HOME記事フィギュア【原型師列伝 外伝】フィギュア原型製作会社「スパロー」社長・瀬邉氏にインタビュー!新進気鋭「スパロー」の設立秘話やフィギュア業界の未来にかける思いを訊く

【原型師列伝 外伝】フィギュア原型製作会社「スパロー」社長・瀬邉氏にインタビュー!新進気鋭「スパロー」の設立秘話やフィギュア業界の未来にかける思いを訊く

2025.03.05

フィギュアJAPANマニアックス 原型師列伝 外伝 月刊ホビージャパン2025年4月号(2月25日発売)

フィギュアの現状とこれから

フィギュア業界と文化

 フィギュア業界の現状についてはどのようにとらえているのだろうか?

瀬邉:そうですね、物販のほうはカントリーリスクだったり、為替の問題や少子化だったり、物価高騰とかで考えるとちょっと難しくなってきているのかなと思ってはいるんです。ただ、国内に関してそうでも国外ではまだ強みがあると思っています。

 それは日本がアニメやゲーム、マンガなどフィギュアの主な発信地であり、それらが日本の文化の一環であるということ。フランスでフランス料理の修業をするように、日本でアニメやゲームといったいわゆるサブカルチャーに触れること、学ぶことに強みがあると感じている。

瀬邉:そこに対する作り手の感性やそういう技術っていうのは継承されていくものですし、欲しいものになっていくんじゃないかなと思っているんですよね。

デジタル造形とAI

 スパローでは基本的に原型はすべてデジタル造形。急速に進歩・普及してきたが、ある種の危機感を覚えているという。

瀬邉:フィギュアの原型データ製作費も抑えられるかもしれないし、もしかしたら3Dプリンターの仕事も中国に取られる流れに少しなってきてるかなと思います。

 原材料費や人件費などさまざまな原価・経費が上昇していくなかで、価格を抑えるにはますますコストダウンが必要になっており、3Dプリンター出力費や磨きについて全部ではないものの、中国でやるという流れも増えていくと予想しているそうだ。
 一方で、AIによる造形はまだまだ実用的ではないものの確実に進歩してきている。実際、スパローでも研究を進めているという。

瀬邉:自社内でそういうのも最新の技術を入れて、お客さんやメーカーさんに喜んでもらえたらなというふうには思っています。いかに自社の経験とかリソースをうまく使うかという話から発展させようということですね。まず、自社の蓄えたものをどう使うかというのもこれから。

 造形ノウハウも個人のなかで積み重ねるだけではなく、AI・デジタルの場合は外部出力して共用することも考えられる。

瀬邉:今まで属人化の仕事だったっていうことですよね。属人化しないというと、それって原型師ですかみたいにいわれるかもしれませんが、僕は原型師としてこの時代に乗って生きていくことがすべてなので、その形はこだわらないんですよね。

アルトリア・キャスターのフィギュアの画像
アルクェイド・ブリュンスタッドのフィギュアの画像

▲ スパローは一般販売のスタチュー原型も各社で手掛けている。写真はグッドスマイルカンパニーの「キャスター/アルトリア・キャスター」(写真左)と「アルクェイド・ブリュンスタッド ~Dresscode:氷河をまとう~」(写真右)

スパロー社内の画像5
▲ スパローがこれまで手掛けてきたフィギュアが収められたケースが、原型師のいるフロアに。プライズフィギュアなど、さまざまなキャラクターを数多く手掛けているが、このような大型ケースにずらりと並ぶさまはまさに圧巻!
イヴ・LOVECALLのフィギュアの画像
▲ 瀬邉氏が特に印象深いフィギュアのひとつとしてあげたのが、このPINK-CHARMから2021年に発売された「rurudoオリジナルイラスト イヴ・LOVECALL」。会社を立ち上げたばかりの頃の仕事で、このギャランティによって3Dプリンターを買うこともできて事業も安定したという

瀬邉氏に聞く!

今後やりたいことは?

 もっと“原型師”を育てていきたいと思っています。原型を作る人だけではなく彩色をするフィニッシャーや目のデカールを作る人、3Dプリンターで出力して仕上げる人も、カテゴリーとしては“原型師”として考えて。“原型師”という仕事をしてもらって、多くの人がこの仕事に携われる様に教えていきたいと思っています。
 メーカーになるというのも機会があればチャレンジする可能性もゼロではないですが、そういう思いはあまりなくて、どっちかというと育てていきたいんです。

フィギュアについて思うことは?

 フィギュアの面白さはやっぱり形になっていくものということですよね。
 ちょっと余談になりますが、その過程においてディレクションした人や担当者、版権元さんなどいろんな人から言われるチェックや指示について、自分の作品を良くするためのアドバイスととらえるか単なるダメ出しと捉えるかで大きく違ってきますよね。
 結局原型師ってそんないろんな人の協力があって名前が出るものじゃないですか。それをひとり占めするところがありますよね。そこに対してどう思うかですよね。
 アニメだといろんな工程の人がスタッフロールに載るじゃないですか。だけどフィギュアは、フィニッシャーの名前が今は載るようになってきたけど企画者・担当者が載ることはあまりないですよね。バンダイさんの『ワンピース』の「造形王頂上決戦」のような担当者&原型師タッグが出るものがあるくらいで。ああいうのも新しい形かなと思ってますよね。
 企画者がどの構図でどのポーズを作るか選んできてくれる、その恩恵をすごく受けているのが原型師と思っているんですよね。原型師が自分で企画立案してフィギュアを作るというアーティスト的なやり方もあると思いますが、自分はそっちの方向性ではないですね。
 ただ、そういうアーティスティックな考えでものを作りたいっていう考えが芽生えて、(スパローを)卒業していく人も出てくるんじゃないかな。今はそういうのはないですし、経営の部分で言ったらあんまり良くないんですけど(笑)。僕もいろんな経験をしてきましたし、原型業界を良くしてくれるんならいいかなと思ってます。

あなたにとってフィギュアとは?

 そうですね、僕の人生を変えてもらったものっていう感じですかね。普通のサラリーマン生活で別の全然違う仕事を17年間くらいやってこの業界に入ってるんです。フィギュアを作るこの仕事で僕が代表をやらせてもらって、子供3人を大学に行かせられるくらいになったのも、フィギュアで人生を変えてもらったからですし、僕の人生には欠かせないものですね。僕みたいな人生変わったとか好転したみたいな人を増やしていきたいですよね。

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