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カウツのプロトタイプ「クレア」を横山宏がウェーブ1/20フリーゲから新造!! カウツと並べてじっくり楽しむ【Ma.K. in SF3D】

2024.04.15

Ma.K. in SF3D/プロトタイプカウツ・クレア【ウェーブ 1/20】 月刊ホビージャパン2024年5月号(3月25日発売)

プロトタイプカウツ・クレア出撃!!

 ウェーブの新設計1/20フリーゲをベースに、原作者・横山宏が新たにスクラッチしたカウツのプロトタイプ“クレア”が登場!! 横山氏は試作機クレアとともにノーマルのカウツも製作。両者の比較や製作過途中の写真を紹介する。39年越しに誕生したカウツの試作型を堪能してほしい。
 また、せど氏がスクラッチした1/20エッグイーターやシュトラール装甲スーツのオリジナルモデルを解析した流用パーツによるボディシェルも掲載。盛りだくさんの内容でお届けしよう。

P.K.A.[Weltraum] Ausf F フリーゲ

●発売元/ウェーブ●4400円、発売中●1/20、約12cm●プラキット


シュトラール軍 宇宙用 装甲戦闘服K型試作機 クレア&シュトラール軍 宇宙用 装甲戦闘服K型 カウツ 製作/横山宏

▲カウツ(右)と試作機のクレア(左)を飛行態勢で展示。同じコンセプトの機体だが間接視認システム搭載ユニットの形状が異なる
▲フリーゲに間接視認ユニットと左右のレーダーバルジを急きょ取り付けた試作機らしいデザインになっている
▲頭頂部の四角いハッチはカウツよりも大きめ。「ここにコーションを貼ると十戒の石板みたいになりました」(横山)
▲︎赤の機体番号や部隊マークはハセガワ1/35グスタフやメルジーネの初回販売分(2011年)に入っている1/20用デカールを使った。番号の上に白いコーション、アンテナ兼スタビライザーに番号を貼るなど趣向を凝らしている
▲︎横山氏が屋外で撮影したクレア。荒々しいタッチで色を重ねた迷彩塗装は目のマーキングとも相まって野性味あふれる仕上がり
▲「顔が猪に見えるので猪マークのデカールを貼ったけど、こうやってみると牛にも見えるね」(横山)
▲激しいウェザリングを施した折れ線迷彩のカウツ。メインハッチとボディシェルの一体感が強く、ボディ全体が顔のように見える
▲ノズルはチタンのような色で塗装。銀のボールペンによるチッピングが効果的だ
▲︎カウツの間接視認ユニットは左右にふくらみがありフリーゲハッチとなめらかに繋がる
▲側面から比較すると、クレアの間接視認ユニットはやや上向きでフリーゲのパネルラインに合わせているため上下が短い
▲︎正面から見るとクレアのユニットの左右幅は狭いことがわかる。ユニットはカウツと比べてかなり小さく、腹部の大きいレーダーバルジが付いたままになっていることで絶妙なバランスを保っている
▲上部からの印象はそこまで変わらない。両者ともユニットからアンテナ兼スタビライザーにかけての流れるようなフォルムが魅力だ
▲メーカー不明とのことだが流用パーツ箱にあった1/25アメリカ車のシートを切って間接視認ユニットの製作を開始
▲切り取ったシートを接着。取り付けた角度やパーツの形状が全体のゲージになる
▲プラパイプを中央に接着し、左右には切り出したプラ板を貼って空間を埋めていく
▲下部はタミヤ1/48グロスター ミーティアの機首を切って接着。それぞれの隙間は瞬着パテで埋めている
▲ヤスリで全体を整えたところ。フリーゲのキャノピーがわずかに見える位置だ
▲上面のハッチはプラ板で製作。シャープペンシルでスジ彫りのアタリをつける
▲シーカー部はポンチで穴をあけたプラ板でできている
▲塗装は筆塗りとエアブラシを併用。筆塗りしたあとにエアブラシを吹いた
▲ウェーブ製フリーゲやカウツの原型を担当したせど氏と関西マシーネン会のスタッフで『Ma.K.』モデラーの若生貴大氏が編集部を来訪。フリーゲの形状について大いに盛り上がった

