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【筆塗りのススメ】プラモ界のレジェンド横山宏とMAX渡辺が模索し続けた筆塗りの表現と、その魅力を語りつくす!

2024.08.13

横山宏×MAX渡辺 スペシャル対談 続・筆塗りのススメ! 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)

横山 宏 × MAX渡辺
スペシャル対談

横山宏とMAX渡辺

続・筆塗りのススメ!

 「月刊ホビージャパン 2017年12月号」の筆塗り特集で表紙を飾った横山宏とMAX渡辺の対談が再び実現! イラストレーター、造形作家の横山氏は1980年代の『SF3D』から筆塗りで作品を仕上げてきた第一人者。マックスファクトリー、ウェーブの代表取締役でもあるMAX渡辺は月刊ホビージャパン連載「Ma.K. in SF3D」で筆塗りに開眼、筆塗りの表現を模索し続けている。そんなふたりが筆塗りの魅力を語り尽くしてくれた。
 対談当日、MAX渡辺が自身の方法で筆塗りを披露し、横山氏も筆塗りに参戦。レジェンドふたりの筆塗りをHow to形式でお見せしよう!

横山宏

横山 宏 Kow YOKOYAMA

1956年生まれ。イラストレーター、造形作家。日本SF作家クラブ所属。『Ma.K.』原作者でいまなお進化を続ける熟練モデラー

MAX渡辺

MAX渡辺 MAX WATANABE

1962年生まれ。プロモデラー。マックスファクトリー、ウェーブの代表取締役を兼任。本誌連載「Ma.K. in SF3D」は15年目に突入


筆は絵の具を置くための道具だから乱暴に扱ってもいいんです

MAX渡辺(以下、MAX):前回のホビージャパンの筆塗り特集は2017年12月号だったので、今回は7年ぶりの筆塗り特集なんですね。最新のネタということで、新たに塗ったバルキリーやブラッドサッカー、ジャイアントロボなどを持ってきました。

横山 宏(以下、横山):いいねえ。こういう時はいつものマシーネンと違う作例のほうが面白いので50年前の飛行機の模型を持ってきました。ミリタリーは筆塗りのほうが短時間で重厚に仕上がるね。

MAX:それは間違いないですね。

横山:もっと結論を言うと、模型誌の特集で筆の使い方がいろいろ書いてあるけど、ほとんど本当の使い方なんて書いてないんですよ。

MAX:そんなこと言っちゃって大丈夫ですか?

横山:うん。わしも本当の使い方はしてないもん。筆使ってお仕事してる人が見たら腰を抜かすような乱暴な筆の使い方をしてるんだけど、それでも問題ないんですよ。

MAX:乱暴っていうことなら、僕の右に出る者はいないですよ(笑)。

横山:そう、わしやMAXさんの使い方を筆のメーカーさんが見たら気を失うと思いますよ(笑)。筆の正しい使い方としては間違ってるかもしれないけど、間違っててもいいんです。

MAX:よかった。間違った使い方はダメだって言われるかと思った。

横山:正確に言うと、要は筆を使って何をしたいかのバリエーションなんですよね。

MAX:そうですよね。筆は絵の具を置く道具ですもんね。

横山:そう! そこすごく大事。絵の具を「塗る」んじゃなくて「置く」んだよね。絵の具を置くっていうことがわかればスプーンで絵の具をすくって置いてもいいかも。そのスプーンも筆になるんですね。

MAX:スポンジに塗料を付けてスタンピングして塗るのと一緒ですね。

横山:そうです。スポンジで塗っても全然いい。自分がやりたい塗装表現の最適解にどれが一番近づけるのかを考えてもらえると嬉しいかな。漫画や模型などの多くのサブカル作品は筆での表現がとても重要だし、そして現代はデジタルツールとしての「筆」も確固たる地位を占めてるじゃないですか。

MAX:模型をやってる人はみんな筆塗りのこと言いますもんね。

横山:筆はプラモデルの誕生とともに永遠にメインツールになってますよね。

MAX:このジャイアントロボ、ヤバくないですか?

MAX渡辺作例「ジャイアントロボ 」

グッドスマイルカンパニー ノンスケール プラスチックキット “MODEROID”

ジャイアントロボ

製作/MAX渡辺

横山:スゴい! これテクスチャーどうしたの?

MAX:タミヤラッカーパテに重曹を混ぜてます。

横山:戦車モデラーが昔からやってるやつだ。

MAX:ラッカーパテだけだと時間がかかるんですよ。何層も重ねていかないといけないんです。重曹を混ぜると一発でこの表面になるんですよ。

横山:これはモールドを入れるために筆を使ってるってことだよね?

