【コードギアス 新潔のアルマリア】ep08「隠れるのがお上手なのね」
2025.08.08『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。 ハクバの新月の前に現れた機体、それはかつてピースマーク最強と謳われた、コードネーム・オズの業火白炎だった。果敢に業火白炎に挑むハクバだが…。果たしてオズと業火白炎の目的とは!? 新たなる展開を迎える第8話、開幕!!
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
ナイトメアフレーム新月モデル製作 おれんぢえびす
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.08|『隠れるのがお上手なのね』
合衆国中華。広州の郊外へと向かうハイウェイの中央で立ち上る爆炎。その異常事態に気づいた人々が車を止め、遠巻きに様子を窺っている。
「何が起こってるんだ?」
「見ろよ、爆発があったらしい」
「おい、あれってナイトメアじゃないか?」
車を止めた人々が指差した先で、二機のナイトメアフレームが空高く伸びる爆炎の前で対峙している。ハクバの新月と、かつてピースマーク最強と謳われた業火白炎だ。
「その機体に乗っているのが誰であろうと、狙いがイワンなら簡単に渡すわけにはいかないんでね!」
先に動いたのはハクバの新月。片脚のランドスピナーを交互に加速させ、ステップを踏むように業火白炎との距離をつめていく。しかし、一方の業火白炎は構えたまま微動だにしない。
「宗賀流二の折、村雨!」
新月が両腕の統合兵装の刃を展開しつつ、大きく飛んだと思うと回転しながら業火白炎に迫る。ここでようやく左腕で防御態勢をとる業火白炎。そこに新月が斬りこむかと思いきや、新月はそのまま業火白炎の目の前に着地。着地姿勢のかがんだままの状態でランドスピナーをフル回転させる。ハクバの狙いは最初から業火白炎の足周り。武装を上半身に集めたアンバランスな機体構成を見抜いたハクバは、フェイントをかけつつ股関節を狙って一気に業火白炎の懐に潜り込もうとする。
「もらった……、っ!?」
絶妙なタイミングで統合兵装を突き出すが、思いもよらない感覚を覚える。
「なに!?」
見ると、新月の刃が、業火白炎の右腕から展開されたハサミ状の武装、参式荒咬鋏によって止められている。業火白炎のパイロットもまた、ハクバのトリッキーな動きから狙いを読んでいたのだ。
「惜しかったな、白い月下型のパイロット」
「この声、白炎のパイロットか……」
刃同士が触れたことで、業火白炎のパイロットの声をファクトスフィアが拾う。この機会を逃すまいとばかりにハクバは業火白炎のパイロットに話しかける。
「おい、あんた。このタイミングで仕掛けてくるってことは、目的はイワンだろう?」
「……」
返答はないが聞こえているとわかる。ハクバは提案を持ち掛けることにした。
「俺は奴に話を聞きたいだけだ。その後はあんたの好きにしてくれていい」
業火白炎がピクリと動き、新月の刃をはさんでいたハサミの力が弱まる。
「……いいだろう。なら、無駄な戦闘はここまでだ。ついて来い」
言うや、業火白炎は新月を放すと、ハクバたちを先導するように走り去る。
「聞こえたな、ふたりとも。俺たちもいくぞ」
「了解」
ハクバの指示を受け、ドクたちのトレーラーも業火白炎を追って走り出す。
広州郊外の廃れた漁村。再開発が行われるらしく、住民はすでに立ち退いていて電気も通っていない。そんな真っ暗な道を二機のナイトメアとトレーラーがやってきて、コンクリートの建物のひとつに入って止まる。その一階部分は荷下ろし用の搬入口となっており、ナイトメアとトレーラーを隠すには格好の場所となっていた。
「ここならゆっくり話ができる」
そう言いながら業火白炎のコックピットハッチから姿を現したのは、紛れもなくオルフェウス・ジヴォン。右目を眼帯で覆っているという変化はあるが、オズのコードネームでピースマーク最強のエージェントと言われた男だ。
「やっぱりあんただったのか、ピースマークのオズ……」
新月のコックピットハッチを開き、その目でオルフェウスの生存を確かめるハクバ。
「オズ……。確かに俺はオルフェウス・ジヴォンだが、もはやピースマークの人間ではない」
オルフェウスがトラックヤードのプラットフォームに降りると、ハクバもそれに倣う。
「オルフェウス・ジヴォン。あんた、3年前のマドリード決戦で死んだって話なんだが……」
オルフェウスに近づこうとしたハクバが人の気配に気づく。他にも人がいることに警戒したハクバが辺りを確認すると、穏やかな声が聞こえてきた。
「おかえりなさい、オズ」
プラットフォームの奥から姿を現した女性を目にした途端、さすがのハクバも驚きで声をあげる。
「あんたは……!」
そこにいたのは、かつての神聖ブリタニア帝国第88皇女であり、3年前にマドリードで命をおとしたはずのマリーベル・メル・ブリタニアだったからだ。
「ただいま、マリー。ひとりにしてすまなかった」
「ううん。私は大丈夫。その方たちはお客さん? すぐにお茶を入れるわね」
「ああ。頼むよ」
オルフェウスの言葉を受け、薄暗い奥の部屋へと戻るマリーベル。
「い、今のって……」
「ゆっくり話をしよう。お茶でも飲みながら、な」
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