 今回は前回で予告したシン・カウツをたっぷりお見せしましょう。2体のうち1体はウェーブのカウツのキットを比較のために新造しました。そしてもう1体はウェーブのフリーゲから造形したものです。1985年当時に日東のフリーゲを改造してカウツのオリジナルモデルを作ったように、ウェーブの新しいフリーゲからカウツを作ってみることにしました。ウェーブのシュトラールスーツはグスタフ系から脊戸君に大きく設計してもらってます。当然カウツやフリーゲも日東のキットより大きくなっています。日東フリーゲはオリジナルとはフォルムがかなり違うけど、ウェーブのフリーゲは脊戸君がオリジナルに寄せて作ってくれました。そして今回はウェーブのフリーゲを基に改めてシン・カウツを作ってみることにしましょう。
 急造されたカウツ完成前の試作機ということでKから始まるKRÄHEという名前にしました。カラスのドイツ語で「クレア」という発音になります。今思うといっそのこと日本語でKARASUでも良かったかなとも思ったりしてます(笑)。
 ふだん完成見本はウェーブさんが素組みしたものを塗装していますが、今回のフリーゲ改造やカウツはキットを一から作って完成させています。見本用に未接着で受け取っていた肩アーマーは結構外れやすいと思っていたのですが、肩アーマーを留めるリング状パーツを塗装前に接着しておくと肩アーマーが外れなくなることに気づきました(いまさらですが!)。ただし慎重に仮組みをして速乾性の接着剤をほんの少量流し込んでギュッと押し込むって感じで取り付けてください。
 40年前のオリジナルのカウツはタミヤ/20マクラーレンM23のバケットシートやカウルを組み合わせてデコッパチハッチの部分を作りました。今回はこれと同じ文脈で再現してみたかったのでやはり1/25のアメリカ車のシートを使ってみました。しかし今回はそれをフリーゲのハッチ上部に接着しちゃいました。そこにプラパイプやプラ板で大まかにカタチを出していきタミヤ1/48グロスター ミーティアの機首の丸い部分を切り取ってアゴのところに使います。このやり方はパーツやプラ材自体がゲージになるのでパテでカタチを出すより楽なんですよ。まるでキングジョーのようなレーダーバルジはカウツに欠かせないのでカウツのキットからそのまま持ってきて接着します。フリーゲのお腹のレーダーバルジはそのままなのが試作機っぽくていいでしょ。
『SF3D』連載中は時間と工夫がなくフリーゲやカウツは単色塗装でしたね。熟練モデラーになった今日、新たな迷彩パターンで塗装してみましょう。しかし冬に塗装すると静電気でホコリが付きまくるので表面をきれいにクリーニングしておこうね。グレーなど低明度色をバシャバシャ薄めて塗って付着した毛などを取っておくと、静電気でホコリが付きにくくなるよ。それでも付着したホコリや削りカスは乾燥後に丸刃でそっと削り取りましょう。またポリパーツの下地にはガイアノーツのマルチプライマーを塗ると塗料の食いつきがメチャ良くなります。
 クレアは迷彩を筆塗りしたあと、境界にエアブラシを吹いています。無改造のカウツは折れ線迷彩のパターンを筆塗りしたあとに空き箱などの紙で型紙を作ってそれを当ててエアブラシを吹きました。最初から型紙に沿ってエアブラシを吹くと自然な感じが出ないんですよね。模型を塗る時はキャンバスやイラストボードに向かう距離感で塗っているんだけど、キャンバスにはマスキングテープを貼らないでしょ。『謎の円盤UFO』のようなシャドーイング、よく言う「サンダーバード塗り」を今回はパネルラインに合わせるんじゃなくて迷彩に合わせてやりました。こうすると塗装に曖昧さが出しやすいんです。エアブラシで塗る時は筆で塗った時よりも黒を少し入れて明度を下げます。ウェザリングカラーで暗い色を塗るのと同じ感じで全体が締まって見えるし、さらにウェザリングカラーを使うことで重厚感が出る。最後に銀のボールペンでチッピングをすると精密感が出ますよ。塗装は乱暴でいて雑ではない荒々しさを残す勇気が必要です。筆跡を残す勇気は画家にとって重宝される才能なのかもしれません。
 頼まれもしないのに改めてフリーゲからカウツを作ったけど、新兵器を作るより今ある生産ラインを使ってバージョンアップしていくやり方が戦いには必要です。今あるものをちょっとだけ変えてかっこいいものを作るのは至上の喜びがありますね。みんなもフリーゲからカウツみたいな新メカを作ってみるといいですよ。

前回の記事はこちら

ウェーブ 1/20スケール プラスチックキット フリーゲ改造

シュトラール軍 宇宙用 装甲戦闘服K型試作機 クレア

製作・文/横山宏

ウェーブ 1/20スケール プラスチックキット

シュトラール軍 宇宙用 装甲戦闘服K型 カウツ

製作・文/横山宏


せど氏の1/20エッグイーターを公開!!

