ペンツールでスケールモデルが塗れるって、本当ですか?
「プラモデルの塗装」というと塗料瓶に入った塗料を用いて筆やエアブラシで色をつける方法をイメージしますが、最も簡単な塗装方法に「ペンツール」があります。今回紹介するステッドラー社製の「ピグメントブラッシュペン」は色数ラインナップが豊富で、プラスチック素材にも使えるというなかなかのスグレモノ。いろいろなジャンルのプラモデルに使って、気楽に塗装を楽しんでみることにしました。
(解説/けんたろう)
「ピグメントブラッシュペン」って?
色数が多く発色も良い、そしてプラスチックにも使える。そんなペンツールがピグメントブラッシュペン。新色が24色加わり、より淡い色調も増えたことで、さらにプラモデルとの相性が高まりました。スミ入れに、部分塗装にとワンポイントの活用から、さらなる広がりが期待できます。
ピグメントブラッシュペン
●発売元/ステッドラー●各330円、発売中
タミヤのレジェンドキット、SASジープの人とマシンをペンで駆け抜ける!
タミヤ「ミリタリーミニチュアシリーズ」の「1/35 イギリスS.A.S.ジープ」は改造を施したジープとラフな砂漠スタイルの乗員が特徴的なスケールモデルの傑作キットです。今回はこのベージュ、デザートカラーの成型色を活かしつつ、ステッドラーのピグメントブラッシュペンで楽しんでいきましょう!
▲ゲート処理と接着を行って組み立て。小一時間でここまで組み上がります。さて、ペンでどこまでいけるでしょうか。 余談ではありますが「1/35 イギリスS.A.S.ジープ」説明書の解説は必読です
1/35 イギリス S.A.S.ジープ
●発売元/タミヤ●1320円、発売中●1/35、プラキット
■フィギュアの凹凸を活用して、成型色を人へと変化させる
キットは前回同様に全体をツヤ消しクリアーでスプレーコートしてからペン塗料を定着しやすくしてからスタートします。
▲ まずは成型色のベージュより濃い色のアンバーを肌部分にまぶすように塗っていきます
▲ 成型色のに陰影と色味が加わって、砂漠でめいっぱい日焼けした色に見えてきます。ひじや膝など、ハイライトになるような箇所は大まかで良いので塗布を避けておきましょう
▲ 次に明るい色のアイボリーを使用し、先ほど塗布を避けたハイライト部分とアンバーとの境目をぼかしていくように塗ります。すると自然な陰影に変化していきます
▲ 顔も同様にアンバーとアイボリーで陰影を意識して塗装。おでこから鼻の頭のTゾーンは明るくすると遠目から見た時にメリハリがつきます。立派なひげはダークブラウンで塗っていきましょう
▲ 目や口などもダークブラウンでスミ入れの要領で描きます。服も同様にグリーンでスミ入れするように全体に塗布すると色の強弱がついた仕上がりになりました
▲ ズボン部分はパッケージを参考にオリーブダークを塗っていきます。色ムラが程よい明暗の差になるのでどんどんいきましょう
▲ 成形色のベージュがかなりあるはずですが、ペンで味付けをするだけでこんなにも“それっぽく”仕上がる! やっていた本人が一番驚きの完成形。もちろん、キットの造形が良いのも助けになっていますが……
■スミ入れと部分塗装で仕上げていこう
▲ まずはディテールに合わせてスミ入れ作業。クールグレイミディアムを使用して各ディテールに影をつくっていきます
▲ リベット部分は形に添ってクルッとペン先を動かしたり、周囲を塗りつぶしてから軽く拭ったりと、柔軟なペン先を使って好みの方法で進めてましょう
▲ こうした入り組んだ部分は少しペン先を押し付けて形状に沿わせて塗布します(強く押し付けすぎるとペン先を痛めつけてしまうので注意)
ウォーターブラシでブレンディングリキッドを使ってみよう!
