【コードギアス 新潔のアルマリア】ep06「まずは先にすませることがあるみたい」
2025.06.06『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー『新潔のアルマリア』。ロイド・アスプルンド博士の行方を追うハクバたちにシュナイゼルから情報がもたらされる。ニューマーリンの郊外、人気のない工場地帯でエージェント新月のロイド救出作戦が始まる。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
ナイトメアフレーム新月モデル製作 おれんぢえびす
撮影協力 BANDAI SPIRITS コレクター事業部
ep06|『まずは先にすませることがあるみたい』
ブリタニア共和国の首都ニューマーリン。巨大な国の中心となる大統領官邸もまたそこにある。ホワイトガーデンと称される建物の執務室で、シュナイゼルが次々と多くの書類に目を通している。しかし、どれも行方不明になったロイドに関係するものではない。その隣で秘書のシュネーが呆れた表情を浮かべている。
「本当によかったんですか、シュナイゼル様? 神楽耶様のエージェントをあんな利用するような真似をして」
「利用だなんて人聞きが悪いね、シュネー。ロイドがモーガン元伯爵から接触を受けたのは事実だろう?」
資料から目を離さずにシュネーに返すシュナイゼル。
「事実だからですよ。モーガンは元々反皇族派。何より、選挙でシュナイゼル様に負けて大統領になり損なった男です」
「それが何か問題でも?」
「モーガンの息子、イーサン・モーガンが素行の悪い連中を集めてろくでもない商売をしているのは、警察の調べがついています」
「知っているよ。今じゃ御法度の武器弾薬を集めているらしいね」
「しかし、国会議員の父親、パレント・モーガン元伯爵は知らぬ存ぜぬ。接触したあとに、アスプルンド博士が行方不明になったにもかかわらずです。おそらく、息子たちを使って何かを企んでいるんでしょうね」
シュネーが言葉にした「何か」が、どういった企みなのか、シュナイゼルはよくわかっている。だからこそ、渡りに船とばかりに、ハクバたちにロイドの情報を提供したのだ。
「ふむ。エージェント新月がロイドと会おうと思うと、モーガンたちが邪魔になるかもしれないね」
ようやく資料から目を離したシュナイゼルは、そう言ってシュネーに微笑みかける。
「あなたという方は……」
額に手を当て、困り顔で呆れるシュネー。
ニューマーリンの郊外。人気のない工場地帯のひとつに、黒塗りのピックアップトラックや黒いバンが何台か止まっている。工場の内部では、そこかしこに銃で武装したならず者が見張りに立っている。見張る対象は、全身油まみれでせっせとナイトメアを組み上げている男、ロイド・アスプルンドだ。研究者というよりエンジニアに近い姿のロイドが組み上げたナイトメアが壁沿いにいくつか並んでいる。
「やればできるじゃないか、博士さんよ」
サザーランドや無頼、アカツキといった、かつて戦場で活躍したナイトメアが壁沿いに並ぶのを満足そうに眺めつつ、イーサンがロイドのもとにやってくる。声をかけられて、組み上げ途中のナイトメア越しにちらりと見るロイド。イーサンが部下を引き連れているので、逃げ出せないことを悟り、苦々しい表情を浮かべる。
「あのね。こんなのエンジニアだったら、誰でも出来ることなの。君たちが僕にやらせたいことってこんなことだったのかい?」
呆れた様子で頭部あたりの配線作業に戻るロイド。
「親父は、あんたに新型のナイトメアの開発をやらせようって腹だったみたいだがな」
「ふ~ん。なるほどね。イワン・スヴォロフに袖にされたから、僕が連れてこられたってわけだ」
イワンの名を出され、一瞬、イーサンの表情が凍りつく。
「あんた、イワン・スヴォロフを知っているのか」
「そりゃあ知ってるでしょ。僕ぁ、これでもキャメロットの主任だったんだよ。ナイトメアオブファイブの機体もちゃ~んと見てたの。だから、あそこの工房を仕切っていたイワンのこともご存じなワケ」
「キャメロットの主任って……。あんた、ロイド・アスプルンドなのか?」
「あらら。知らずに連れてきてたの?」
「あのクソ親父め、そんなこと一言も……。なら、ナイトメアなんか作らせずに人質にしたほうが価値があるじゃねぇか」
「人質って。今となっては僕はただの無職だよ? 僕のためにお金を出してくれる人なんて……」
「別に金なんていらないさ。あんたが作ったナイトメアが暴走して一般人を巻き込んで殺してくれるだけでいい」
ニヤつくイーサンの言葉を聞いて、目を細めるロイド。モーガン親子の真意に気づく。
「なるほどね。帝国時代に関係のあった僕が不祥事を起こせば、シュナイゼル殿下を大統領の座から引きずり落とせる、と」
「その通り。そうすればウチの親父が新しい大統領に……」
「そんなことされると困るなぁ」
「なにっ!?」
気分よく話しているイーサンの後ろから少女の声がする。驚いて振り向くと、そこにはサトリの姿がある。
「なんだ、このガキ? どうしてガキがこんなところにいる?」
「ガキガキ、ってレディ相手に失礼なオッサンね。あなたが、アスプルンド博士をさらったパレント・モーガンって人?」
そう尋ねるサトリの左目にはギアスが灯っている。
「はあ? パレント・モーガンは親父のほうだ。俺は親父の命令でこの博士を……って、なんで俺はこんなガキに……」
「じゃあ、国会議員のあなたのお父さん、パレント・モーガンが黒幕で、息子のあんたがアスプルンド博士をさらってここに連れてきたってわけね」
「ちっ! だから、そう言ってるだろう、って俺はさっきからなんでペラペラと……」
焦るイーサンの両目には被ギアス輪が灯っている。
「これって……」
イーサンのその不可解な言動からサトリがギアスユーザーだと気づくロイド。
「なるほどね。それでさっきのシュナイゼル様を大統領から引きずり下ろす話につながるんだ」
「このガキ!」
イーサンがサトリに殴りかかるがひょいと避ける。
「俺は、この博士に暴走ナイトメアを作らせて事件を起こすんだよ! そうすればシュナイゼルを糾弾して親父を大統領の座に据えられる! くそっ! なんで全部喋っちまうんだよ!?」
そこそこキレのいいイーサンのパンチを避けながらICレコーダーを止めるサトリ。
「証拠、バッチリ録れたよー!」
と、誰もいない壁際に手を振る。すると、駐機してあったナイトメアのひとつであるアカツキが動き出す。
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