HOME記事特撮鈴村健一 我が暮らし特撮と共に【WEB版】第2回「特撮のススメ方」

鈴村健一 我が暮らし特撮と共に
【WEB版】第2回「特撮のススメ方」

2025.05.01

 今回は『キカイダー01』のお話です。

 僕は特撮作品に興味のない友達に如何に面白いかを説明する時に「良い話なんだよ」とか「カッコいいよ」っていう話はほぼしなくて、特撮作品のちょっと変なところ、ツッコミどころを紹介して笑いを誘うようにしています。その方が興味を持ってくれる。その際によくネタにさせていただくのが『キカイダー01』です。

 『人造人間キカイダー』はドラマ性の高い、非常に面白い作品なのに、その次回作で続編でもある『キカイダー01』ははっきり言って好きではなくて、子供心に「なんでこうなった!?」って思っていました。
 キカイダーはどこか弱い部分があって、よくピンチに陥って、それでも自分で回路を直したり、修理したりしてなんとか立ち上がって、ようやく勝つんですけど、01はとにかく強いんです。01は太陽エネルギーを動力にしているので、第6話で朱ムカデに太陽光がない地下に誘い込まれてピンチに陥るんですけど、その時はキカイダーのジローが一緒だったので二人で協力して脱出して朱ムカデを倒しました。ピンチらしいピンチはそのくらいで、あとはやたら強い。僕もちょっとマセた子供だったんでしょうね。そこに物足りなさを感じてしまいました。制作の裏話を聞くと『キカイダー』がメロドラマになり過ぎたから、完全無欠のヒーローを作ろうとリブートしたらしいです。僕は再放送の世代ですけど、リアルタイムで見ていた当時の子供たちが聞いたら「いや、そんなことないぞ」「ちゃんと理解して観てるんだぞ」って思ったんじゃないでしょうか? あんなにカッコよかったハカイダーが四人衆になって雑魚みたいになってしまったのも悲しかった。

 このように『キカイダー』の好きなところがスポイルされてしまったのが『01』だと思っていたんですけど、中学生くらいの頃、別の見方があって実はめちゃくちゃ面白いということに気づいたんです。ツッコミどころが多い。今回はそれを皆さんにお伝えしたい。「殺し屋ワルダーはめちゃくちゃ強い剣客だけど犬が嫌い」なんて「なんでやねん!」ってツッコミたくなるでしょう?(笑)

 僕が好きなのは第28話「狂った町 恐怖の人魚姫大逆襲」。人魚ロボットの回です。「私は絶世の美女!」って言って出てくるんですけど、これがすごく不細工なロボットで。最初に登場した時の人間態は本当に美しいお姉さんなんですよ。でもハカイダーだけは「こんな姿はダメだ」って言って、本来のロボットの不細工な姿を見て「おお…美しい!」って恋をしちゃう(笑)。その後、人魚ロボットは01と戦ってゼロワンドライバーで鼻をへし折られちゃうんですけど、「よくも私の美貌を台無しにしてくれたわね!」って怒る人魚ロボットに向かって01が「だまれ化け物!」ってヒーローらしくない言葉を言い放つんです。いよいよ本気で怒った人魚ロボットは「お前を倒すためにもう恥も外聞もない。女のすべてを賭けた人魚ボイン爆弾を受けてみよ!」って自分の胸を取り外して投げつけてくる。「人魚ボイン爆弾」っていうのもすごいネーミングですけど、それを01は「ゼロワンキャッチ!!」って両手で受け止めて投げ捨てて、ブラストエンドで止めを刺す。でも『01』全話の中でこの回しか使わないんですよ「ゼロワンキャッチ」って。受け止めただけだけど本当に技なのか!?(笑)

 第33話「非情 子連れゴリラの涙・涙」も秀逸です。冒頭でビッグゴリラとミニゴリラというゴリラロボットが01を襲ってきてビッグゴリラは負けるんですが、実はこの2体は親子なんです。ミニゴリラはビッグゴリラを「母ちゃん」て呼ぶんですけど、ビッグゴリラは見た目がめちゃくちゃゴリラだし、声優も渡部猛さんなので、どう見てもおじさんです。
 そもそもゴリラ親子はシャドウがキカイダーの実力を測るために送り込んだ刺客で、ビッグゴリラの体には01がどれだけ強かったか測定される計測器が内蔵されていた。これを使ってミニゴリラは01に復讐しようとします。そこにビジンダーがやってくるんですよね。ビッグゴリラの残骸を拾い集めるミニゴリラの健気さに心打たれたビジンダーは「私の弟分にするわ」って特訓をしてあげるんです。その特訓が「手榴弾を投げるわよ! くらったら死ぬわよ!」ってスパルタすぎる(笑)。「死んじゃうよ!」って言いながらもミニゴリラは頑張って特訓を終えるんですけど、最終的にビジンダーがミニゴリラをお母さんそっくりな姿のビッグゴリラ2世に改造して、さらにお母さんの電子頭脳を移植するんです。特訓の意味は一体何だったのか(笑)。ビッグゴリラ2世は01への復讐心を持ちながらもビジンダーの記憶をなくしてしまっていて、01とビジンダーをピンチに陥れるんですけど、最後はビジンダーがビジンダーレーザーで倒してしまいます。せっかく育ててあげたのに。

 大人になってから観ると使い捨てにされるロボットの悲哀を描いた切ないストーリーだということがわかるんだけど、それでもツッコミどころが勝ってしまう。そういうお話が山ほどあって面白いのが『キカイダー01』です。

 そんな話をして笑いをとっていましたね。『仮面ライダーストロンガー』で言ったら奇械人ワニーダの毒ガスがストロンガーに効かなくて、「何故だ! 何故あのガスが効かなかった!?」「そんなこと俺が知るか!!」というやり取り(第7話)を紹介して周りは大爆笑でした。今、毎週『仮面ラジレンジャー』でやっているようなことを既にやっていたわけですね(笑)。
 穿った見方かもしれないですけど、それをきっかけに特撮作品に興味を持つ人が現れてくれれば良いと思っています。特撮作品とどう向き合うか? 「宇宙船」読者のようなディープなファンは、きっとそれぞれ見方が定まっていると思いますけど、僕のコラムをきっかけに初めて特撮作品に触れた方や、「宇宙船」を初めて手に取ってくれたという方は、まさにその扉が開く瞬間だと思います。ぜひ楽しみ方を拡げていただければと思います。

文◎鈴村健一
タイトルデザイン◎野中剛

鈴村健一(すずむら・けんいち)

声優。9月12日生まれ。大阪府出身。主な出演作に『グリッドマン ユニバース』ナイト役、『勇気爆発バーンブレイバーン』ブレイバーン役、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』シン・アスカ役など。『仮面ライダー電王』リュウタロス役、『魔進戦隊キラメイジャー』魔進ファイヤ役など特撮作品への出演も多い。


「我が暮らし特撮と共に」誌面版は宇宙船にて連載中

 鈴村健一コラム「我が暮らし特撮と共に」は雑誌「宇宙船」とホビージャパンウェブで交互に連載! 誌面版の次回は7月1日発売「宇宙船vol.189」にて!

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鈴村健一(スズムラケンイチ)

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