HOME記事特撮サントラCD「ゴジラ大全集」復刻記念! 復刻への道程、楽曲収録当時のエピソードとは【音楽プロデューサー・鈴木則孝×ライター・高鳥真対談 前編】

サントラCD「ゴジラ大全集」復刻記念! 復刻への道程、楽曲収録当時のエピソードとは【音楽プロデューサー・鈴木則孝×ライター・高鳥真対談 前編】

2024.08.10

「ゴジラ大全集」復刻記念対談 前編
鈴木則孝(音楽プロデューサー)
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高鳥真(フリーライター)

 昭和~平成にかけてのゴジラシリーズ全22作品の音楽がリーズナブルに楽しめるサウンドトラックCDシリーズ「ゴジラ大全集」が、30年ぶりに復刻、ユニバーサル ミュージックからリリースされた。今回、企画を手掛けた音楽プロデューサー・鈴木則孝と、当時盤で構成・解説執筆を手掛けたフリーライターの高鳥真の対談をセッティング。復刻への道程、これまで明かされることのなった当時の制作秘話の数々と「ゴジラ大全集」の魅力に迫ってみた。

取材・構成/トヨタトモヒサ


●「ゴジラ大全集」復刻への道程

――まずは鈴木さんに今回の復刻の経緯からうかがえればと思います。

鈴木 僕はもともとクラシック音楽の仕事を長くやってきて、ソニー、ワーナーを経てユニバーサルにジョインしたんですけど、ソニー時代の2014年にモンスターバースの一作目の『GODZILLA ゴジラ』(2014年)のサントラを担当する機会がありました。普通なら、そのままCDにすればいいんだけど、それも面白くないと思ったので、日本版のサントラでは独自企画として、東宝さんにお願いして、2014年版の最新のゴジラの咆哮を入れさせてもらいました。その後、僕はワーナーに転職するんですけど、今度は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)のサントラがワーナーに来まして(笑)。厳密には系列のウォータータワー・ミュージックという別レーベルで、僕がいたクラシック部門ではなかったんだけど、「やります」と立候補して担当になりました。ただ、この時はサントラのリリースが映画の公開に間に合ってなかったんですよ。それで苦肉の策じゃないけど、輸入盤に帯を付けようと思って。

――あのレトロ調の帯は鈴木さんのアイデアでしたか。これは面白いと思って普通に買いましたよ(笑)。

高鳥 復刻版の「ゴジラ大全集」は、デザインや帯の形も含めて、いわばこの続きになるんですよね。

鈴木 一方で、日本のゴジラ映画とはこれまで仕事では縁がなかったのですが、ユニバーサルに籍を置いた際に、2024年には「ゴジラ生誕70周年」のアニバーサリーと『ゴジラxコング 新たなる帝国』の公開が見えていたし、ユニバーサルは、当時の東芝EMI(※東芝EMIの子会社のユーメックスも含む)の音源を持っているので何かあるんじゃないか? と思って。そうしたら家で当時の「ゴジラ大全集」の『ゴジラ』(1954年)と『ゴジラ‘84』(1984年)の2枚を見つけまして。たまたま買っていたんですよね。それで、今回の復刻企画を思い付きました。

――高鳥さんは1993年に発売された当時の「ゴジラ大全集」で、解説や構成を手掛けていらっしゃったそうですね。

高鳥 ええ。「ゴジラ大全集」が発売された1993年は、『ゴジラVSメカゴジラ』の公開年で、当時のゴジラシリーズは毎年12月公開で、翌年の頭まで上映は続くので、ちょっと早めて「ゴジラ生誕40周年」を謳っていたんですよ。そういう周年のタイミングがある中、当時は、ヒカシューの井上誠さんがゴジラ関係のサントラを色々と手掛けていたんですけど、井上さんとユーメックスの社長の藤田純二さん辺りが「いつか単独盤を出したい」と話していて、このタイミングで企画が決まったんでしょうね。それで井上さんから「手伝ってくれる?」と誘われて「やります! やります!」と。それがきっかけでした。

鈴木 普通、レコード会社は、クラシックはクラシック、J-POPはJ-POPと部門が分かれているのですが、こうしたカタログは割と立ち位置が曖昧なんですよ。隣の部署で数年前に「ベスト・オブ・ゴジラ」というアルバムを出していたので、まずは、その担当者に声を掛けたら「こういうのは分かっている人間がやるべきだ」と言ってくれて、まずは一緒に東宝に話を持っていきました。ちょうど『ゴジラ-1.0』(2023年)が大ヒットしていたタイミングだったし、東宝さんもとても前向きに受け入れてくださって、正式に動き出しました。

――歴代のゴジラシリーズは、伊福部昭を中心に錚々たる作曲家が手掛けていますが、鈴木さんは音楽プロデューサーとして、ゴジラの音楽についてはどのような印象をお持ちですか?

