ARTPLA「エヴァンゲリオン初号機“ヤシマ作戦”」をキットレビュー!ラッカー塗料の薄塗りによる透け感を活かした塗装解説は必見!
2025.08.14
エヴァンゲリオン初号機“ヤシマ作戦”【海洋堂】 月刊ホビージャパン2025年9月号(7月25日発売)
ラッカー塗料による薄塗りの筆致が生々しい空気感を醸し出す
海洋堂がまたしても傑作キットを贈り出したーー。その名は「エヴァンゲリオン初号機“ヤシマ作戦”」。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の終盤、第6の使徒への反撃を行うべく、陽電子砲による第2射の射撃体勢を取る初号機。劇中のハイライトを繊細な造形力で表現した谷明氏の傑作造形を、一切の妥協なくプラキットとして落とし込んだ本品。そんな海洋堂の渾身作をどのように仕遂げるか。筆塗りの匠・大森記詩が丁寧にラッカー塗料の薄塗りを重ね、質感を高めた作例を解説する。
ARTPLA SCULPTURE WORK エヴァンゲリオン初号機“ヤシマ作戦”
●発売元/海洋堂●8800円、発売中●約15cm●プラキット
▲造形の大本は谷氏によるアナログ原型。それを全パーツ3Dデジタルデータに変換してプラキット用に再構築している。当時の原型の完全トレースではなく、ディテールを深くしたり太くしたりして密度感を底上げ。他にも第2射時の陽電子砲を持ち上げた状態でも安定して飾れるよう、陽電子砲基部を一体成型にして堅牢にする処置など、見映えはそのままにプラキット化のための調整が随所に施されている
▲正式名「大出力型第2次試作自走460mm陽電子砲」を含めた横幅は約36cm。これでも2021年に発売された全長80cmの塗装済完成品(当時価格140800円/笑)よりも大幅リサイズされ、サイズ・価格ともにお求めやすくなっている。当時塗装済完成品の購入を見送った人も、初めて知った人も、今回のプラキット版をぜひとも組み立ててみてほしい
▲あえてざらついたテクスチャを目指して筆塗りすることで、第6の使徒が放った高熱線に曝され、外装が劣化したイメージを盛り込んでいる
▲肩や前腕のマーキング再現用に、水転写式デカールが付属するのがありがたい。デカールの上からルマングリーンに極少量の1番ホワイト(下地のグリーンと同じ色)を加えたものを薄くまだらに重ね、文字がところどころかすれたような風合いをつけた
▲陽電子砲の機関部はさまざまなディテールが交差しており、見せ場のひとつとなっている。黒サーフェイサーから立ち上げて金属暗色を重ねていくことで重量感やダメージ表現を加えている
▲支柱にはアクセントで赤色を追加してみた
▲初号機が担ぎ上げたため、浮き上がった状態の陽電子砲の履帯。こんなところにも細密なディテールが彫刻されている。あらゆる方角から眺め回しても全く飽きのこない芸術品だ
▲初号機の塗装はブルーをベースにパープルを足したものを重ね、仕上げでパープル単色。最後はこれに僅かのホワイトを加え、淡い色を主とした筆致によるテクスチャーをランダムに加えていき、ところどころ白っちゃけたような、巨大兵器にふさわしい空気遠近法的タッチを表現した
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ⓒカラー
大森記詩
現代美術家。本誌では「ミキシング/キットバッシング」の手法で作り上げたオリジナルSFメカを製作する「MIXINGSCAPE」を連載中。現在開催中の「集英社マンガアートヘリテージ」での展示など、めきめきと頭角を現す実力派モデラー。