いまマシーネンの1/35キットが楽しい! 横山宏&MAX渡辺によるパックレーテ、グローサーフント、P.K.A.作例の高精細3Dスキャンも見逃すな!【Ma.K.in SF3D】
2025.01.141/35『Ma.K.』キットを楽しもう!! FIRSTPART
ラインナップ充実!! 1/35スケールの魅力
ラインナップが充実してきた1/35スケールの『Ma.K.』プラキットを2ヵ月にわたって特集! 前編となる今回は小改造を施した作例や凝ったヴィネットでの展示法を紹介する。
横山宏は長砲身と短砲身の両方を組むことができる海洋堂のパックレーテ2体セットを使用し防弾板付きの機体を2機製作。MAX渡辺は海洋堂製グローサーフントとP.K.A.が下り坂を歩くシチュエーションを再現し展示方法にも凝ったヴィネットを披露する。さらにキュスターとパックレーテを2個イチしたKATOOO製作のクレーテも掲載。手頃で組み立てやすい1/35『Ma.K.』キットの魅力をその楽しみ方とともにお伝えしよう!
また、本記事ではホビージャパンウェブ限定コンテンツとして高精細3Dスキャンした両氏の作例を掲載! 360度どこからでも見ることができ、筆目や質感まで見ることができるので、ぜひ製作の参考にしていただきたい。
ARTPLA パックレーテ[長砲身・短砲身]&ビクター
●発売元/海洋堂●6600円、発売中●1/35、約11cm●プラキット●原型/谷明、大上竹彦、村井太郎
対戦車砲を搭載したパックレーテと呼ばれる2機の無人二足歩行戦車が市街地の外れで哨戒を行っていた。2機とも戦地から回収した老朽化の進んだクレーテを修理して対戦車砲を搭載したもので、さして重要ではない地域を2機だけで哨戒していた。
自宅から離れた丘陵地帯で友人のエディ・アムゼルとふたりきりでかくれんぼをしていたビクターはエディがかくれんぼに飽きて帰ってしまったことに気づいた。帰り道がわからなくなり涙をこらえながら途方に暮れていると機械が歩くようなけたたましい音が聞こえた。徐々に大きくなるその音のほうにビクターは自然と足を向けていた。やがて2機の無人機が視界に入った。無人機の色合いから、かつて父親が飼っていたパクとラテという名の2匹の犬を思い出したビクターは無我夢中で駆け寄っていった。
「パクー、ラテー! パクー、ラテー!」
ビクターが持ち前の大声で犬の名前を何度も叫びながら走って向かっていくと無人機のAIのプロトコルが反応した。90dB以上の音量で一定数以上「パックレーテ」と連呼するとその声帯の持ち主のコマンドを受け入れる古いプログラムが生きていたのだ。2機のパックレーテは駆け寄ってきたビクターを主人と認識し従順な犬となった。
2kmほど離れた市街地で強行偵察中のグローサーフントがパックレーテの哨戒停止をいち早く察知し、何者かにハッキングされた可能性が高いとの情報が半径10km圏内の僚機に共有された。
そんな中、ビクターはエディに置いてけぼりにされたことも忘れ、抜けるような青空の下で巨大な遊具のように動く2匹のパックレーテと戯れていた。
シュトラール軍 無人強襲偵察用二足歩行戦車 パックレーテ 製作/横山宏
今回はマシーネン1/35特集ということで長砲身と短砲身の両方が組める海洋堂のパックレーテを作りました。41年前のオリジナルのクレーテにはIV号戦車のように防弾板を付けたかったけど締め切りに間に合わずガイドのステーだけが残ったことは以前の記事で告白しました。その1年後に作ったパックレーテもやはり時間がなくて取り付けステーだけで登場させていたのでした。当時の記事のタイトルは「KRÖTE AUSF PAK」となってますが記事の中で「パックローテ」と呼んでいます。当時の誤謬と誤植の嵐のような製作記事をどうしても読んでみたいという人は「S.F.3.Dクロニクルズ」地の巻のP.42を参照してね。でもって今回のキットも当時果たせなかった防弾板パックレーテ用を自作しますよ!
1/35だとどんなパーツの自作もわりと手軽にできるのが嬉しいところですね。今回もウェーブの0.5mm厚プラ板(グレーなのが使いやすい)をキットの各ステーに接着するために切り出します。短めの防弾板が16mm×30mm、長いほうが16mm×33mmで1体につき各2枚、両端を指で折り曲げました。右側だけは下方に真鍮線でステーを自作で追加します。エンジン後ろの防弾板はステーとB-15のパーツに接着します。ボルトはコトブキヤのプラ製パーツ(P117)を使いました。後方は尾栓をよけるための切り欠きを入れた防弾板でメルカバのバスケットみたいになってかっこよくなりました。当時もパックレーテはアイシャーマンやメルカバを意識して作ったから当然そうなりますね。41年前、後方のステーまで作っておいて防弾板がなかったパックレーテとは明らかに佇まいの違うかっこいいシルエットになりました。ここにキット付属のビクター君を配置したりと新しいビジュアルを作ることができました。
海洋堂のクレーテ系キットは砲塔を回すとプラ製のパワーパイプが干渉して折れたり外れたりします。なので毎回金属製のパイプスプリングに付け替えてましたがSNSで「回転軸の飛び出た部分を切り欠けば砲塔を取り外して好きな向きにできる」って教えてもらったので早速それをやってみました!! もうなんの心配もなく砲塔を好きな位置にできるじゃありませんか! 面白くなって砲塔を全方位に動かしてみるうちに「パックレーテの砲弾発射時は脚位置が前後逆なのがいいんじゃないの!」と気づきました。エンジンをカウンターウエイトにして砲塔を180度回せば脚位置などが安定して反動で後ろにコケないことを思いつきます! 41年前の製作記事を書いた時からの心配事がやっと消えていくことになりました。もともとこうして撃つ設定だと思えてくるくらいですよ(笑)。
今回も2色の成型色をミックスさせて組み立ててみました。これだとパーツの接着ラインかすぐわかるのはもちろん組み立て終わるまで作るテンションが下がらないのでぜひおすすめします。塗装を先延ばしにしても飾れるのもいいですね。砲塔に薄く残っているパーティングラインは以前公開した内側をダイヤモンドヤスリで削った粘土用スクレーパーを使うとラクに処理ができます。塗装中に気がついてもそこだけ削れるのはこのツールだけです。
塗装は下地に塗ったサーフェイサーを混入したグレー系の塗料がいい感じだったので、少し明るい下面色のグレーを塗って2色迷彩にしました。そこに彩度の高い赤に近いブラウンで錆をチッピングスポンジで差し色のように塗っています。
このパックレーテにはプラキット化初となるビクター君が付属しています。41年前の『SF3D』のクレーテの回に登場したビクター君は当時の編集担当の市村君(アートボックス社長)が造形していて、当時ホビージャパン編集部に入ったばかりの新人編集者のY君がいつもシャツの後ろをズボンから出していた様子がモデルになっています。エディ君やビクター君を登場させたのはSFの世界に子供たちを出したかったからで、『ブリキの太鼓』の作者ギュンター・グラスの『犬の年』という作品があって、その中で座礁したSボートの上で子供たちが遊ぶ描写など兵器の残骸と子供たちの対比というシーンが印象的でそれを参考にシチュエーションやストーリーを構築していったのでした。今回は再びそんなシチュエーションの写真を撮ってもらえてたいへん嬉しい回になりました。(横山宏)
海洋堂1/35スケール プラスチックキット
シュトラール軍 無人強襲偵察用二足歩行戦車 パックレーテ
製作・文/横山宏
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