鈴木 ゴジラ映画がすごいと思うのは、各々の作曲家が、作品毎に全く異なる音楽を書いていることですね。特にサントラを通して聴いてみると如実に感じます。もちろん、ゴジラ映画の音楽といえば、伊福部昭の「ゴジラのテーマ」があまりにも有名ですが、伊福部音楽が染み付いている中、時々、出てくる作曲家の皆さんがとても個性的で、それがまたすごくいいんですよ。そういう意味でも、作品毎でリリースできた意味があったと思います。もちろん通して全20作を聴く機会はなかなかないと思いますけど(笑)、それぞれの作曲家が持つ音があって実に面白いですね。それから、昭和から平成になり、『ゴジラVSキングギドラ』(1991年)で、伊福部昭が帰って来るときの異常な期待の高まり! ここは是非感じてもらいたいところですね。

高鳥 今となっては、それが分からない世代が増えて来ているかもしれないですね。当時、伊福部先生が再びゴジラ映画の音楽をやるなんて、絶対に有り得ないと思っていましたからね。はじめてその情報を聞いたときは「ウソでしょ!?」と思いましたよ。

鈴木 昭和から平成にかけて、今回、仕事として聴いて思ったのは、当時としては異例のステレオ録音だった『キングコング対ゴジラ』(1962年)は別として、平成になってからのステレオの醍醐味ですよね。クラシック音楽にはモノラル時代の名盤もたくさんあるから、モノラル志向も当然あるんですけど、マスタリングでチェックしていて、ステレオは大革命だなと、まざまざと感じました。

高鳥 当時の思い出としては、『ゴジラVSキングギドラ』で、キングギドラのテーマがステレオで聴けた感動がありましたね。もちろん、伊福部先生が映画音楽をコンサート用に編んだ「SF交響ファンタジー第2番」や、当時の映画音楽の再録音アルバム「OSTINATO」に収録されていた「三大怪獣の猛威」の一部でも、キングギドラのテーマは聴けたけど、純粋なサウンドトラックとはまた違いますからね。

――高鳥さんは、「ゴジラ大全集」の復刻についてはいかが思われましたか?

高鳥 僕は今回の復刻については、最初、普通にネットで知りました(笑)。

鈴木 さすがに30年も経っていると、当時の社員も退社していて、社内で繋がれる人間がいなかったんです。これまでも関係者に会うのが大事だと思って仕事をして来ましたが、何より昭和と平成と全20枚の物量とスケジュールを考えると、探しても辿り着くのは無理そうだなと。

高鳥 何も聞いてなかったから、正直凹んでいたんですよ(笑)。

鈴木 申し訳なかったです。だけど、当時の復刻ということであれば、会社としても問題ないですし、何より『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞を受賞して、『ゴジラxコング 新たなる帝国』が公開されるタイミングに間に合わせることを優先しました。

高鳥 確かにこのタイミングを逃がす手はないですよね。

鈴木 ただ、『ゴジラxコング 新たなる帝国』は、どちらに転んでも企画としてはイケると思っていました。成功したら、『キングコング対ゴジラ』のサントラに注目が集まるし、上手くいかなかったら「なんだよ!」と思った人たちが昔に戻ってくれると。そういう目算があってGW前には、なんとか発表したいと進めていたところ、なんと、お客様問い合わせセンターを介して、わざわざ連絡してきてくださったんです。

高鳥 僕は置いてけぼりを食ったと思っていたんですけど(笑)、そうしたら僕とトヨタくん(聞き手)の共通の友人が「お客様問い合わせセンターに連絡したら?」と言ってくれて思い切って連絡してみることにしました。

鈴木 ギリギリのスケジュールだったけど、「探したいと思っていた人だ!」と。いや、これは嬉しかったですね。

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