シュトラール宇宙もの特集ということでせど氏が持参した大型モデルを紹介!

▲サイトウヒール氏が途中まで作っていたスクラッチ作品をせど氏が引き継いで完成させた
▲カウツのメインハッチを持つエッグイーター。同スケールの1/20クレアと並べるとその巨大さがわかる。2022年11月の“タマミー#11”出展作

せど氏によるオリジナルモデル形状検証用ボディ

オリジナルモデルを研究し同じように作ったシュトラールスーツのボディを公開!!

▲左からP.K.A.、グスタフ、フリーゲの検証用ボディ。右端のフリーゲはオリジナルモデルに合わせて日東キットのボディとハッチの幅を詰めたもの。P.K.A.系スーツは陸戦用、宇宙用ともにすべてハセガワ1/48ディフェンダーが芯になっていたことがわかる
▲「ガバメントタイプは3次元的でいいカタチだから使ったのを思い出しました。ぶっちゃん(出渕裕氏の愛称)のデザインなんだよね」(横山宏)
▲︎この宇宙用P.K.A.のイラストは横山氏がディフェンダーにガバメントタイプのボディを付ける前の状態をイメージして描いていたことが判明!

 せど氏はキットの原型を作る前にオリジナルモデルと同じ流用パーツを使ってP.K.A.系スーツの形状検証用ボディを製作していた。
「2000年頃、誰から聞いたか覚えていないんだけど、マシーネンモデラーからフリーゲはハセガワ1/48ディフェンダーに1/144ガバメントタイプのボディを付けてるって聞いたことがあるんですよ。それでフリーゲの原型を作るにあたって検証用ボディをその通りに作ってみたらビンゴでしたね」(せど)


[Ma.K.in SF3D]EXPLANATIONS Vol.124

シュトラール軍宇宙用スーツの模型的改造過程

文/KATOOO(レインボウエッグ)

 シュトラール軍の宇宙用装甲スーツ・カウツはフリーゲの改良発展型ですが、立体ではどのように改造されていったかを検証したいと思います。
 月刊ホビージャパン2024年5月号にせどさんが作った検証用モデルが掲載され、1983年に作られたフリーゲのオリジナルモデルのボディはハセガワ1/48ディフェンダーとバンダイ1/144ガバメントタイプを組み合わせていることが判明しました。日東科学で火災が発生しキット化のために預かっていたフリーゲのオリジナルモデルが焼失してしまい現物と並べて比較することはできませんが、日東のフリーゲはオリジナルを忠実に再現したものではなく、ボディの幅が広くなっているなど日東アレンジが入った形状になっていました。
 フリーゲの新型を登場させるにあたり、横山先生は1985年に発売された日東のフリーゲのキットをベースにして間接視認ユニットを装備した発展改良型のカウツを発表。フリーゲのメインハッチにタミヤ1/20マクラーレンM23のシートとカウル後端を接着しパテでフォルムを再構築しています。この間接視認ユニットはフリーゲ腹部の大きいレーダーバルジが付けられないほど大きなものとなりました。開閉ギミックをオミットしメインハッチがパカッと開くパネルラインをフリーゲよりも下方にスジ彫りで表現したため、カウツのメインハッチのパネルラインはフリーゲのラインとは異なるものになり、両者のボディは共通パーツではなくなりました。
 今回、横山先生が新たに作ったクレアはフリーゲのメインハッチのパネルラインに準拠して間接視認ユニットを新造しているため、出っ張っている部分がカウツよりコンパクトなものに。フリーゲのパネルラインを生かしたことでカウツと異なるフォルムの試作機となったのが実に興味深いところです。


『ZOIDS』40周年記念本発売

『ZOIDS』の40周年記念本が発売。600点以上のアイテムを網羅し、横山氏がデザインしたゴーレムなどの24ゾイドシリーズやデザイン画も収録される。

40周年記念 ゾイド大図鑑

●発行元/ホビージャパン●4950円、3月27日予定●A4判

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関西マシーネン会が復活!! 2024年6月30日(日)に大阪ATCで開催

 関西地区の『Ma.K.』模型展示会「関西マシーネン会」が復活!! 2019年以来5年ぶりで、2024年6月30日(日)に大阪南港ATCで開催。24年4月以降に詳細が発表される。

▲コロナ禍前に開催された前回(2019年)の写真。5年ぶりとなる関西マシーネン会に横山宏、MAX渡辺の両氏も参加予定だ

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横山宏/KATOOO(レインボウエッグ)/せど

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