HOME記事スケールモデル“模型は真っ白いキャンバス”「フォルクスワーゲン タイプ2 T1 サンババス」のかっこよさが引き立つ 汚れやサビの表現を加える筆塗りで製作

“模型は真っ白いキャンバス”「フォルクスワーゲン タイプ2 T1 サンババス」のかっこよさが引き立つ 汚れやサビの表現を加える筆塗りで製作

2024.09.19

フォルクスワーゲン タイプ2 T1 サンババス【レベル 1/16】●奥川泰弘 月刊ホビージャパン2024年10月号(8月23日発売)

ワーゲンバスのプラモデルのイメージ画像2

1/16スケールというとても大きなワーゲンバス! 素敵です。製作のテーマを教えてください。

奥川(以下奥):前に一度1/16のワーゲンバスを製作したことがあるのですが、その時は運転席から後方を切り離して、その部分をキャンピングカーのようなカタチの小屋を足した仕様にしたため、いつかちゃんとしたそのままのカタチで作りたいと思っていました。今回筆塗りのお話がきた時に、1/16スケールの大きさなら筆塗りの効果をわかりやすく見せられるのではと思ったのと、いつか作りたいと思っていた1/16ワーゲンバスがうまく重なったのです。そしてこのサイズならではのパネルの広さがあれば、そこには文字を好きなだけ入れてお店のクルマにするのが一番ではないかという流れは、自分には当然のこと。だってそういうのが好きなんですから。
 現実では叶わない夢を、模型では手に入れることができます。自分の好きなこと全開で模型を楽しむ。これは今回に限らず、模型製作を続ける限り終わらないテーマです。

缶スプレーで塗った後の塗装にほぼすべて「筆」を使用されるのはなぜですか?

奥:基本的にホワイトのスプレーを吹いて、まっ白いキャンバスのような状態にします。そこに筆で色を塗るということは、絵を描くのと同じ。水彩の淡いぼかしの雰囲気や、色と色が混ざり合って滲んでいくのが好きなので、模型にもその雰囲気をなるべく表したいという想いから、筆を使って描くように塗ることを始めました。水彩画のように大胆な滲みやぼかしは不可能でも、予期せぬ発見があったり、失敗したかなという塗りが後から良いアクセントになったりと、これは筆を使ってきれいに塗るということではない、もうひとつの表現方法だと思います。
 絵を描くことが好きでした。特に「水彩画」です。それを立体でも表現したいと思うと、スプレーやエアブラシじゃ無理だったのです。だから筆できれいに塗るのではなく、わざと筆のタッチをほどほどに残します。そこへ汚しやサビを入れれば筆跡は目立たなくなります。そのような状態に「文字やロゴ」を入れればもっと情報量が増え、模型全体がひとつの絵になるんです。この完成形までの道のりは「筆」だから踏破できるのです。

文字を模型に貼る・書く楽しさとは?

奥:グラフィックデザインの仕事を40年もしていると、フォントと写真などを決められたスペースの中にどうレイアウトするかの毎日です。そうしていると作ったものの中にフォントが入っていないと落ち着かない、というのは私だけの病気かもしれませんが、模型を見ていてもそう考えるようになったのです。ロゴや文字が入ることでそれは落ち着きます。ロゴや文字による情報がある分、クルマ単体でもディオラマにした時にも、その場面や状況をわかりやすくできるというのもあるのではと思います。だから模型に文字やロゴを入れるのです。
 ちなみに今回の製作でも行ったように、文字の輪郭だけをデカールにして貼り、輪郭の内側に筆で色を塗るという作業、さすがに大きい文字じゃなければできませんが、手描きだからこその表現ができると思います。

奥川さんの模型製作の根底にある好みとか、譲れないものがありましたら教えてください

奥:自由に作りたいって気持ちです。自分だけのオリジナルにしたい。だから、建物も看板もクルマに貼るロゴも自分が考えた自分の好きな世界観のものにしたいんです。「こんな風景があったっていいじゃないか! 妄想は模型の楽しさ!」って思いながら楽しんでいます。仕事や人生では、「こうしなきゃいけない、こういう表現はよくない。こうすればもっと良くなるのに」や「ルールだからこうしなきゃいけない」など我慢することがたくさんありますが、模型にそれを当てはめたくはない。趣味なので好きなように塗って作りたいのです。でもクルマや建物はこの世界に実際にあるものだから、最低限のリサーチなどはして、これはあまりにもウソすぎるというのは気をつけています。

レベル 1/16スケール プラスチックキット

フォルクスワーゲン
タイプ2 T1 サンババス

製作・文/奥川泰弘

フォルクスワーゲン タイプ2 T1 サンババス
●発売元/ドイツレベル、販売元/ハセガワ●12500円、発売中●1/16●プラキット

1 2 3
この記事が気に入ったらシェアしてください!

奥川泰弘

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2024年10月号

ご購入はこちら

月刊ホビージャパン2024年9月号

ご購入はこちら

月刊ホビージャパン2024年8月号

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー