【試し読み】“性能以外のことを形で語る”――『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のメカニカルデザインを手掛ける山下いくと氏にインタビュー!【月刊ホビージャパン8月号より抜粋】
2025.07.01『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』メカニカルデザイン 山下いくとインタビュー 月刊ホビージャパン2025年8月号(6月25日発売)
■GQuuuuuuXのノリシロ
――あらためてGQuuuuuuXのデザインについてお聞かせください。
山下:放送が終わったら言わないとダメだなと思っていたのですが、やりたいことはいろいろあったにもかかわらず、まだノリシロになってしまっている形状があるんですよ。メカとして突き詰めていくと、キャラクターにはなっているけど、実はメカとして成立しない箇所が山のようにあります。
――具体的には?
山下:例えば、大腿部の上にパイプが入っているパーツがあります。実はこれ、どこにもつながっていませんよね?
――確かに。何か理由があるのでしょうか?
山下:企画段階ではここに追加スラスターを付けようか検討していました。アイデア検討の一環ですね。全身そんな箇所だらけなんですよ。ビーム・サーベルは腰のリア部にマウントしていますが、ハードポイントは腰のサイドにもありますから。
――ノリシロよりも、伸びしろと捉えたほうがよいかもしれませんね。
山下:ロケットエンジン的にタンクがいくつも見えていますが、「じゃあガンダム世界、宇宙世紀のロケットエンジン用燃料は何なの?」って話も出てきます。それこそザクの設定途中に、熱核推進だったら、ロケットエンジン用の燃料は「別に水でもいいんじゃない?」くらいに考えていたのが、GQuuuuuuXのときは推進剤と酸化剤を分けたほうがいいとか。そうなると燃料の一番危ない物質を大腿部の赤いタンクで隔離しているんですよ。
――被弾しにくいように脚の内側に配置されているわけですね。ザクの太モモまわりにある丸いパーツは、その燃料タンクと考えてよいでしょうか?
山下:ザクに関しては先ほどのお話しした通り、熱核推進で熱膨張を使っていると考えていたので、中身はただの水。だからタンクが露出した構造になっているんです。
――一年戦争時代のMSと最新鋭機の違いですね。
山下:でもその設定もボンヤリしていて、実際のところは不明…な話になっています。
――首周りにある襟部分についてはいかがですか?
山下:マフラーみたいな構造になっていますが、当初は頭部に入っているオメガ・サイコミュシステムを常時監視するためのシステムの想定でした。それこそ初期設定では時々クルクル回るつもりで描いていて。現在のCGアニメの技術なら普通に劇中で表現できると思っていました。でも実はそれ難しいらしいんです(笑)。
――何か技術的なハードルがあったのでしょうか?
山下:フィルムは等速で動いているけど、アニメーション自体は一定速度で進行していないですよね。メカなり、キャラクターなり、動いたり、止まったり、時にはスローモーションなどを繰り返している。なので、そこに等速で回転する動きを入れると、かなりややこしいことになってくるんですよね。特にカットのつながりもあるので、事故が発生する可能性が極めて大…ということでボツになりました。
――設定上は頸部バルカンですよね。青いパーツが展開して、バルカンが露出します。
山下:一応、(襟周りが)旋回もできる構造になっていますが、本来は別用途のパーツでした。これも使い間違えたノリシロのひとつです。
――歴代ガンダムのなかでも、めずらしい箇所への配置ですよね。
山下:何しろ赤いガンダムで「頭部にバルカン砲は収まらないよ」を絵でやってしまったので、もう(『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』においては)他のMSでも頭へ内蔵できなくて。自分で自分の首を絞めたんですよ(笑)。制作デスクさんに聞かれたのは、「ゲルググの頭部の穴は機関砲じゃないですよね?」って。
――ゲルググのデザインモチーフである『機動戦士ガンダム』のジムであれば、ガンダムと同じくバルカン砲でしたよね。
山下:ゲルググの場合はセンサーです。もし、ゲルググにもバルカン砲を装備するのであれば、赤いガンダムみたいにはみ出した部分をあらためて設定しないといけないですから。
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