいキャラクターがたくさん出てきたりというタイミングになったらスタートデッキは出しますよ。

───続けて『ヴァイスシュヴァルツ』(以下『ヴァイス』)についてお伺いします。「ヴァイスシュヴァルツ presents『きんいろモザイク』スペシャルトークイベント」について、カード化されるシーンをイベント内で選んだり、AGRのサインを壇上で直筆したりと、カードとのつながりが非常に強いイベントに感じられました。今回は15周年記念という側面もあるかと存じますが、今後もこういった試みを実施する予定はあるのでしょうか。
木谷:いや、今回のイベントに関しては、純粋に『ヴァイス』チームに作品が好きな担当がいたからでしょうね。趣味でやりたいことをやったって感じじゃないかな(笑)。ただ、IPをお借りするコンテンツに関しては、より原作のメーカーさんと近い関係で商品展開をしていきたいという想いはありますから、その一環としてどれだけお近づきになれるかやってみたというところじゃないでしょうか。ですから、チームの熱量と原作サイドの熱量がうまく噛み合ってくれれば今後もこういった試みはできるかもしれません。
───エクストラブースター「VIRTUAL GIRL @ WORLD’S END」の発売日がトライアルデッキ「夢限大みゅーたいぷ」と同じ2026年3月6日に更新されましたが、これは同タイトルとデッキ混成が可能というルールが影響した変更なのでしょうか。
木谷:ひとつは、エクストラブースターだけで出しても種類数が少ないし、寂しいかなという考えがありました。それから、来年3月はトライアルデッキ「夢限大みゅーたいぷ」以外にも関連コンテンツに動きがありますので、そこに発売日をあわせて相乗効果で盛り上がってほしいという狙いになります。
───今回のデッキ混成可能というルールは『ヴァイス』では珍しい形になるかと存じますが、例えば『バンドリ!』ユニット内での追加など、今後デッキ混成可能なタイトルは増えていくのでしょうか。
木谷:強引に進めていこうというつもりはありませんが、特例にするつもりもないので、相性が良ければ可能性はあるんじゃないですかね。もちろん、混成可能なタイトルが増えればタイトル間のカードプールの差もでてきてしまうので、それを補える形でやれたらいいですね。
また『VIRTUAL GIRL @ WORLD’S END』に関してはまだリリースしたばかりですが、ビジュアルノベルなので発売後も長く手に取っていただけるタイトルだと考えています。『ヴァイス』だけにとどまらず、他のコンテンツとも連動した企画を出せればと思いますので、今後のアナウンスにご期待ください!

───次は、今年7月からスタートした新規タイトル『ゴジラ カードゲーム』についてお聞きします。初の大型イベント「ゴジカ・フェス2025」を終え、ブースターパック『逆襲の怪獣大決戦“G”』も10月4日に発売されたタイミングとなりますが、海外を含めたユーザーの反響や、木谷社長の手応えはいかがでしょうか。
木谷:順調に売れているので、まずは良かったなと。だって、ゴジラばっかり出てくるゲームですよ? 一見、カードゲームとしてはあまり向いていない題材だとは思うじゃないですか。
───1デッキ1怪獣というデッキ構成もそうですし、街を進攻していくルールコンセプトもかなりユニークですよね。以前のインタビューでは「カードゲームは女性キャラクターのカードを入れるべきと提案したものの、最終的には現行の怪獣のみにフォーカスする形になった」ともお聞きしました。
木谷:カードゲームは基本的に女の子のキャラクターを入れないとカードゲームユーザーが反応しにくいですし、商品を続けるうえでキャラクターの数も重要になります。これに両方限りがあるわけですからどうなるものかと思いましたが、現状はかなり支持をいただけているかなと。
「ゴジカ・フェス2025」にも幅広いお客さんに来場いただきましたが、やはり他のタイトルと比べると年齢層が比較的高めで、カードゲームユーザーよりもゴジラファンに響いている気がしています。商品の売上もオフィシャルストアがトップですしね。そこは原作再現を重きにおいた世界観やルールにして正解でした。

───ブースターパック『逆襲の怪獣大決戦“G”』の収録作品のなかで『ちびゴジラの逆襲』はかなりユニークなラインナップに感じられました。こちらの収録意図があればお答えください。
木谷:たくさんのタイトルからピックアップされたひとつであって、特に大きな意図はないとは思いますよ。ただ『ちびゴジラの逆襲』は各種プラットフォームで現行配信されているタイトルですし、映画の上映前アナウンスとかにも起用されているので、結構目にしているお客さんは多いんじゃないですか? それこそ『ゴジラ』シリーズを知らない方にもフックとなる作品として選ばれたのではないかなと。
───ちなみに、こういったカードの収録作品はブシロード様、東宝様のどちらがメインで選ばれているのでしょうか。
木谷:双方から意見を出し合い、お互いに相談をしながらという感じですね。特にカードゲームの内容に関わる部分はブシロードからオファーすることが多いですが、逆に東宝さんから推していただく場合もあります。
───本作は木谷社長としても思い入れの強いタイトルだと伺っております。実現可能性はひとまず度外視として、実施したいイベントや施策などあればお聞かせください。
木谷:今後「ゴジラ」シリーズの新しい映画が公開されたら、映画館のロビーとか、劇場の眼の前で初心者講習会を開きたいですよね。これからもっと原作ファンへの認知を増やしていきたいというところで、一番ファンが集まるところで実際に遊んでいる光景を見せられれば、やってみたいと思ってくれる人も増えるんじゃないかな。
───映画鑑賞の前後ってどうしても時間が余りがちですし、そうしたタイミングで「時間潰しにちょっと遊んでみようかな」という流れはありそうですね。新作だけでなく、旧作のリバイバル上映みたいな企画でもあり得るのでしょうか。
木谷:可能性としてはゼロではないです。ただ、カードゲームのイベントが開けるようなスペースがあって、なおかつ1日中同じ作品を上映してもらわなきゃダメでしょうね。こういった企画に限らず、原作ファンにアプローチできる施策は増やしていきたいです。

───『Shadowverse EVOLVE』(以下『エボルヴ』)についてもお聞かせ願います。初のオリジナルストーリーのカードパック「新約都市・透京」が11月に発売されますが、オリジナル展開はどれくらい前から企画されていたのでしょうか。狙いとあわせてお答えください。
木谷:企画・開発を手掛けるCygamesさんより『エボルヴ』の展開初期からオリジナルストーリーのカードパックのアイデアをご提案いただいていました。単に『エボルヴ』だけでオリジナル展開をするのではなく、アプリ『Shadowverse: Worlds Beyond』のストーリーに名前だけ登場していたキャラクターが『エボルヴ』で初めてカード化されたり、新たなストーリーが特設サイトで公開されたりと、『Shadowverse』IPファンの方に、リアルカードにも興味をもっていただくことを狙いとしています。

