【筆塗りのススメ】プラモ界のレジェンド横山宏とMAX渡辺が模索し続けた筆塗りの表現と、その魅力を語りつくす!
2024.08.13横山宏×MAX渡辺 スペシャル対談 続・筆塗りのススメ! 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)
写実性を重視するスケールものと終着点が概念のアニメものは塗り方が変わる
MAX:このブラッドサッカー、横山さんに見てもらいたかったんです。ブラッドサッカーって設定では真っ黒で、どうしようかと考えた時に「黒は黒で塗っちゃいかんのよ」という横山さんの名言を思い出して。黒イメージだけどなるべく明るいグレーに持っていこうと、横山さんが以前作ったブラックバードをベンチマークにして塗ったんです。

マックスファクトリー1/24スケール プラスチックキット“PLAMAX”
ブラッドサッカー
製作/MAX渡辺
横山:今回MAXさんが塗ったのはアニメモデルだから実物がないでしょ。存在しないものをみんな上手くまとめてるからアニメモデルを買うお客さんは全員クリエーターじゃないですか。スケールものは見たまんま作ればいいから誰だってできるけどね。
MAX:誰でもできるわけじゃないですけど(笑)。
横山:アニメのメカをプラモデルにするのは日本ならではの文化だよね。写実性を重視するスケールものと終着点が概念のアニメものは到達方法も到達地点も違うでしょ。それを冷静に分析して塗っていくのが楽しいんだね。
細い面相筆で点描のように細かく塗れば満足できる解像度になる
横山:筆塗りで隣にくる色との違いを出すために繊細な筆が必要じゃないですか。わしにTooの一番筆を教えてくれたイラストレーターの空山基さんは100号(長辺約1.6m)の絵もほぼこの筆一本で描いてます。
MAX:すげえ。それは絵にタッチが入りますね。
横山:そう。点描みたいに大きな面積をていねいに埋めていく感じ。そのことを知ってから、わしも模型をこの一番筆で塗ってるんです。仕事の絵も点の集まりで描いていて、このことは50歳過ぎた時にわかった。解像度って点の細かさで上がってくるから、解像度を満足させたい時は細かい筆でできるだけ小さい接地面で塗っていけば満足できるものになる。しかし塗る時に大きい筆でザッザッと塗っていく快感にはおよばないんだよね。
MAX:人それぞれって部分もあるんですね。
横山:うん。だからどの塗り方が自分に合ってるか、この筆塗り特集で探してほしいね。
MAX:僕が使ってるのはDIYショップで刷毛として売っているフィルバートの筆で、横山さんの筆と対極ですね。適度にコシがあるいい筆で、重曹を混ぜたパテもこの筆でたたくように塗りました。
横山:ヘラ代わりにもなって万能だね。わしは最近100円ショップで買った5本入りのネイルアート用の筆も使ってる。それを使い古し筆の先端を切って直径2mmの穴をあけてホルダーにして挿し込んでます。Tooの一番筆とは使い方が少し違う。飛行機のキャノピーの枠とか黄色い識別帯をシャープに塗る時にマスキングなしで使います。フィギュアの眼もこれで塗ったりしますね。
MAX:結構大事なところで使うんだ。
横山:最初の1本はツールクリーナーで洗った瞬間にバラバラになった! もちろんその後この筆はラッカー系薄め液で洗ってますよ。
MAX:それでバラけなくなったんですね。
横山:はい。キャノピーの枠はこのネイル筆でガイアノーツのツヤ消し剤の粉を混ぜたラッカー塗料で暗いグレーに塗っておきます。粉が水溶性だから水を付けた爪楊枝でなぞるとはみ出した部分は簡単に剥がせます。
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