【コードギアス 新潔のアルマリア】ep.07「どこにいるか見つけださないと」
2025.07.04『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。 ロイドを無事救出したハクバたちは、ナイトメアフレームの複製強化を目的とする“LDM計画”の存在を知る。ハイウェイを走行中、鋼髏の奇襲を受けるハクバたちだが、そこに異形の両腕を持つ白い装甲のナイトメアフレームが現れる……。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
ナイトメアフレーム新月モデル製作 おれんぢえびす
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep.07|『どこにいるか見つけださないと』
陽が沈んだ合衆国中華の広州市の中央。中華風の内装が施された高級ホテルのラウンジで、恰幅のいい中華服の男が茶を飲んでいる。中華系マフィア黄山幇を束ねる、陳永映だ。
「やつはまだか?」
「間もなく到着するようです」
脇に立たせた黒服の部下に問う陳。大きなテーブルの向かいの席は空席。どうやら誰かを待っているらしい。
「陳永映。ここ広州で幅を利かせているマフィア黄山幇のボスだね」
陳から少し離れたテーブルで様子を窺っているサトリが、陳に対して背を向けているハクバに告げる。
「ほう。大物だ。で、ターゲットのほうは?」
「今来たみたい」
ハクバがサトリの目線の反対側に目を向けると、ガラス面に反射して入り口側が見える。ちょうど大柄のブリタニア人男性がチャイナ服の女給に案内されてやってきた。
「イワン・スヴォロフだ」
「無職博士の言ったとおりだったね」
「俺たちの悪徳政治家潰しも無駄じゃなかったってワケだ」
ハクバは数日前に救出した無職の天才ロイド・アスプルンドとの会話を反芻する。
「君たち、“LDM計画”って聞いたコトある?」
ロイドが発した言葉を受けて、ハクバはドクを見やるが首を横に振っている。続いて、セシル、ニーナら防衛企画開発高等研究所のメンバーを見たが、ふたりも同じ。
「いいえ。私たちも聞いたことがありません」
「やっぱり裏でしか知られてないかぁ」
呑気にお茶をすするロイド。
「もったいぶらずに早く話しなさい」
「うへぇ」
カノンに促されて子どもみたいな表情を浮かべつつも、ようやく話し始める。
「LDMというのは、Legacy Development Modelの略。レジェンド級と呼ばれる最高峰のナイトメアフレームの複製強化機体とか、そういう意味らしいんだ」
「レジェンド級というと、博士たちが開発したランスロット・アルビオンやチャウラー博士が開発した蜃気楼みたいな機体ですか?」
「おそらくね。他にもナイトオブラウンズのワンオフ機体なんかもそれに当たるかな」
「一機で戦局を覆しそうな機体がレジェンド級といえるのかもしれないわね。今は戦闘用ナイトメアフレームの開発は規制されているから、作ることができないもの」
ドクの質問に答えるロイド。セシルも補足する。この説明でハクバもイワンが現在置かれている状況を把握する。
「なるほど。今となっては規制されている高い戦闘力を持つナイトメアを複製する計画、それがLDM計画というわけか。イワンはそれを売りに裏社会で身請け先を探しているんですね?」
「ご名答~♪」
「どういうこと?」
サトリが小首を傾げる。
「さっきアスプルンド博士が言ってただろう? イワンはナイトオブファイブの工房主任をクビになったって」
「うん。真似っこしかできないからクビに……、そっか。その弱点を売りにしたんだ。自分では新しい機体を作れないけど、強い機体を完全再現できる。それって今の平和な世の中だと……」
「引く手あまたってワケだ」
ハクバの説明とサトリの理解にドクも納得。
「そうそ。で、イワンの噂は瞬く間に裏社会に広まったってワケ」
「現在、ナイトメアの開発、所有どちらにも厳しい規制が設けられているわ。裏社会にはナイトメアの戦闘力を欲しがる組織も多いでしょうね」
「確かに。今回ロイド先生を監禁していた人たちもナイトメアが目当てだったんですもんね」
シビアに現状を見るカノンの言葉に、ニーナもロイドが攫われた理由を思い出す。
「うん。最近、イワンが前の組織を抜けてフリーになったらしくてね。僕に話を持ちかけたモーガン親子も最初はイワン目当てだったらしいよ」
「結局、あなたで妥協したのね」
「失礼しちゃう!」
カノンに図星を突かれてプンスカと怒るロイド。そんなロイドをなだめながら、ハクバはロイドの言っていた目星を促す。
「まあまあ。ところで博士。さきほどイワンの居場所の目星がついていると仰っていましたが……」
「うん。なんでも中華系マフィアから接触があったらしくてね……」
「その中華系マフィアってのが、陳の率いる黄山幇ってワケだ」
ハクバの鋭い視線の先には、陳に促されて向かいの席に座るイワンの姿がある。体格がいいわりに卑屈な表情をしており、自信満々の笑みを浮かべる陳とは対照的だ。
「よく来てくれた、イワン・スヴォロフ博士」
「あなたが黄山幇の……」
「ああ。陳永映だ。早速ビジネスの話を……」
「悪いが、その話は無しだな」
「っ!?」
音も無く、いつの間にか陳たちのテーブルの脇に立っていたハクバに陳もイワンも驚く。
「だ、誰だ?」
「あんたに用はない。俺が用があるのは、あんたのほうだ。イワン・スヴォロフ博士」
懐の銃を抜こうとする陳の護衛を、何事もなく瞬時に昏倒させたハクバは、陳を一瞥してイワンに向き直る。
「ひっ!」
短い悲鳴を上げて駆け出したイワンだったが、その勢いのまま、サトリに背負い投げされて床に転がってしまう。
「逃げようとしても駄目。痛い目見たくないでしょ?」
悪役のようなセリフを言いつつ、サトリがイワンをホテルの外に連れ出す。
「貴様らいったい……」
「陳永映、あんたには関係ない。だから大人しくしてるこった」
護衛もやられ、手出しができずに顔をゆがめる陳。そんな陳を置いて立ち去ろうとするハクバだったが、ふと言い忘れたことを思い出す。
「あと、汚い商売からは早々に手を引いたほうがいい。でないと、あんたたちをいずれ潰すことになる」
そう言い残して立ち去るハクバ。
「くそう! この陳永映をコケにして広州から出られると思うなよ!」
苛立ちを抑えきれない陳は、携帯電話を取り出して部下に連絡を入れた。
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