【プロローグ「世界の明日の前に」】『奪還のロゼ』へと続く物語『コードギアス 新潔のアルマリア』がついに開幕!
2024.11.02コードギアス 新潔のアルマリア●長月文弥 月刊ホビージャパン2024年12月号(10月25日発売)
『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語、開幕!
『コードギアス 復活のルルーシュ』と『奪還のロゼ』をつなぐ『コードギアス』の新たなるストーリー「新潔のアルマリア」。今回からはついに本編が本格スタート。日本が敗れ、神聖ブリタニア帝国の属国となり、自由と権利、すべてが奪われておよそ7年、ついに仮面の反逆者、ゼロが現れる。ゼロが作り上げた黒の騎士団に入団した宗賀ハクバは、純白に塗り替えられた専用ナイトメアでブリタニアに挑む!
STAFF
シナリオ 長月文弥
キャラクターデザイン 岩村あおい(サンライズ作画塾)
ナイトメアフレームデザイン アストレイズ
プロローグ|『世界の明日の前に』前編
俺は戦争が嫌いだ。
戦争は何もかもを壊し、何もかもを奪う。
家を、家族を、大切なものを。
俺も二度、戦争によってすべてを失った。
皇暦2010年8月10日。
世界の三分の一を占める超大国、神聖ブリタニア帝国が、突如として日本に宣戦布告。
極東で中立をうたう島国と神聖ブリタニア帝国の間には、日本の地下資源を巡る、根深い外交上の対立があった。
本土決戦において、ブリタニア軍は人型自在戦闘装甲騎『ナイトメアフレーム』を実戦で初めて投入。その威力は予想をはるかに超え、日本側の本土防衛線は、ナイトメアによってことごとく突破された。
そして、日本は負けた。
日本は帝国の属国となり、自由と権利と、そして名前を奪われた。
日本はブリタニアにすべてを奪われたんだ。
「宗賀の里が……。父上! 母上! みんな!」
「何をしている、ハクバ! 早く逃げろ。里はもう駄目だ」
「叔父貴……。しかし!」
「あの機械の巨人には、宗賀の術も無意味だ。今は逃げるしかない」
「そんな……、そんな! ブリタニアめ……」
最初に俺からすべてを奪ったのは神聖ブリタニア帝国。俺だけじゃない。多くの日本人が日本人であることを奪われた。
「結、ただいま」
「おかえりなさい、ハクバ。どうだった、外の様子は?」
「駄目だ。どこもかしこもブリタニア兵ばかりだ。日本人を捕まえてはゲットーにぶち込んでる」
「イレヴン……」
「イレヴン? なんだ、そりゃあ」
「ブリタニアが私たちをそう呼んでるって」
「日本がブリタニアの11番目の属領だからか。勝手なことを言ってくれる」
すべてを奪われた日本は、ブリタニアの11番目の属領『エリア11』となった。
エリア11に住む日本人はイレヴンと呼ばれ、ブリタニアによる差別的な支配を受けることになる。
彼が現れるまでは……。
「私は、ゼロ」
皇暦2017年。
日本が神聖ブリタニア帝国の属領となって七年の時が過ぎたある日。
トウキョウ租界のシンジュクゲットーで、軍事演習を建前に行われた日本人虐殺。その際に当時エリア11の総督であった神聖ブリタニア帝国第3皇子、クロヴィス・ラ・ブリタニアが何者かによって殺害される。その犯人とされたのが、日本国の首相、枢木ゲンブの息子である枢木スザクだった。名誉ブリタニア人となり軍に所属していた彼がクロヴィス殺害の犯人に仕立て上げられたのだ。
「間もなくです。間もなく時間となります。ご覧ください、沿道を埋め尽くしたこの人だかりを! 皆、待っているのです! クロヴィス殿下殺害の容疑者、名誉ブリタニア人の枢木スザクが通るのを! 元イレヴンを、今か今かと待ち構えているのです!」
「何を勝手なことを……」
「ハクバ、枢木スザクがクロヴィスを殺したって本当なのかな?」
「どうかな。あまりに“らしすぎて”、かえって不自然だ。おそらく、別に真犯人がいると俺は思うがね」
「ハクバの勘は当たるもんね。あっ、枢木スザクを連れた車列が来るよ」
「待て、向こう側から何か来るぞ。あれは……、クロヴィスの御料車?」
しかし、枢木スザクを軍事法廷へと連行する軍の車列の前に立ち塞がった者がいた。
仮面の反逆者、ゼロだ。
「私は、ゼロ」
「もういいだろう、ゼロとやら。君のショータイムはお終いだ。さあ、まずはその仮面を外してもらおうか」
「このカプセルを見ても、同じことが言えるかな?」
「何!? それは……」
「撃ってみるか? 分かるはずだ。お前なら」
「わ、分かった。要求は?」
「交換だ。このカプセルと枢木スザクを」
「笑止! この男はクロヴィス殿下を殺めた大逆の徒。引き渡せるわけがない!」
