怪獣ガレージキットの商品化までをコモリプロジェクト流でお届け! ガレキを取り巻く環境の変化とは?
2025.05.12 コモリプロジェクトHP
Youichi Komori Official Web(y-komori.net)

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。寒い暑いを繰り返す春、三寒四温とはよく言ったものです。ただ、極端なのはいけませんね。二十度越えの陽気の次の日に雪が舞うなんて身体がついていきません。くれぐれも体調にはお気をつけください。
コモリプロジェクトも発足から六年が経ちました。第一弾のネロンガからスタートし、現在までに七体を世に送り出しました。僕のパソコンにはすでに第十一弾のプランまでが記されております。こうして続けられるのは、ひとえに怪獣ガレージキットファンの熱い声援のおかげです。
さて、ここからが今回の本題ですが、その前にコモリプロジェクトの商品化までの流れを簡単にご説明します。①『アイテムの選択』、②『版元への確認』、③『原型師の選択』、④『原型制作』、⑤『型抜き屋さんへ原型を送る』、⑥『インストやパッケージアートの作成』、⑦『製品の箱詰め』、⑧『発送』という具合です。 おそらくは大手であれ個人メーカーであれ、そんなに変わらないのではないかと思います。しかし、内情を細かく見ていくと、そこにはこれまでにはなかった大きな変化があります。そう、デジタル造形です。原型作りといったら昔はすべて手作業が常でした。粘土をこねて芯に盛り付け、カタチを出し、ヘラを使って微細な表現を加えていく。仮にこれをアナログ造形と例えます。対してデジタル造形はパソコンの中でそれらの作業が可能になりました。細かく、鋭く、精緻。やろうと思えば際限はなく、どれだけでもこだわった表現ができます。実際のところ第七弾のインペライザーはデジタル造形され、3Dプリンターで出力したものを型抜き屋さんに納品しました。一体どんなふうに仕上がるのか興味津々でしたが、結果はご存知の通り。圧巻のディテールに多くの皆さんから驚きと称賛の声を頂きました。
しかしながら思いがけないこともあります。これは見聞きしたことですが、出力されたパーツがあまりにも細かくて薄くなり過ぎ、剥がれたり欠けたりしてしまうことも。また、原型師さんがデジタル造形に不慣れなためか、アナログ造形をされていた頃には感じたことのないモールドの歪みやぬるさに戸惑うこともあります。
かつて東映で助監督をしていた頃、新技術としてビデオが現場に現れました。フィルムに慣れた技術者が戸惑う場面を何度も見ました。やがてその状況は落ち着いていき、どちらの良さも引き出せるように進化を遂げていきました。今、怪獣ガレージキットを取り巻く状況もそんなイノベーションの時を迎えているのだと思います。もちろん戸惑いもしますが、それはより良い未来への布石です。アナログ造形の良さ、デジタル造形の素晴らしさにますます磨きがかかり、ふたつを合わせ持った新たな造形表現も誕生するかもしれません。楽しみはまだまだ続きますね。
「Monster Theater 素晴らしき怪獣ガレージキットの世界」発売中!
怪獣ガレージキットを大迫力の特撮写真で小森陽一が解説
小説・文筆家であり怪獣ガレージキットメーカーも立ち上げた小森陽一氏セレクトの怪獣ガレージキット。熱い怪獣愛で怪獣ファンも認める小森氏が、各メーカーの怪獣ガレージキットを塗装完成品と大迫力の特撮写真で解説していく作品集です。
さまざまなガレージキットメーカーの怪獣ガレージキットを円谷特撮作品から厳選して50体、新規撮り下ろしにて掲載。その魅力を小森陽一氏による解説で紹介していきます。
\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/
発見と想像

怪獣ガレージキットを厳選一挙公開!コモリプロジェクトで製作された怪獣たちにまつわる製作秘話
コモリプロジェクトHP Youichi Komori Official Web(y-komori.net) 皆さん、いかがお過ごしでしょうか。コモリプロジェクト代表の小森です。これを書いている今は凍えるような[…]
©円谷プロ
小森陽一(コモリヨウイチ)
●1967年生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、東映に入社。その後、コラムや小説、漫画原作や映画の原作脚本を手がける。大阪芸術大学映像学科客員教授。『海猿』『トッキュー!!』『S-最後の警官-』『BORDER66』『ジャイガンティス』など著作多数。