陸上自衛隊員を守る戦場の足「軽装甲機動車」! 広く普及しているがゆえの悩みとは?【いまさら聞けないすごいヤツ】
2025.06.21いまさら聞けないすごいヤツ!!
陸上自衛隊 軽装甲機動車(LAV)
イラスト/大森記詩
「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、陸上自衛隊員の足として不可欠な車両「軽装甲機動車」をピックアップ! こちらはニュースなどを通して見たことがある人も多いでしょう。私たちとの距離も近い陸上自衛隊の車両の特徴を見ていきます。
軽装甲機動車(LAV)
全長/4.4m
全幅/2.04m
全高/1.85m
重量/約4.5t
速度/100km/h
行動距離/約500km
乗員/4名
第34普通科連隊 第5中隊所属車両 中隊長車 板妻駐屯地
軽装甲機動車(LAV)
解説/宮永忠将
機甲教導連隊 戦闘中隊所属車両駒門駐屯地
自衛官を守る戦場の足
現在の陸上自衛隊で隊員の足として不可欠な車両。それが軽装甲機動車だ。通常の移動であれば、昔馴染みの73式小型トラック、通称「ジープ」で充分なのだけれど、自衛隊に平和維持活動のような海外危険地域での任務が加えられるようになると、一定の防御力や不整地走破性能が求められるようになる。そうした需要に基づいて1990年代後半から研究が始まり、2002年度から配備された。使い勝手の良さから、航空自衛隊も導入している。
一般に自衛隊の車両装備には制式化年度の●●式という言葉が頭に置かれる。だけど軽装甲機動車に使われないのは、調達コストを下げるため民生品を多用するためだ。民生品は大量生産でコストが安い代わりに、モデルチェンジが早いので、外見がガラッと変わる可能性もあるから、制式化年度は省略したというわけ。価格も含めた自衛隊の性能要求さえ満たせば、使用パーツの判断はメーカーにお任せしますよという仕組み。ただ名前がないのもまずいので、防衛省としては軽装甲機動車の英語名、Light Armoured VehicleからLAVと表記し、部隊では広く「ラヴ」と呼ばれているとのこと。
ジープ(もちろん今も現役)からLAVに替わって喜ばれたのは、エアコンが標準装備になったこと。たしかにジープが制式化された50年前なら、車載エアコンは贅沢すぎる装備。でも移動中の酷暑で目的地到着前に隊員が疲労しては元も子もない。実際、海外派遣任務ではこのエアコンが大いに助けになっている。居住性も武器性能の一部なのだ。
普及しているがゆえの悩み
具体的な防護性能やスペックは概略しか公表されていないけど、装甲車という名前である以上、重機関銃弾や砲弾の破片には充分な防御性があり、防弾ガラスも小銃には耐えられる。また防御性能向上のために設けられたフロントガラスのセンターピラーが、軍用車両としての表情を際立たせている。視野が狭くて運転しにくいという隊員の苦情もあるけれど、有事の防護性を優先した仕様なので仕方がない。有事には輸送機で空輸可能な即応性があるので、危険地域で自衛隊員に一定の装甲防御力を与えられるLAVのメリットは大きい。
前線に展開する戦闘装甲車両ではないので、固定武装は持たない。一応、天井のハッチから隊員が身を乗り出して機関銃や各種携行式ミサイルを使える構造にはなっているけれど、車内スペースが狭くて乗員4人の標準装備だけでも窮屈というのが実態だ。ハッチからの武器使用は最後の手段であり、優先すべきは乗員の安全な移動なのだ。一応、LAV用のリモートウェポンシステムの研究もされているけど、具体化はしていない。
そんなLAVだけど、日本国内で隊員の足として使うには「大げさ」という、意外な欠点が指摘されている。ジープに比べて軍用車両という押し出しが強いので、一般道路での移動時にやや威圧的に見えてしまい、物理的にも大きすぎて駐車に苦労する。また乗り心地が非常に悪くて、ジープより疲れるという声もある。もっとも2000両も配備されているLAVは、普段なら聞こえてこない自衛隊内部の細かい不満が広く漏れ聞こえるほど、広く普及した車両ということでもある。
小松製作所
LAVの開発製造メーカー、小松製作所は各種重機や建設機械、鉱山機械業界の巨人。防衛産業としては、各種弾薬の製造を手がけ、1980年代から自衛隊の装輪装甲車事業に参入して、重機メーカーとしてのノウハウを活かした装備に定評があった。現在、陸上自衛隊ではLAVの後継車両の検討に入っているが、小松製作所では受注数の減少によるコスト増や、要求にかなう防弾性能の確保が困難という理由から開発を断念し、自衛隊向けの新型車両開発事業から撤退すると発表した。一方で、LAVのような装輪装甲車は、新興国、新興メーカーの参入が盛んであり、世界的には注目のマーケット。日本の後ろ向きな姿勢が気になるところだ。

メカニカルな魅力をたっぷり味わえる
1/35スケールキット
2019年に発売されたタミヤの1/35キット。足周りのメカニカルな魅力がギュッと詰め込まれていたり、武装の選択でお好みの車両も作れます。このキットを買えば、本車両の魅力を思う存分楽しめます。
タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.368 陸上自衛隊 軽装甲機動車(LAV)
●発売元/タミヤ●3740円、発売中●1/35、約12.8cm●プラキット
\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/
HJMミリタリーシリーズ

陸自の愛され戦車「74式」にドーザ装置を装備!HJMミリタリーシリーズの新開発オプションパーツセットを組み合わせ実戦の迫力があふれる仕上がりに!!
国産2代目の第2.5世代主力戦車を、ドーザ装置を装備して仕上げる! 国内で設計・金型・成型、3種類から選択可能な砲身仰角、完成後も変更可能な車高可変ギミックなど、驚異の[…]
戦車のリアルな汚れ

ガンプラ汚しの前に戦車のリアルな汚れを観察!『陸上自衛隊広報センター りっくんランド』取材レポート【ウェザリング特集】
ガンプラ汚す前に、マジの汚れを見に行こう!! 実際の汚れを見る! それだけでウェザリング塗装に対するイメージが豊かになります。ここでは陸の王者と言える戦車を見ながら、どんな風に[…]
HJ Web「公式LINE」と「公式X」も稼働中!
「公式LINE」では話題のトピックや人気記事情報の配信。そして、「公式X」では最新記事の更新をお知らせしています! ぜひ友達登録&フォローしてくださいね!
公式X/@Hobby_JAPAN_Web