「違うな。間違っているぞ、ジェレミア。犯人はそいつじゃあない。クロヴィスを殺したのは……、この私だ!」
「あの仮面の男、ゼロがクロヴィスを殺した……?」
その時のゼロの姿は、俺にとって救世主のように見えた。
ゼロは、クロヴィスを殺したのは枢木スザクではなく自分であることを告げると、ブリタニアの警戒網を掻い潜って瞬く間に枢木スザクを連れ去った。これが後に英雄と称えられるゼロの鮮烈なデビューだった。
当初は愉快犯かのように思われたゼロだったが、彼が成そうとしていることを全世界が知る事件が起きる。それは、サクラダイト生産国会議が開催されていたカワグチ湖のコンベンションセンターホテルが、日本最大の反ブリタニア勢力である日本解放戦線によって占拠された事件だ。
希少資源であるサクラダイトの国際配分レートを決める重要な会議。世界中の注目が集まる中、日本最大の反ブリタニア勢力である日本解放戦線が、会議の参加者を人質にとったのだ。
その人質の中には、クロヴィスに代わり、エリア11の新総督となった第2皇女コーネリア・リ・ブリタニアの同腹の妹、ユーフェミアの姿もあった。しかし、ゼロは敵対するはずのブリタニアの皇女を、多くのブリタニア人を日本解放戦線から救い出したのだ。
「ブリタニア人よ、動じることはない。ホテルに捕らわれていた人質は全員救出した。あなた方の下へお返ししよう」
「こ、これは……」
「人々よ! 我らを恐れ、求めるがいい。我らの名は“黒の騎士団”!」
「黒の……、騎士団?」
「我々黒の騎士団は、武器を持たないすべての者の味方である。日本解放戦線は卑劣にもブリタニアの民間人を人質に取り無残に殺害した。クロヴィス前総督も同じだ。武器を持たぬイレヴンの虐殺を命じた。このような残虐行為を見過ごすわけにはいかない。ゆえに制裁を加えたのだ。私は戦いを否定しない。しかし、強い者が弱い者を一方的に殺すことは断じて許さない!」
ゼロが作り上げた黒の騎士団の登場は、驚きと不安、そして希望で彩られていた。
「撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ」
世界に対して宣戦布告したゼロ。
「我々は、力ある者が力なき者を襲うとき、再び現れるだろう。力ある者よ、我を恐れよ。力なき者よ、我を求めよ。世界は我々“黒の騎士団”が裁く!」
ゼロは、悪を挫き、正義を為すと全世界に対して宣言したのだ。それは、他国への侵攻を続けるブリタニアに対して発している言葉とも受け取れた。だから、俺も決意した。
「結、俺は黒の騎士団に入ろうと思う」
「どうして……。里はもうないのよ。宗賀の家だって……。もうハクバが戦う必要なんて……」
「いや、ある。俺はお前を守りたいんだ、結。俺はお前が生きる世界は自由で優しい世界であってほしい」
世界に対して宣戦布告ともとれる宣言をした仮面の反逆者ゼロ。彼と彼の作り出した黒の騎士団は、その宣言通りの活動を実行し、世界に対してその姿勢を示した。汚職政治家を摘発し、物資の横領現場を取り押さえる。日本人のためだけじゃない。ブリタニア人にとっても利のある活動を行った。その行いはまさに“正義の味方”と言っていいものだった。
正義の味方となった黒の騎士団は、人心を集めて協力者を増やし、急速に強大な組織へと成長していく。
「君が入団希望者の……」
「はい。宗賀ハクバと言います。よろしくお願いします。あなたは……」
「俺は扇要。黒の騎士団で副リーダーをやらせてもらっている。よろしくな、ハクバ」
「はい!」
一種のムーブメントとなった黒の騎士団の成長と活躍は留まるところを知らず、多くの戦果を上げた。日本解放戦線の壊滅を目的にナリタ連山へと向かったブリタニア軍を壊滅へと追い込み、チョウフ基地からは厳島の奇跡と呼ばれた藤堂鏡志朗を奪取して処刑を阻止。そして、フクオカ基地を占拠した澤崎敦らを制した。その活躍を支えたのは、後に超合集国の世界科学委員会会長となるラクシャータ・チャウラーや三代目黒の騎士団総司令だった藤堂鏡志朗らの参加があったからだろう。
ゼロが示すこと、黒の騎士団が為すこと、そのすべてに統治国のブリタニアだけではなく、世界中が注目した。世界の三分の一を支配し、革命的な兵器であるナイトメアフレームを開発、投入して、圧倒的な武力で世界各地を侵攻する神聖ブリタニア帝国。その支配が盤石なものではないことを、仮面の男が証明し続けたからだ。
それゆえに当時の日本は、ブリタニアの属領であったにもかかわらず、反ブリタニアの機運が最高潮に達していた。いつ爆発してもおかしくないそんな状況の中、ついにあの事件が起きてしまう。
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