ピグメントブラッシュペンをさらに豊かにするのがブレンディングリキッド。ぼかす、混ぜるなどペン単体ではできないことが、この魔法の液体で可能になります。ペンのお供としてかなり強いツールなので、ぜひ手に入れましょう。
▲ 店頭ではこのようにキャップ部分に吊るしのパッケージが付属した状態。先端がノズル形状のため容器や皿などに注ぎやすくなっています
ブレンディングリキッド
●発売元/ステッドラー●1320円、発売中●50ml
▲さらにブレンディングリキッドが楽しくなるツールもご紹介。こちらのウォーターブラシは中に水やインクなど好きなものを注入して、先端の筆先に常に水や塗料を含ませることができる便利な筆です
ウォーターブラシ 中筆、平筆
●発売元/ステッドラー●605円(中筆)、770円(平筆)、発売中●全5種
▲ ウォーターブラシは水を入れておけば、水性塗料を使用時に伸びよく塗布できる筆となり、粘度の低いサラサラとした油彩塗料ならばスミ入れペンにと、中身次第でさまざまな使い方ができます。今回はこのブレンディングリキッドを入れて、塗料をぼかす筆として使うことにしました
▲ リキッドを注入したら、穂先を下向きにして容器(タンク)を押して筆先まで押し出しましょう
▲筆先がしっかり潤ったらリキッドペンの準備完了です
▲ 筆先にリキッドを含みすぎた時は適宜ティッシュで調整します。あとはこの筆を使ってピグメントブラッシュペンで塗布した色に作業していきます
▲ さきほど各ディテールに塗布したグレーに使用していきます
▲ ジープの荷台の奥まった部分、ペンの塗料がつきすぎたところをリキッドペンでなぞってみます
▲ すると、ちょっと塗料が広くつきすぎた部分が筆によってぼかされ、端に追い込むことができました。こうやってスミ描きをぼかすことで修正、さらに影っぽく落とし込めます
▲ ペン先が入りづらく、余分に塗りすぎた部分がリキッドペンでの拭き取りとぼかしで程よいスミ入れになりました
▲ 黒はインテンスブラックがオススメ。タイヤのリム部分に沿って塗り分けるのも楽勝
▲ タイヤの溝にも先端がガンガン入っていきます。ペン先が細くコシもあり、筆のように扱えるのが心強い
▲ ムラなく黒くなりました。インクの反射がタイヤのちょっとしたゴム感や銃器のギラつきにちょうどいい感じですね
▲ シートのクッションも塗りましょう。ダークブラウンを使って、パーツの境目に沿って塗ります
▲ 境目を狙いやすいのは先が細くペン先ならでは。先端が鋭く塗り分けもラクラクなのがこのペンのよいところ
▲ シートをダークブラウンで塗ると、ムラによって実車のペラペラなクッション部分をいい感じに演出してくれます。この2色でジープを塗った感が高まりました
▲ さあ、ここからは陸ものであるAFVアイテムではお馴染み! ウェザリングをしていきます。ダスティローズを地面に近いところに塗りつけましょう
▲ 指で押したり、引いてみたりして、インクをぼかします。指が汚れるのでやや気は引けますが、これが単純で味のあるランダム感を生みます
▲ ほかにも本体色に近い色を選んでまぶします。パッケージでも緑が目に入るので、パステルグリーンを選択。やや使い込んで汚れる中央部分をイメージして塗布しています
▲ 下は砂、中は使い込み、端はキズ、みたいなイメージで汚すのですが、深く考えすぎずにとにかく色数が増えると良いぐらいの感覚でで塗っていきます
▲ ボンネットも同じく、ランダムにペタペタとインクを増やして砂や雨、オイルなどの汚れだと思いながら色を乗せます。ブラウン系のアンバーを使用
▲ そして、ここからがウォーターブラシとブレンディングリキッドの活躍場所。表面をふんわりとなでると、ペンのちょっとした輪郭や色がばらけていきます
▲ ちょっと強かったペン汚しの輪郭が、ふんわりとぼやけたり、混ざったり、端に掃き寄せられたりして、いかにも汚しっぽいランダムさが増えます
▲ やや暑い場所で長く使ってきた車輌のような、蓄積された汚れを表現できました。リキッドで3色のペンの輪郭は溶けて混ざり、より面白く機能しています
ペン×AFVで、ここまでできた!
成形色につや消しコートからスタートし、ペンでスケールモデルをどこまで塗れるかを試しました。ブレンディングリキッドも使うことで、汚しもできています。あとは人と車輌を合わせて完成のときです……!
▲ 人と車輌を組み合わせると、なかなか色合いも豊かになり、これが成形色をそのままペンで作ったものだよ、とはパット見ではわからないようになりました
▲ 特に人は、肌部分や服の影部分にうまくマッチするブラッシュペンを使うと、見違えるような変化と立体感を強調する効果が生まれます
▲ またリキッドはペンの輪郭の硬さをうまくぼかす力が強く、汚しのようなふんわりとした表現をすぐに作れます
▲ もちろんフィギュアの造形の良さもありますが、新色のスキントーンが成形色に血色やハイライトを与えて、かなり活き活きとした姿にできました
▲ またインテンスブラックはその名の通り濃い黒で、つや消し面に塗るとそれだけでゴムや金属のような発色が出ます。これ単独で転輪のゴムやちょっとした黒の塗装が済むなら最高ですよね
▲ SASジープはすごくシンプルに完成させることができ、ペンも素早く作業ができたので、肩の力を抜いて1日で遊ぶのにちょうどよいアイテム。相性のよい素材ですね
成形色と相乗効果を狙うと最高!
気楽なペンツールでも、塗り込んでからリキッドを使うことでインクが広がり、表面に深みを与えてくれます。この組み合わせでいかにも全体に塗装をしたような雰囲気を作れる、というのはかなり驚きでした。表面の色にうっすら汚しが重なれば、それはもう塗装をしたかのように機能する……。そのために成形色に近い色やブラウン系の色を狙って集めてみると、味よい仕上がりが狙えるでしょう。
1/35 イギリス S.A.S.ジープ
製作・文/けんたろう
1/35 イギリス S.A.S.ジープ
●発売元/タミヤ●1320円、発売中●1/35、プラキット
[次のページ]実験だ!ペンだけの全塗装! >
©BANDAI SPIRITS 2023