HOME記事アニメ・ゲーム毎話、作風が変わる!?産業機械のヤンマーが放つ異色のロボットアニメ『未ル わたしのみらい』はなぜ“今”作られたのか? 設定画や作品全編を通して見えてくること

毎話、作風が変わる!?産業機械のヤンマーが放つ異色のロボットアニメ『未ル わたしのみらい』はなぜ“今”作られたのか? 設定画や作品全編を通して見えてくること

2025.04.23

『未ル わたしのみらい』

 現在放送中のTVアニメ『未ル わたしのみらい』は、産業機械メーカーのヤンマーが製作・プロデュースし、毎話異なるアニメ制作会社に制作を委ねるオムニバス形式を採用。さらに通常の製作委員会方式を撤廃するという、アニメ業界でも非常に珍しい手法で生まれた。
 異なるスタジオが手がける多彩なストーリーとキャラクターデザインが交錯する中、その中心にいるのがロボットの「MIRU(ミル)」だ。本記事では、そんな本作の魅力について深掘りする。

文/オオマツ(ホビージャパン編集部)

※オムニバス形式
いくつかの独立したストーリーを並べて、全体で一つの作品にしたもの。

▲ Episode 079「スターダストメモリー」制作はLinQ
▲ Episode 101「The King of the Forest」制作はTriFスタジオ
▲Episode 217「この世の波風さわぎ」制作はSCOOTER FILMS×白組
▲ Episode 630「Re: MIRU」制作はレイルズ
▲ Episode 926「待ってて、今行く」制作はLARX×スタジオ雲雀

自分たち自身で未来を掴むために

ヤンマーは長年、農業・建設・エネルギーといった世界のさまざまな現場で“暮らし”を支えてきた。本作を通じてヤンマーが描きたいのは──そういった多様なコミュニティを尊重し、支え合う「未来の暮らし」ではないだろうか。

▲ Episode 079 「スターダストメモリー」スペースデブリ処理船のベテラン操縦士と、後任として新しく配属された女性職員に最高レベルの緊急事態が…

MIRUは時に子どもに寄り添い、時に孤独な大人を見守り、時に社会全体を俯瞰する。

エネルギー産業を基盤とするヤンマーらしく、MIRUの装備やアタッチメントは“武器”としてではなく“未来を拓く道具”としてデザインされている。

▲ Episode 101「The King of the Forest」熱帯雨林地域で暮らすマリオ。ある日金の違法採掘現場を目撃してしまい…

ただ、本作の中核を担うMIRUのデザインやアタッチメントは、最初から今の姿だったわけではない。


デザインスケッチから立体物まで“多様性のデザインプロセス”をたどる

▲ 初期のデザインスケッチ。アニメーション映えしそうな攻撃的な武装が見て取れる
▲ アニメCG用に何度もブラッシュアップされたMIRUの決定稿。シルエットが中性的になり、産業機械らしくも親しみやすいロボットに調整されている
▲ 決定稿を基に3Dモデルとして製作されたMIRU。アタッチメント類もヤンマーの産業機械に由来するものがモチーフになっている
▲ タカラトミーの協力によって試作された立体物(※商品化未定・参考出品)

 オムニバス形式のアニメであっても、一貫したメッセージを届けるためにはキャラクターに強いイメージ性を持たせる必要がある。MIRUは「スケッチ→設定画→CG→立体物」と複数のメディアを経てその姿のディテールは変わりながらも、その核となるコンセプトは揺るがず貫かれている。
 この物語は、優れたメカデザインが成立させる世界構築の妙であり、「どの時代・どの地域に存在しても違和感のない」ユニバーサルなMIRUの造形は、ヤンマーが尊重する多様性を体現するひとつの完成形とも言えるだろう。


今、この閉塞感のある時代だからこそ
未来は自分たちで掴めることを
思い出してほしい

▲Episode 217「この世の波風さわぎ」ピアノの演奏技術を高く評価された主人公のアメは、ある日、AI実証実験に協力することになり…
▲ Episode 630「Re: MIRU」分断と紛争、温暖化が進む世界で、和平交渉を成し遂げ帰国した若き外交官トシ。一息ついたのも束の間、交渉決裂の知らせに希望は絶望へ…

ヤンマーホールディングス 非常勤取締役 兼『未ル わたしのみらい』エグゼクティブプロデューサーの長屋明浩氏は去る3月に行われた先行試写会にてこう語った。

「今って紛争や震災などの、身に降りかかるさまざまな災害に対して『どうせ起きるんだから…』といった閉塞感が常に付きまとう時代だと思うんですよ。でもそんな時代だからこそ、そういった閉塞感の中で流れに身を任せるのではなく、“その先に何を想像して、どんな一歩を踏み出すか”を考えるきっかけになってほしいんです。未来を自分たちで掴むことを後押しできるようなプロジェクトを、我々が先兵としてチャレンジしてみせたかったんです。」

その意向が各話に反映されており、
主人公たちがさまざまな困難に直面したとき、「自分にはどうしようもない」と諦めるのではなく、
その先の未来に何を想像し、自分には何ができるのかを考える——。
MIRUは、そんな前向きな思考を支え、解決へと踏み出す手助けをする存在として描かれている。
エネルギーやアタッチメントを貸し、背中を押してくれる相棒のような存在だ。

▲ Episode 926「待ってて、今行く」極寒の雪原が広がる終末の世界で、相棒のポチマルとともに旅を続けるアイル。旅の途中、遠い未来からやってきたイズミフと名乗る少年と出会い…

本作は、娯楽としてのアニメーション作品や、企業が作るプロモーション映像の枠を跨ぎ、さらにその先を見据えた作品に仕上がっており、直接的ではないにせよ、現代の社会課題を内包した、社会派のアニメとしての側面を感じさせる。
この作品が生まれた社会的な背景にまで目を向けると、物語はアニメの中だけで完結せず、視聴者自身の身近な生活にも影響を与えうる前向きなモチベーションを秘めていることに気づかされる。

本作はオムニバス形式で描かれており、どのエピソードからでも気軽に楽しめる構成となっている。
ぜひ、肩の力を抜いて視聴してみてはいかがだろうか。


配信情報

TVアニメ『未ル わたしのみらい』
全5話

◆TV放送
2025年4月2日(水)よりTV放送開始
MBS:毎週水曜26:30~
TOKYO MX:毎週木曜22:00~

◆配信
2025年4月3日(木)より
毎週木曜22:30以降に順次配信
※配信開始日時はサービスによって異なる場合がございます

◆公式WEBサイト
https://miru-anime.com/


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©YANMAR

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