HOME記事スケールモデル世界30ヵ国以上で導入されたジェット練習機「T-33A シューティングスター」とは? 航空自衛隊と縁深い本機をプラッツキットとともに紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】

世界30ヵ国以上で導入されたジェット練習機「T-33A シューティングスター」とは? 航空自衛隊と縁深い本機をプラッツキットとともに紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】

2025.10.14

いまさら聞けないすごいヤツ!!/T-33A シューティングスター●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2025年11月号(9月25日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 T-33A シューティングスター 

イラスト/大森記詩

「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は航空自衛隊のパイロットの基本操縦課程やメカニックを多数育ててきたジェット機「T-33A シューティングスター」をご紹介します。


T-33A シューティングスター

全幅/11.9m 
全長/11.5m 
全備重量/3795Kg

エンジン/アリソンJ33-A-35 
馬力/約6600馬力 
最高速度/850km/h 
航続距離/2040km


第302飛行隊 沖縄県・那覇基地 1991年

T-33Aシューティングスター左側面イラスト
T-33Aシューティングスター上面イラスト
T-33Aシューティングスター裏面イラスト

T-33A シューティングスター

解説/宮永忠将

第501飛行隊 茨城県・百里基地 1984年

T-33Aシューティングスター右側面イラスト

 世界大戦機のDNAを継ぐジェット練習機 

 第二次世界大戦の末期に、ロッキード社はジェット戦闘機P-80の開発に成功した。そして空軍が独立してからもF-80と改称して使われていた。もっとも、ジェット戦闘機はスゴい勢いで進化を続けていたので、P-80は割と早い段階で陳腐化してしまう。
 特に翼端に向かって直線的に細く絞られるテーパー翼形状の主翼はプロペラ時代の名残であり、音速で勝負するジェットには不向きな構造であった。反面、低速飛行時には安定性が良くて操縦しやすい利点もあったので、戦闘機型の発展に見切りを付けて、P-80を元にしたジェット練習機を開発することが決まる。それがT-33Aだ。P-80Cというモデルを原機に、胴体の延長して複座化し、機首に4挺も積まれていた12.7mmブローニングM3機銃を2挺に減らす。さらに見た目にも印象的な燃料タンクは、特に落下させる必要がないので半固定式となった。
 このT-33A練習機はたちまち評判となり、アメリカ空軍のみならず、世界30ヵ国以上で導入されて、生産機数は6500機以上と、オリジナルの戦闘機の4倍近くも作られている。もっとも、練習機ばかりでなく軽攻撃機のような前線配備にも使われている。ちなみにニックネームの「シューティング・スター(流れ星)」は、戦闘機時代からのものだけれど、T-33Aにも引き継がれて、こちらのほうが有名になった。

 航空自衛隊の「若鷲」を鍛える 

 T-33Aは航空自衛隊とも縁が深い。まず空自が発足した1954年にアメリカから68機も供与されただけでなく、翌年からは川崎航空機でライセンス生産が始まり、210機も作られたのだ。パイロットのみならず、日本の航空産業再生のかけがえのない足がかりとなった練習機であったことが分かる。
 合計278機ってすごい数だ。そんなに練習機って必要なの? と思ってしまうけど、旧軍時代に国産ジェット機はなかったから経験者がいないし、発足したばかりの空自では、パイロットだけでなく整備員などのメカニックも大量に育てなければならない。また交通インフラが貧弱だった時期には、幹部のタクシー代わりに飛ぶ連絡業務も多かったし、異動や昇進でデスクワークにまわったパイロットの資格維持のための所定の練習飛行も必要だ。さらには敵役のアグレッサー機となって、空戦訓練にも使われている。日本の高度経済成長期の空には、これでもかというほどのシューティングスターが飛び交っていたのだ。1980年代に後継となるT-4中間練習機が導入されるとともに退役が加速して、2000年夏までに全機が退役を済ませている。
 ちなみにT-33Aの導入当時、空自では「若鷲」というニックネームを半ば公式化して普及を図った。T-33Aに限らず、空自機をなるべく愛称で呼ぶようにして、社会に根強い自衛隊への不信感を和らげようとの狙いがあった。だけどこれはさっぱり流行らなくて、機種名に直結した「サンサン」と呼ばれたりした。そして全機退役した今では、ニックネームを耳にする場面のほうが稀である。


Honda.Jet


 本田技研工業傘下の航空事業会社「ホンダ エアクラフトカンパニー」は、2010年代に小型ビジネスジェット機のHonda.Jetを完成させた。この開発にT-33練習機が関与している。同社は2機のT-33中古機を購入して、独自開発の自然層流翼の試験ベースに使用した。この成果が、抵抗が低くて、高い速度領域での特性に優れたSHM-1という主翼形状につながっている。同社が公開している技術レポートでは、T-33を用いて、全スケールの飛行試験が実施されたという記載もある。こんな形で、戦後すぐに開発された初期ジェットの魂が、最新のビジネスジェットにバトンタッチされていった実績は、ちょっとエモい。


 プラッツは航空自衛隊の飛行機を多数キット化しています。本キットも堅実な作りで、メリハリあるパネルライン、シャープなディテール、さらにシートベルトや計器盤が貼るだけで立体的なデカール&色分け表現になる「3Dデカール」も付属します。

プラッツ「1/72-T-33A」キャノピーパーツ
▲キャノピーはとても透明度が高くきれい。ワンパーツで表現されているので、本体との組み合わせも楽
プラッツ「1/72-T-33A」3Dデカール
▲3Dデカール。各ディテールが立体になっていて、貼るだけで色分けと立体感の両方を表現できる
プラッツ「1/72-T-33A」ランナー
▲パーツ数は控えめ。バリエーションでエンジンパーツやエンジン架がセットになったものもある
プラッツ「1/72-T-33A」デカール
▲キットのデカールは、イタリアの高品質デカールメーカー「カルトグラフ」によるもの
プラッツ「1/72-T-33A」説明書の塗装図
▲説明書内の塗装図はフルカラー。塗装する際にとても便利だ
プラッツ「1/72-T-33A」パッケージ

1/72 航空自衛隊 練習機 T-33A 第302/第501飛行隊 計器盤・シートベルト3Dデカール付

●発売元/プラッツ●2750円、発売中●1/72、約15cm●プラキット


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