【試し読み】“性能以外のことを形で語る”――『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』のメカニカルデザインを手掛ける山下いくと氏にインタビュー!【月刊ホビージャパン8月号より抜粋】
2025.07.01『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』メカニカルデザイン 山下いくとインタビュー 月刊ホビージャパン2025年8月号(6月25日発売)
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』メカニカルデザイン山下いくとインタビュー
劇場先行版、TVシリーズと怒涛の展開で2025年のアニメを席巻している『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。内容もさることながら、メカも大きな話題だ。『機動戦士ガンダム』に登場するMSから新たな解釈でデザインされた「ザク」、「白いガンダム」、そしてタイトル名にもなっている「GQuuuuuuX」(ジークアクス)。これらのメカデザインを手掛けるのが山下いくと氏である。かつて「性能以外のことを形で語る」と発言していた山下氏に、そのデザインについて語ってもらった。
(取材/桑木貴章)
山下いくと(ヤマシタイクト)
1965年生まれ、岐阜県出身。メカニックデザイナー、漫画家。『トップをねらえ!』『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』『戦闘妖精雪風』など多くの作品でメカニックデザインを担当。2015年の日本アニメ(-ター)見本市では、監督として『偶像戦域』を発表。
■ガンダムをデザインすること
――GQuuuuuuXと赤い(白い)ガンダムはどちらも主役級でありながら、アプローチが大きく異なる別作品の機体みたいなところもありますよね。
山下:どっちも違っていて面白いくらいの感じのMSであったらいいなと思いました。私は全ガンダムリアルタイム世代なんですけど、実はそんなにじっくり観てきていないんですよ。『機動戦士ガンダム』は再放送の口ですし。本放送の頃は、むしろ『未来少年コナン』にハマっていました(笑)。あらためて自分で描いて思ったのは、歴代どのガンダムもスゴイ!
――シリーズとしては45周年、映像化作品だけでもさまざまなアプローチでガンダムが作られていますよね。
山下:“未来的でわかりやすく、かっこいい”のは、海老川兼武さんがいくところまでいっているので、もう何もできない感じがしました。ただ、『Gのレコンギスタ』であきまん(安田朗)さんが既存のガンダム像をいい意味で壊してくれたんですよ。
――サンライズ=バンダイナムコフィルムワークスさんからこうしてほしいなど、何か提案はあったのでしょうか?
山下:「こういうガンダムを作れ!」、それこそ「既存のガンダム像を壊さないように」みたいなことは一言も言われてないんですよ。
――ある意味、自由度が高いと、楽しくもあり、苦労もありみたいな?
山下:そうですね。今までのガンダム作品が軒並みすごいことをやっているなか、なんで自分はこんなにゴチャゴチャ線を描かないとできないんだろうと作業中は本当に悩みました。我ながら「もうちょっと何とかできないの?」って(笑)。
――ガンダムのデザインとして苦労された箇所はありますか?
山下:頭部のアイデアがなかなか出なかった。GQuuuuuuXは結果としてツノにガンダムっぽい要素を残していますが、かなり苦肉の策でした。あとプロデューサーの杉谷勇樹さんから「歯を付けてほしい」(笑)と要望がありました。じゃあなぜツノがあるかの話になって、もちろんガンダムだからツノがあって不思議はないけど、やはり何かしら理由が欲しかったんですよね。だから、オメガ・サイコミュのロック装置になっていて、それの解除のアイデアが出たとき、私のなかでやっとGQuuuuuuXがガンダムとなった感じです。
―― “歯”についてですが、劇中において「歯がある」とのセリフもありました。山下さん的にはこだわりがあったのでしょうか?
山下:ティザービジュアルでもボンヤリ光っていますよね。「最初から見せちゃえ!」っていう鶴巻和哉監督のアイデアです。
――カラーリングに関してはガンダムらしいトリコロールですよね。
山下:実は鶴巻監督の考えではトリコロールでなくてもよかったようです。それこそ実験機だからグレーでもいいんじゃないかという考えもありました。でも、赤いガンダムを真っ赤にしちゃったからトリコロールの席が空くし、GQuuuuuuXも「トリコロールなら何を描いてもガンダムって言ってもらえるから大丈夫です!」って話していました(笑)。
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