いよいよ明日公開『牙狼<GARO>TAIGA』! 北田祥一郎(冴島大河役)×雨宮慶太(原作・脚本・監督)対談インタビュー!
2025.10.16共演者とスタッフに支えられた撮影の日々
──撮影中の雨宮監督とのやり取りで北田さんの印象に残っていることを教えてください。
北田 監督からは内面的な、感情の部分で「もっとこういうふうにして」と直接指導を受けた記憶はあんまりなくて。画(え)で見たときに「アゴちょっと下げて」とか、「もうちょっとこういう立ち方にして」とか、そういう指導がほとんどでした。
──大河の感情についてはどう表現しようと考えていましたか?
北田 台本を何回も読んで話を理解しているつもりではあったので、そこのラインは守りつつ、自分の中の大河像を意識しながら撮影に挑みました。一緒にお芝居をする役者さんとの掛け合いも大事になると考えて、自分がやるべきことにその瞬間、その瞬間で集中し、掛け合いの中で出せていたらいいなと思っていました。
──雨宮監督は北田さんの撮影時の様子で記憶に残っていることはありますか?
雨宮 北田くんの一番の長所は性格がいいところで、そこがスタッフからも好かれていたと思います。あとはまだ若い未知数な役者さんだから、そこに向き合って撮っていたかな。へっぽこな部分をどう削ぎ落として、かっこいい部分を残していくか、とか。食べ物で例えるならスペアリブみたいなんですよ。ボリュームがあるように見えるけど、意外と可食部が少ない。
北田 (笑)。
雨宮 よくよく見てみると、「この立派な骨をかっこよく撮れば、映画になるんじゃないか?」と気づいたり。若い頃の大河をどう描くのかというより、とにかく北田くんをかっこよく撮ることにこだわっていた。撮影部のみんなもそういう感じでしたね。まあ小西も(冴島雷牙役・中山)麻聖も、みんな初めはそうですよ。でも、そういうところが若い役者さんの魅力でもあるんです。
──他のメインキャストの方々の印象についても伺います。まずは本作の大河のパートナー的な存在である、吹奇役の神嶋里花さんから。
北田 神嶋さんがいるだけで現場が明るくなって、安心感がありましたね。僕よりも年齢が下なんですが、何でも話すことができて、すごく頼りになる存在でした。
雨宮 今回の映画の中では、大河と吹奇の掛け合いが一番大事なんです。ふたりの関係がよくないと、映画が輝かない。僕が自分で台本を書いているから、役者さんに「こういう感情で」と説明することはできるんですが、それをすると演技が濁ってしまうんです。
──そういう理由もあって、現場で北田さんに感情面での演技指導をされなかったんですね。
雨宮 演技をよくするための答えはひとつだけで、演者が自分で考えて、自分なりにお芝居をするしかない。そうしたときに、輝いたいい演技になるんです。かといって、「自分で考えて」と言葉で伝えると、自分で考えたことにはならないんですよね。本人がそういう気持ちになってくれないと。そのためにどうするかというと、僕が一番大事だと思っているシーンの本読みを、しつこくやるんですよ。そうすればどんな役者さんでも、「何度もやるということは、ここのシーンが多分大事なんだろうな」と考えるはずなんです。クランクインする前も、部屋を借りて半日くらいずっとやっていました。本当にビックリするほどやったもんな。
北田 そうですね(笑)。
雨宮 他の「牙狼<GARO>」のときも、そういう方法でやっています。神嶋さんも本読みをやるうちにわかってくれたみたいで、やるたびによくなっていました。現場の撮影のときは、だいぶスムーズにできたよね。
北田 はい。何度も本読みをやったおかげで不安がかなり取り除かれたので、安心して現場に入ることができました。
雨宮 まあ、アクション練習みたいなものですね。
──続いて、白虎役の波岡一喜さんはいかがでしたか?
