月面用P.K.A.「アイスムジーク」が初のプラキット化!横山宏&MAX渡辺がキットの魅力を余すところなく活かし重厚に製作
2025.03.17Ma.K. in SF3D photo Story「古参兵の戯れ」
シュトラール軍の月面中規模通信施設を警備する第9航空艦隊第2警備中隊は傭兵軍の月面用装甲服ルナポーンによる度重なる侵入を防いだ。第2警備中隊の主力兵器は地上用のP.K.A.H型に空気再生循環システムや太陽光発電システムを搭載したアイスムジークと呼ばれる月面用装甲服で、中隊にはひと癖もふた癖もある血気盛んな猛者が集っていた。
「今日から新入りが来るそうじゃないですか。地上で装甲服に乗ってたらしいが、こっちじゃ勝手が違うってことを教えてやりますよ」
古参のギュンター軍曹はヨハン曹長に話しかけ、返答も待たずに笑って整備ドックへ行ってしまった。
第2警備中隊に配属されたフランツ伍長は地上部隊所属時にP.K.A.H1でA.F.S.を撃破したこともある筋のいいパイロットだった。最初の任務はアイスムジーク2機編成による警戒地域の哨戒だった。
「おまえとバディを組むのはギュンター軍曹だ。先に言っておくが、いろいろと用心しろよ」
ヨハン曹長からそう告げられたフランツ伍長は深く考えもせず、哨戒に出る準備を進めた。
「フランツ、月面は初めてなんだってな。装甲服を着て歩くのはどんな気分だ?」
アイスムジークに乗り込んでから施設が目視できなくなったあたりで、ギュンターは尋ねた。
「月面の風景は想像以上にきれいですね。地上で乗っていたP.K.A.より視界が良好です」
少々興奮したような口ぶりでフランツが答えた。
「いくら歪みのないキャノピーでも外した時の風景には勝てないぜ」
ギュンターは突然外殻キャノピーを開放した。
「軍曹! ここは月面です!」
声を荒げたフランツはギュンターのヘルメットバイザーが閉鎖状態なのを確認し安堵した。簡易宇宙服を着て装甲服に乗り込む際はヘルメットバイザーは必ず閉鎖状態にしなくてはならない。こうやって新入りを驚かせるのは教訓めいたものなのだろう。勘のいいフランツはギュンターの真意も理解した。
哨戒を続けること1時間経った時。無線に耳をつんざくような音とともに振動が起こった。
「こちらギュンター。コードアイスムジーク! 繰り返すコード…、事故…」
すぐに永遠の静寂が訪れた。
「なんてこった。こんな筋書きは聞いてないぞ」
そう嘆いたヨハン曹長は予備機のアイスムジークに乗り込み、交信の途絶えた地点へ急行した。
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