HOME記事特撮鈴村健一 我が暮らし特撮と共に【WEB版】第3回「スーパー1こそスーパー1」

鈴村健一 我が暮らし特撮と共に
【WEB版】第3回「スーパー1こそスーパー1」

2025.08.01

 『仮面ライダー(新)』こと『スカイライダー』の放送が1980年の10月に終わって、翌週から放送されたのが『仮面ライダースーパー1』です。実は『スーパー1』も最初の頃は「怖いな」と思って観ていました。『スカイライダー』初期のようにホラー色が強いわけではないんですけどね。

 スーパー1に変身する沖一也って、これまでの主人公たちのように、やむを得ず仮面ライダーになった人じゃなくて、自らの意志で惑星開発用改造人間に志願するんです。育ての親でもある大月ウルフさん扮するヘンリー博士は最初「一也、この手術を受ければ君は元の体には戻れないんだ」と反対するんだけど、沖一也は亡くなったお父さんの遺志を継いで宇宙に行きたいと強く頼み込んで、ヘンリー博士も折れて「一也、改造人間第一号には君になってもらう」と改造手術を施す。で、第1話の前半は今でいう「変身講座」みたいな、「君の体のチェックテストを行う!」と言ってヘンリー博士がスーパー1のファイブハンドの能力を解説してくれる、ちょっとハッピーな展開で進みます(笑)。と、そこに急に闇の王国ドグマが襲ってくるんですよね。ヘンリー博士は沖一也を逃がそうとするけど、博士を始め仲間たちは殺されてしまって、ひとり残された沖一也は咄嗟に変身して逃げるんだけど、どうやって変身したのかわからない。つまり、変身の仕方を知らない。それがすごく怖かったんです。「変身できない仮面ライダーなんているの!?」って。「やられちゃうじゃん!」って本気で沖一也の心配をしましたよ。その後、変身の方法を体得するために赤心少林拳という拳法を学ぶという、あの展開がリアリティがあって良いんですけど。
 自ら志願して改造人間になるという行為も怖かったですね。子供心にも「僕がもし、そういう選択肢を迫られたらどうするだろう?」と考えさせられました。スカイライダーの筑波洋みたいに敵に瀕死の重傷を負わされたら改造されても仕方ないですけど。でも、あれも痛そうだなあ。ヒーローになることの過酷さがとてもリアルに伝わってきましたね。

 ワクワクする所もたくさんありましたよ! スーパー1はほかの仮面ライダー以上にサイボーグ感が強いところが良いですね。腕が5種類の能力を持つファイブハンドに変化するというメカニカルな改造がほかの仮面ライダーより強そうに見えました。スーパー1はテレビシリーズに関しては歴代ライダーの客演なしですからね。途中から敵組織もドグマからジンドグマにパワーアップしたけど、ひとりで戦い抜いたとても強いライダーです。

 バイクを2台持っているというのも凄かったです。ブルーバージョンは、どうしてお盆が着いてるんだろう? って思いましたけど(笑)。Vマシーンなんてベースがハーレーですからね!! カッコよくて憧れましたねえ。高速移動用のVジェットに変形するんですけど、この変形が可能な玩具が当時出ていたんです。『スカイライダー』の時にスカイターボが家に来なかった悲しい思い出があるので、リベンジで再びおねだりしたんですよ。そしたら父親が買ってきたのはブルーバージョンだった! お盆乗ってる方じゃん! って思いました。どうも僕は欲しいライダーマシンの玩具とはご縁がなかったようですね(笑)。

 この『スーパー1』で仮面ライダーシリーズは再び一旦途切れます。同時期に放送された『ウルトラマン80』もそうですけど、僕たち当時の子供は最終回後の予告を「次はどんなヒーローが始まるんだろう?」とワクワクして待っていたんだけど、それがなかった。これは本当に寂しかったですね。でも、変わって登場したのが宇宙刑事シリーズや不思議コメディシリーズなど新たな世代の特撮番組で、数多の挑戦的な作品が生まれた時代でもありました。次号の「宇宙船」ではこの辺りを語れればと思います。

文◎鈴村健一
タイトルデザイン◎野中剛

鈴村健一(すずむら・けんいち)

声優。9月12日生まれ。大阪府出身。主な出演作に『グリッドマン ユニバース』ナイト役、『勇気爆発バーンブレイバーン』ブレイバーン役、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』シン・アスカ役など。『仮面ライダー電王』リュウタロス役、『魔進戦隊キラメイジャー』魔進ファイヤ役など特撮作品への出演も多い。


「我が暮らし特撮と共に」誌面版は宇宙船にて連載中

 鈴村健一コラム「我が暮らし特撮と共に」は雑誌「宇宙船」とホビージャパンウェブで交互に連載! 誌面版の次回は10月1日発売「宇宙船vol.190」にて!

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