第二次世界大戦の火蓋を切った「ドイツII号戦車」とは! サクっと読める解説とイラストで紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】
2024.08.18いまさら聞けないすごいヤツ!!
ドイツ II 号戦車
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、実車もプラモも大人気の「ドイツII号戦車」をご紹介します。第二次世界大戦の火蓋を切った戦車であり、戦車史においてもとっても重要な車両について見ていきましょう。
ドイツ II 号戦車
全長約/4.81m
全幅/2.22m
全高/1.99m
重量/8.9t
最高速度/40㎞/h
エンジン/マイバッハ HL62TR 直列6気筒液冷ガソリン
懸架方式/リーフスプリング方式
武装/主砲・55口径20mm機関砲、7.92mm機関銃 MG34
乗員/3名
歴史的大勝利で世界大戦の火蓋を切る
解説/宮永忠将
急造戦車として開発スタート
第一次世界大戦の責任を負わされたドイツは、ヴェルサイユ講和条約で軍備を大幅に制限された上に、新兵器の開発も禁じられてしまった。ドイツの再軍備は1935年、独裁者ヒトラーがヴェルサイユ条約の破棄を宣言したことで始まる。しかし、その前からドイツの戦車設計者は、あらゆる手を使って新型戦車の開発や試験を手がけていた。
その成果が1934年から大量生産が始まるI号戦車だ。ただし「農業用トラクター」という秘匿名称で開発されていたように、I号戦車は5tそこそこの大きさで2人乗り、武装は7.92mmの機関銃を1丁だけで、装甲も13mmと非力そのもの。もっともドイツ軍はこれを訓練戦車とみなしていたので、問題はなかった。ところが本命にしていた20t級の戦車、つまりIII号戦車の開発に難航したため、つなぎとして急遽組み上げられたのがII号戦車なのである。
そんないきさつから、II号戦車に求められたのは、確実に戦車として完成させること。なので、I号戦車をそのまま10t前後までスケールアップさせただけというのが正直なところ。それでも乗員は3名に増やして、武装は2cm機関砲にグレードアップして装甲も強化されている。1939年に戦争が始まった時点で、最初の量産型であるC型を中心に1300両近いII号戦車が生産されていた。
ドイツ軍最高の勝利を演出
II号戦車にとっての誤算は、本命のIII号戦車が揃う前に戦争が始まってしまい、数の上でのドイツ軍主力戦車に押し上げられてしまったこと。意外かも知れないが、戦争勃発時のドイツ戦車は、スペックだけを見るならフランスやソ連の戦車に劣っていた。ところが1940年春にフランス軍と戦争になると、ドイツ戦車部隊は連戦連勝、陸軍大国フランスを短期間で破ってしまったのだ。
この秘訣は両軍の戦車運用の違いにあった。ドイツとフランスは双方とも約3000両の戦車を持っていたが、ドイツ軍は戦車を大きく3個の集団にまとめて、重要な戦場に集中した。これとは対照的にフランス軍は3両ずつにして全軍にばら撒いたのだ。その結果、ドイツ軍は戦車が現れるところ、常に大集団であるという戦いになり、その速度と火力でフランス軍を粉砕したのであった。
フランス戦でのII号戦車の立ち位置は、宇宙世紀における一年戦争、ルウム戦役のザクIIに似ている。全体で劣勢のジオン軍は、決勝宙域にザクIIを集中投入することで勝利の連鎖をつなげたからだ。
1941年夏に独ソ戦が始まる頃には、II号戦車は装甲強化型のF型に移行していた。だけどソ連のT-34戦車や対戦車砲には歯が立たず、間もなく戦車としての役割を終えた。だが、以降続々と登場するドイツ軍の高性能戦車は、もうフランス戦のような勝利を演出できなかった。これもザクIIと妙に似ている。ルウム戦役のザクIIは初期量産のC型が中心であり、間もなく機動性を増したF型や新型MSに置き換えられている。しかし、一年戦争を通じてザクIIC型以上の勝利をジオンにもたらしたMSもまた存在しなかったのである。
エーリッヒ・ヘープナー
ポーランド戦とフランス戦で第16戦車軍団を指揮した陸軍大将。ポーランド戦では1週間で230kmもの突破前進を果たして勝利に貢献。またフランス戦ではベルギーの平野部に突進して、プリウー将軍が指揮するフランスの戦車部隊と激突して勝利した。いずれの戦いでも、ヘープナーが率いた戦車部隊はI号戦車とII号戦車が大半を占める、ドイツ軍の中でも劣勢な戦車部隊であった。しかしヘープナーの攻撃の激しさに、フランス軍は戦況分析を誤ってベルギー南部の森林地帯を手薄にしてしまい、ここからドイツの別の戦車部隊が大突破に成功。フランス軍はなにも対処できず戦争に敗れたのである。
手のひらに収まる至高の戦車模型
1/35スケールでもコンパクトなII号戦車を、さらに小さな1/48スケールで楽しんでみてほしいです。タミヤのキットは手のひらサイズの中にディテールが凝縮しています。一体成型できるところ、パーツ分割してより立体的に見せるところのバランスがとれた、とても素晴らしいプラモデルです。
1/48 ドイツII号戦車A~C型(フランス戦線)
●発売元/タミヤ●1980円、発売中●1/48、約10.1cm●プラキット
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