北田 最初の印象は、「ずっとテレビや映画で見ていた人だ!」と(笑)。もちろん撮影中は大河として、しっかり向き合わせていただきました。波岡さんと一緒にお芝居をしている時間は、本当に不思議な時間でしたね。特に丘の上で撮ったシーンは、街並みの向こうにきれいな海が見えるという景色も相まって、夢の中にいるような感覚でした。波岡さんはめちゃくちゃ優しい方で、初めてお会いしたときはちょっとビビっていたんですが(笑)、お話ししてみたらすごく気さくで、休憩時間にはいろいろなお仕事の話をしてくださいました。おかげで緊張がほぐれて、本番では僕も楽しみながらお芝居できて、本当にありがたかったです。とても素敵な役者さんで、お会いできて幸せでした。
雨宮 詳しくは話せないんですが、テーマ的に白虎の目線がこの映画が持っている目線につながってくるので、波岡さんじゃなければ難しかったかもしれない。白虎の父性を感じさせるシーンは、実際に波岡さんにお子さんがいることもあって、話が早かったですね。そういう場面では、波岡さんにすごく助けられました。
──本作の敵役である蛇道を演じた瀬戸利樹さんの印象は?
北田 瀬戸さんは僕にとって、信頼できるお兄ちゃんみたいな存在ですね。アクションでは瀬戸さんと呼吸を合わせるところが多かったんですが、信頼し合っていないとお互いにケガをしちゃいますし、僕が身体で覚えたいタイプなこともあって、何回も一緒に練習していただきました。カメラを下に置いてワンカットで撮ったアクションシーンは、僕と瀬戸さんの呼吸を合わせることがめちゃくちゃ大事だったので、撮れたときは気持ちよかったというか、高揚感でいっぱいでした。瀬戸さんはあまりアクションはしたくなかったかもしれないんですけど(笑)、「瀬戸さん、合わせてもらっていいですか?」と聞いたら「おお、やろう!」とおっしゃってくれて嬉しかったです。
雨宮 瀬戸くんは「アクション苦手なんです」と言っていたからね。だから、「アクションは手下が全部やるから大丈夫だよ」と説明したんです。
──蛇道が直接戦うシーンも結構多かったですよね?(笑)
雨宮 ええ。現場で「約束と違うじゃないですか!」と言われて、「いや、手下が倒されちゃったんだよ」と(笑)。でも素晴らしいアクションをやってくれて、ポテンシャルのすごさを感じました。
──北田さんはアクションシーンの撮影はいかがでしたか?
北田 僕はアクションの経験がほとんどなくて、最初はどう動けばいいのか、どこでカットがかかるのかもわからない状態だったんです。事前の説明でだんだん不安が取り除かれていったんですが、いざ本番となるとやっぱり緊張してしまって、はじめの頃は何回もリテイクして迷惑をかけてしまいました。でも、アクション部の方やカメラマンさんに支えていただき、途中から自信も少しずつ出てきて、何とか最後までやりきれたという感覚があります。
雨宮 アクションは手数も大事だけど、結局は芝居なんだよね。ちょっと手慣れていない、不器用なところもありましたが、後半は顔を作ることが大事だとわかりはじめていて、筋はいいと思いますよ。
──雨宮監督がアクション監督の鈴村正樹さんとタッグを組んだのは本作が初めてですが、撮影にあたってどのような話し合いをされましたか?
雨宮 台本に立ち回り的なことは大体書いているから、ディスカッションはあんまりしていないんですよ。昔の『牙狼<GARO>』を研究したうえでアクションを構築してくれて、僕が忘れていたこともやってくれたりしていましたね。アクションに関しては彼にお任せし、僕はそれを合成や色で質の高いものに仕上げることに集中できて、すごく助かりました。
──アクション監督として信頼できる方だったということですね。
雨宮 ええ。彼は台本がしっかり読み込めて、アクションの中に入ってくる言葉や表情もきちんと撮れるから、アクション監督というより演出家ですね。横山(誠)監督もそうですが、アクション監督で面白い画が撮れる人は監督のスキルがある人なので、彼も監督ができると思います。
──北田さんの鈴村アクション監督の印象は?
北田 鈴村さんは「もっと、もっと!」と高いレベルを求める方で、何とか食らいついていきました。「もっとこうしておけばよかったな」と感じるところもありますが、自分ができることを最大限に頑張った結果なのかなと。僕がレベルアップした状態で、またいつかご一緒できればなと思っています。本当にたくさんのことを勉強させていただきました。
次ページ──初めの一本に最適な作品
© 2025「TAIGA」雨宮慶太/東北新社