───今後のコラボを除くブースターパックは従来のアプリ版のカードが登場する商品とオリジナルストーリーの商品が並行して展開されていくのでしょうか。
木谷:まだ『エボルヴ』で登場していない『Shadowverse』『Shadowverse: Worlds Beyond』のキャラクターが多数存在するので、引き続きそちらを優先してカード化していく想定ですね。オリジナルストーリーの商品については、「新約都市・透京」の反響を見て、Cygamesさんと良いアイデアを検討していきます。
───ここからは2026年5月3日(日・祝)・4日(月・祝)に東京ビッグサイトで開催されるアナログゲームの祭典「カードゲーム祭2026」についてお伺いします。現在アナログゲームブースの出展を11月14日(金)まで募集されていますが、募集状況はいかがでしょうか。
木谷:まだ具体的には回答できませんが、すでに多くの反応をいただいております。今年の「カードゲーム祭2025」で規模感やブースのバラエティ感みたいなものがお伝えできたかと思いますし、来場者も例年以上に増える見通しですので、アナログゲーム企業の皆様への注目度も高まっているかなと。特に外国からの来場者は、今年は1000人弱くらいでしたが、来年は3000人くらいになる予想ですので、海外へのアプローチにもつながるイベントになるはずです。引き続き出展申し込みのほうお待ちしております!
───会場も例年より大きくなると伺いました。
木谷:西1・2・4ホールに加えて、アトリウムも使いますから、3割増しくらいになりますね。アナログゲームブースはもちろん、ブシロードタイトルのブースや展示もさらに充実させますし、来年はメインステージを復活させて、歌のコーナーも設けられればと考えています。特に『バンドリ!』は3日に有明アリーナでライブがあって、ビッグサイトまで歩いて来られるんですよ。昼はカードゲーム祭に参加して、夕方からライブへ行くお客さんも結構いるのかなと思っていますので、会場のコンテンツも充実させたいですね。
───最後は戦略発表会から離れて、カードゲーム業界についてご意見をうかがえればと思います。他社を含め新規カードゲームが続々とリリースされるなか「既存タイトルから連想しやすいわかりやすいルール」にするか「これまでにないユニークなルール」にするかは、新規タイトルを開発、展開するうえで重要な要素になっているかと存じます。こうした「ルールの難しさ」について、木谷社長のお考えをお聞かせください。
木谷:たしかにカードゲームで新規参入をするにあたって、人気のタイトルに似たルールにしたほうが始めやすいですよね。でも、うちはあまりそういう方法は取らないですし、意識もしていません。ゲーム時間が短いほうがいいとか、そういった傾向は取り入れますし、後発の他社タイトルが似てきてしまうことはあるかもしれませんが、基本的にはオリジナリティの高いタイトルが揃っていると思います。
また、他社のIPをお借りするタイトルに関しては、何よりもまず原作の再現度を第一にしますね。その結果、ルールがユニークになることもありますし、既存のルールに寄ってしまっていても原作のファンが喜んでくれるならアリだと考えています。
───新規タイトルは原作付きのものも多いのでうなずけます。
木谷:そもそも、従来のカードゲームはオリジナルの世界観を広げていくか、複数のIPを参戦させてキャラクターを増やすことで成立させてきたんですが、キャラクター数の限られる単一IPでも成り立つという大きな例外が近年生まれたことによって、それに倣えと新規のカードゲームタイトルが増えてきたわけです。
ブシロードがタイトルを増やしたのもこの例外、新たなタイプのカードゲームに挑戦したわけですが、他社タイトルの動きをみても、やはり単一IPタイトルの限界はあるのではないかなと今は思い直しています。カードの性能が変わっても、同じキャラクターばかりが続くと新鮮さが失われて「このキャラの希少なカードはもう持っているからいいかな」みたいな離れ方がどうしても起きてしまう。もちろん、そのなかでも好調なタイトルはありますが、もともとのIP人気が極めて高かったり、SNSの話題性を常に獲得できるIPだったりと、確固たる強みを持っているものに限られる印象です。
ただ、限界があることは決して悪いことではなくて、単一IPタイトルという新しいパターンなりの展開方法や、着地点が見えてきたということですね。
───なるほど。それでは、今後はどういったタイトルに勝機があると思われますか。
木谷:ひとつは値段と売り場の差別化ですよね。他のタイトルは予算的に手が届かないキッズ層に向けて、競合が生まれないような売り場で展開できれば普及しやすい。あとは、オリジナルの世界観で作るパターンも成り立つ可能性はありますが、美少女キャラクターはメインにすべきと思っていて、これは一度やってみたいですね。尺が短い代わりにクオリティを追求したショートアニメとかも一緒に展開して。
───オリジナルタイトルは商品展開と連動して世界観も広がっていくのが楽しいですよね。他のタイトルとの差別化でいうと、ルールはもちろん、高レアリティのカード加工のような仕様も気になります。
木谷:そういうトレーディングカードとしての要素は大事だと思っていて、最近は「箔押し加工にちょっとでもいいから本物の金が含有されているものを使えないか」と社内で訴えています。そうすればカードとしての価値だけでなく、物質的な価値もある程度担保できますから。『ヴァイス』では抽選販売商品としてプラチナ製カードを出していますが、プラチナの価値も年々上がっているので、カードの価値も上がっていくでしょうね。それ以外にも素材に凝っていく方向は今後アリだと思っています。見せ方としても、例えば今はほとんどのタイトルが公式大会でもスリーブ使用が必須ですから、共通面(裏面)にテキストのないイラストを全面に印刷するみたいなやり方も通用するかもしれないですね。
───最後に、記事の読者へ向けてひとことお願いいたします。
木谷:繰り返しにはなりますが、来年1月12日(月・祝)の「カードファイト!! ヴァンガード 15th Anniversary ブシロード新春大発表会2026」にご期待ください。カードゲームの発表も色々ありますが、『バンドリ!』などブシロードコンテンツの発表も例年以上の新情報を発表させていただきます。また、発表会の冠にもなっている15周年の『ヴァンガード』が2月26日(木)から、18周年を迎える『ヴァイス』が3月28日(土)から記念キャンペーンを実施する予定なのですが、こちらの詳細も新春大発表会で発表させていただきます。東京ドームシティ「Kanadevia Hall」にて有観客で開催しますのでぜひご来場ください!

───ありがとうございました!






























