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“不遇の名車”ことDMC-12デロリアンがキット化! 竹内陽亮氏がその洗練されたフォルムを活かして実車のように仕上げる!

2024.08.11

’82 デロリアン DMC-12【青島文化教材社 1/24】 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』によって再び脚光を浴びた不遇の名車、デロリアンことDMC-12がついに1/24スケールのカーモデルとして待望のキット化! これまでも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムマシンを改造し、このベース車を再現する試みに挑んだモデラーは少なくないが、これからは誰もがこの洗練されたフォルムを模型で楽しむことができるのだ! 今回はその魅力を竹内陽亮の作例でじっくり味わっていただきたい。

■デロリアン DMC-12

 デロリアンはゼネラルモーターズの元重役であったジョン・デロリアンが設立したデロリアン・モーター・カンパニー(DMC)が生産した唯一の乗用車である。デザインはイタルデザインのジョルジエット・ジウジアーロ。開発は当初ポルシェと進める予定であったが、英国と結んでいた工場誘致や補助金に関する契約の都合でロータスが担当した。会社設立から6年の時を経てデビューしたデロリアンは1981年の販売初年こそ好調な売れ行きを示したものの、翌年は大量の発注取り消しなどもあり売れ行きは不振。さらに追い打ちをかけるようにジョン・デロリアン自身の薬物スキャンダルも発覚(後に無罪判決)したことで会社の資金繰りは急速に悪化し倒産。デロリアンはわずか2年でその生産を終了したが、その2年後、1984年公開の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でタイムマシンのベース車として登場。本作のヒットにより再び注目を集めたデロリアンは、現在も多くのオーナーの手によって維持されている。

▲ガルウイングドアは先に発売されたタイムマシンと同じく、ダンパーパーツを取り付けることによって、ドアを開いた状態でも確実に固定することができる
▲︎メンテナンスフリーを目指して採用された無塗装のステンレスボディはデロリアン最大の特徴といえるだろう。作例では下地処理を徹底的に行ったうえにシルバーを塗装した後、2000番のペーパーで塗装面にヘアラインを再現した
▲キットはガルウイング式のドアとリアのルーバーが開閉可能。今回の作例ではエンジンカバーもヒンジを自作し開閉できるように加工したが、腕に覚えのある方はトランクも可動化してフルオープンを目指すのも良いだろう
▲︎リアルーバーの固定用サスペンションは金属線を使用した自作パーツに交換

▲︎簡易的ではあるものの、エンジンも再現されているのでコードやホースを追加してディテールアップを行った

▲︎エンジンカバーはスジ彫りに沿ってカットし、自作のヒンジを追加することで開閉可能に。これで完成後もエンジンを見ることができる
▲︎ドアを閉める際に使用するプルストラップをドアの内張に切り込みを入れて追加

▲︎当然のことながら、タイムマシンに比べてシンプルな車内。各部のディテールはキットのままだが、市販車らしくフロアマットも再現した

▲︎地味な部分ではあるが、今回の作例最大の注目ポイントといえるのが、車体下面。上の写真のようにキットではタイムマシンの未来的なディテールが残っているため、実車資料を参考にプラ材でそれらしくディテールを変更。よりオリジナルのスタイルにこだわりたい方は参考にしていただきたい

■デロリアン
「理想とする車を所有して乗ってみたいが、見渡す限りそんな車は存在しない。それなら理想の車を生産出来るメーカーを作ろう」。自動車メーカーの誕生には、そんな逸話が多くありますが、デロリアン DMC-12も、そんな経緯を経て誕生した車であり、多くのファンを獲得したという点では成功例のひとつと言えましょう。1980年代初頭にDMC(デロリアン・モーター・カンパニー)創業者のジョン・デロリアンによってEthicalCar(商業道徳に敵った車)を作ろうという発想のもとに生産されたスポーツカーで、約9000台が販売された様ですね。しかしながら、その存在が有名となったのは何といっても映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(以下BTF)でタイムマシンのベース車両として使われたことでしょう。当時としても前衛的なスタイルであり、ボディデザインはイタリアを代表する工業デザイナーのジョルジエット・ジウジアーロによるもの。未来的な印象を受けるガルウイングドアも、BTFのタイムマシンのイメージにぴったりでした。

■キットについて
 先にアオシマより発売されたタイムマシンのキットは、タイムマシン用のパーツがすべて分離された構成となっており、市販車タイプがキット化されることは一目瞭然でした。市販車タイプの今回のキットは、ボディおよびシャシーがタイムマシンと共通の物となっており、今回はタイムマシン仕様のシャシー下面を、市販車タイプのディテールに変更して製作します。また、細部を確認するための資料としてかつてKAMADOから発行された「デロリアン・バイヤーズガイド」を参考に製作を進めます。

■製作
 まずシャシー下面の改造から始めますが、ここは不要な部分を大幅にカットしつつも、ホイールアライメントは維持出来るように慎重に進めます。プラ板やプラ棒で再構築しながら、クリアランスにも気を付けて加工を施します。次に車体後半のエンジンルーム周辺ですが、上部のルーバーは開閉出来るのですが、その下のエンジンカバーは一体となっており開閉出来ません。ここはスジ彫りに沿って切り離すことで開閉可能となるように加工しました。また、ルーバーを支えるサスペンションは、自作の物に変更しています。そして、エンジンルームにはコード類を追加することで密度感を高めました。内装ではドアの引手とフロアマットを追加工作しました。なお、ガルウイングドアのヒンジは、内張パーツをはさみ込むカタチでロックされるのですが、ここはやや緩くなるように調整しておいたほうが完成後のドア周辺のチリが合いやすくなります。

■塗装
 実車のボディは無塗装のステンレス製で、ヘアラインフィニッシュとして仕上げてあります。一度だけ駐車場に置かれた実車を目にする機会がありましたが、その無機質な佇まいからは類を見ない独特の存在感を感じました。今回はその独自性を再現すべく、さまざまな塗装法を試しました。数種類のシルバー系塗料を試した結果、Mr.カラーSM206スーパークロームシルバー2を選択。適量の黒を加えて、やや色合いを調整して塗装するのですが、塗装面の反射性を上げるため、下地を鏡面仕上げとなるようにコンパウンドで磨き込んでから塗装します。そうすることで平滑度の高い塗装面となります。そして乾燥後に、2000番のスポンジペーパーでヘアライン処理を施して仕上げるのですが、この時、車体に沿って慎重に動かす必要があります。多少のムラは出来ますが、この作業はあまり深追いせずに留めておくほうがいいですね。

■DMC
 デロリアン一車種のみを生産販売した「デロリアン・モーター・カンパニー」ですが、現在は当時とは別の会社として、同じ名称で存在しています。ユーザーを支えるために各パーツを豊富にストックしてあり、今なおデロリアンの人気の高さが窺えます。そして同社では新型デロリアンの開発も進められているようで、期待が高まります。

青島文化教材社 1/24スケール プラスチックキット

’82 デロリアン DMC-12

製作・文/竹内陽亮

ザ・スーパーカー No.21 ’82 デロリアン DMC-12
●発売元/青島文化教材社●5720円、8月予定●1/24、約17.5cm●プラキット

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竹内陽亮(タケウチヨウスケ)

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