MAX:そうなんですけど、そのあとの塗りも見せたいなと思って持ってきました。

横山:筆を作ってる人からしたら、腰を抜かすような使い方だけどそれも間違ってないんですね。

MAX:「筆メーカーの人、ごめんなさい」って思いながらやってます。

横山:もともと筆は生き物の毛を使ってたわけだから、そういう気持ちは大切なんですよね。おそらく近い将来哺乳類由来の筆は消滅しますね。

MAX渡辺作例「ジャイアントロボ 」ラッカーパテに重曹を混ぜたものを筆で強めにたたきつけ
▲ハードな鋳造表現はラッカーパテに重曹を混ぜたものを筆で強めにたたきつけて作った
MAX渡辺作例「ジャイアントロボ 」下地の黒を若干残して鋳造表面に本体色を筆塗り
▲下地の黒を若干残して鋳造表面に本体色を筆塗りすることで重厚感あふれる仕上がりに

筆塗りはテクニックではなく考え方
神経質になりすぎず筆塗りを楽しもう

MAX:この対談で、どう考えてるから、どう手を動かすのかって話ができるといいですね。筆塗りってテクニックじゃなくて考え方ですよね

横山:そう。考え方だよね。そこでわしが塗ってきたものも見てちょうだい。この飛行機、リベットとかいいでしょ。モールドが最初から入ってるの。

MAX:どこのメーカーのですか?

横山:タカラレベルの再販なんだけど、もともとグンゼレベルで出していた1/72の月光です。1974年初版だから50年前だよ。当時の模型誌では全然似てないってボロクソ言われてたけど実はたいへんよくできてるんだよね。どこも修正なんてしてません。いまはウェザリングカラーがあるおかげで、簡単にリアルな大戦機が完成できますね。

横山宏作例「月光」50年前の1974年にグンゼレベルから発売
▲50年前の1974年にグンゼレベルから発売された1/72月光。今回は1980年代にタカラレベルから再販された作りかけ中古キットを購入し製作した。夜間戦闘機として黒一色に塗られた機体のこのパッケージイラストが横山氏は中学生の頃から気になっていたという
横山宏作例「月光」
▲リベットのモールドが印象的なグンゼレベル時代の1/72月光。主にTooの一番筆で塗装し、ウェザリングカラーでパネルラインなどに汚し塗装を入れている

レベル 1/72スケール プラスチックキット

月光

製作/横山宏

MAX:ウェザリングカラーがあるとなんでもできますよね。渋く仕上がるし。

横山:当時の模型誌の記事では似てないからリベットのモールドを全部埋めたって書いてあったけど、そこから全部間違ってますねぇ

MAX:全部埋めたんですか? もったいない。

横山:わしは全面肯定派なのよ。なぜ肯定派になったかというと、なんにもしたくないから(笑)。

MAX:いいひと言だなあ。

横山:人の言ったことを気にするかしないかで人生決まる。このキットは1gもパテを使ってないの。すき間は全部プラ板で埋めてます。

MAX:神経質すぎないのがいいですよね。飛行機モデラーって神経を使うじゃないですか。きれいに作るために費やす時間と神経を考えたら、やりたくないって思っちゃいますよね。

横山:はい。ちなみにこの月光は50年寝かしてた中古キットをほぼ3日で作りました(笑)。

横山宏作例「月光」本体色のグリーンで線を入れる
▲「黄色は発色しにくいので最初に薄いグレーを塗ってから黄色をペタペタと筆塗りします。最後に本体色のグリーンで線を入れるとマスキングしなくてもシャープな線になります」(横山宏)
横山宏作例「月光」ハセガワから発売されている竹一郎氏原型の日本海軍パイロット
▲月光のキットにはパイロットが入っていないのでハセガワから発売されている竹一郎氏原型の日本海軍パイロットを使用した
横山宏作例「月光」月光のデカールアップ
▲月光のデカールは約50年前のもの。軟化剤入りのマークセッターを使って貼った
曲線切り用デザインナイフ、丸刃
▲デカールを切る際に重宝する曲線切り用デザインナイフ(写真上)。下は塗装面に付着した毛を除去する時に使う丸刃

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©1982,1984,1992,1994,2002,2015 BIGWEST ©2007 BIGWEST/MACROSS F PROJECT・MBS ©サンライズ ©光プロ/ショウゲート

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