【コードギアス 新潔のアルマリア】ep01「出会いはいつも突然に」
2025.01.07『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語。
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー「新潔のアルマリア」。黒の騎士団の一員として作戦に参加するハクバたち。合衆国中華の南部に位置する特別行政区香港では、密かにハッピーチルドレンオークションなる人身売買が開始されようとしていた…。
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
ep01|『出会いはいつも突然に』
光和4年。
合衆国中華の南部に位置する特別行政区香港。複雑な歴史を持つこの地には、それぞれの思惑を持って、さまざまな人種が訪れる。色とりどりのネオンサインが煌く雑多な道を走る高級リムジン。その後部座席で暗号変換機付きの携帯電話で何者かと会話している彼女もまた、その思惑を持ってこの地を訪れたひとり。
『以上だ』
「待ちなさい。情報はそれだけ? 今夜の取り引き場所もわからないの?」
『以上だ』
そう言って、通信相手が一方的に会話を終わらせる。
「まったく。情報がこれだけだなんて、ピースマークの質も落ちたものね」
所属組織の弱体化に嘆きつつ、窓の外を見やると、幼い顔に似つかわしくない派手な格好をした少女が高級ホテルのエントランスに入っていくのが見える。
「あら? あの子は確かイザヨイの……。なるほど、“人身売買”の方で動いてるってわけね。これは使えるかも」
と、不敵に微笑む。妖艶な雰囲気をまとう彼女の名は、レディ・レディ。当然、本名ではない。いくつかある通称のひとつだが、今の彼女はそう名乗っている。
一方、高級ホテルのエントランスへと入ってきたサトリ。慣れない高さのヒールで危なげに歩きつつ、高層階へのエレベーターへと乗り込む。そんなサトリの片耳に仕込んだ小型通信機にハクバからの通信が入る。
『サトリ、情報は掴めたのか?』
「まだ。これからよ、これから」
『何やってるんだ。時間がないぞ』
「レディは準備に時間がかかるものなの!」
『準備って……。お前ならそんなのなくても……』
「TPOに合わせなきゃでしょ!」
やけに張り切ったサトリは高層階に着くや、この階にひとつしかないロイヤルスイートルームの豪奢な扉の前まで意気揚々と歩みを進める。
「さあ、いくわよ」
緊張で声をわずかに震わせながらドアをノックする。すると、部屋の中から「入りたまえ」と入室を促す声。事前に入手していたカードキーをかざして部屋の中へと入る。
「遅かったじゃないか」
広い室内に入ると、そこは壁一面がガラスで香港の夜景を一望できる談話室。灯りは間接照明のみで薄暗く、嫌らしい雰囲気が漂っている。
「遅くなり申し訳ございません。私は……、ひっ!」
サトリが短い悲鳴を上げたのは、背を向けてソファに座っていた男が全裸だったらから。小太りで醜悪な男は、待ちきれない様子でサトリに近づく。
「なんだ、変な声を上げて。こっちは待ちくたびれて……、うん?」
サトリの顔を見て、怪訝そうな顔をする男。
「派手な格好のわりに、いやに田舎臭い顔だな」
「い、いな……!」
「まあ、身体の方はよく育っているな」
「……」
嫌らしい視線をサトリの身体に這わせる男。サトリはただ我慢していたが……。
「まあいい。今夜はこのジャガイモ娘を堪能しようじゃないか」
その言葉で我慢の限界に来たサトリの怒りが一気に頂点に達する。
「誰がジャガイモか!」
男に疑問の表情を浮かべる間も与えず、その顔面に回し蹴りを食らわせる。そして、倒れた男にすかさず、
「さらった子供たちはどこ?」
と、問いかける。その左目は怪しく煌いている。
「なっ!? 貴様、黒の騎士団か? 誰がそんなことを……、九號コンテナターミナルに決まっているだろう。ウォン商会の集積所だ……、あれ?」
言うまいとしていた言葉が男の意に反して口から洩れる。
「だって。聞こえた?」
『ああ。やっぱり準備は必要なかったな』
「うるさい! 私も向かうから早く行って」
「わかってるよ。最速で向かう」
通信先のサトリに言うや、高層ビルの屋上から飛び出すハクバ。小型のパラセイルを開いて、一気に湾岸地区に向かう。
その様子を双眼鏡で見ていたレディ・レディ。「大当たり」と満足そうな表情を浮かべると、サングラスをかけ直して、運転手にハクバを追うように指示をする。
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