MG ナラティブガンダム C装備 Ver.Ka 開発/設計担当インタビュー! サイコフレームの表現や3Dメタリックシール採用などのこだわりを語る
2024.04.13ドキュメンタリー“ナラティブガンダム C装備 Ver.Ka”【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2024年5月号(3月25日発売)
最終回では、カトキ氏とともに今回の開発に携わったBANDAI SPIRITS ホビーディビジョンの稲吉太郎氏と小林大介氏にインタビュー。撮り下ろしたテストショットとともにキットのポイントを紹介していこう!
※画像は開発中の試作品です。
作品への没入感
INTERVIEW:
稲吉太郎(開発担当/写真左)
小林大介(設計担当/写真右)
BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン
■サイコフレーム搭載機
プラキットだからこそ実現できた仕様
──MG Ver.Kaでナラティブガンダム C装備を発売することになった経緯を教えてください。
稲吉 MG Ver.Kaは昨年20周年記念アイテムとしてゼータガンダムを発売しました。こちらはゼータガンダムという立体物としても変形機構搭載キットとしても最高峰のものができたとホビーディビジョンでは自負しております。次のアイテムを模索するなかで、やはりVer.Kaとしては宇宙世紀を推し進めるべきかと思い、カトキさんといえば2007年の「ユニコーンガンダム」、そして2012年の「νガンダム」といったサイコフレームに連なる機体がありますので、それらを紡ぐカトキさんデザインの「ナラティブガンダム」に白羽の矢が立った、という流れです。
──劇中設定ではナラティブガンダム C装備のサイコフレームはルオ商会が独自に集めたものを急造加工で取り付けたものなので、ユニコーンガンダムのサイコフレームとは関連がないように思えますが、プロダクツとしてMGユニコーンガンダムVer.Kaとサイコフレームを共有する案はどのような流れで生まれたのでしょうか?
稲吉 カトキさんとの打ち合わせのなかで共有いただいた、そもそものナラティブガンダムのデザイン論から生まれた仕様でもあります。カトキさんの中では、ナラティブガンダムを設定するときにユニコーンガンダムのサイコフレームを当てはめるという設定があったようです。さらには立体物を出すときにそれを盛り込めるようにしたいという思いからナラティブガンダムの設定を起こされたという経緯がありました。過去の立体物(HGUC)ではその仕様は盛り込めていないのですが、ホビーディビジョンとしてはその経験があり、なおかつVer.Kaというカトキさんご自身が手掛けているブランドのプラキットだからこそ実現できた仕様です。
苦心したユニコーンガンダムVer.Kaとの連動
──2007年のキットのパーツを2024年のキットに組み込むのはかなり難題だったのではないでしょうか?
稲吉 まさにここが一番苦労したところです。素体にサイコフレームを組み付けていくという仕様は、カトキさんとしての思いも強く、劇中とリンクする没入感を持たせるという大枠のコンセプトがありました。その中で大きな課題となったのは、ホビーディビジョンの大きな遺産であるMGユニコーンガンダムVer.Kaとどのように連動させるか、そのために各部装甲をどのように展開させるか、の2点です。
──MGユニコーンガンダムVer.Kaのサイコフレームを使用するということと、素体からC装備への換装を同時に構築していったということですね。
小林 HGナラティブガンダム開発時にも設計に携わらせていただいたのですが、そのときにカトキさんからMGユニコーンガンダムのサイコフレームを使用して、このパーツがナラティブガンダムのこの箇所に付くというコンセプトを教えていただきました。HGナラティブガンダムはA装備から発売していますので、まずは素体から設計し、その後C装備に着手しています。そのときに素体を使ってMGサイズから縮小して出力したユニコーンガンダムのサイコフレームを付けてみようとしたらなかなか大変そうなことが分かり…。HGナラティブガンダムのサイコフレームはHGユニコーンガンダムのものをベースとしつつも、HGとしてのかっこよさを重視してある程度調整しています。という前日談があり、MG Ver.Kaでナラティブガンダムをやりましょうとなったときに、カトキさんからサイコフレームを共用する仕様はぜひ盛り込みたいというお話をいただきましたが、当時のことを思い出し、ちょっとドキドキしました。同じ全高ではあるものの、両機のサイコフレームの取り付け場所や方法はかなり異なります。例えば胸部パーツが外側に露出していたり、別の部位に取り付けるという箇所もあります。それが立体物としての面白さでもあるのですが、商品的な連動を成立させるためには、ユニコーンガンダムに取り付けるための形状を、ナラティブガンダム都合でオミットすることができません。また、大きく外観を変えられないという問題もあります。今回のMGナラティブガンダムVer.Kaにサイコフレームを当てはめてみると、腰部フロントアーマーは少しはみ出てしまったりもしたのですが、それについてはカトキさんから、それがディテールになるからむしろはみ出していい、というお言葉をいただきまして、考え方を切り替えさせていただきました。
サイコフレームを造形面でアップデート
──NT-D発動時の発光状態を再現したピンクのサイコフレームは形状が修正されています。これはどのような理由からでしょうか?
稲吉 今回のテーマのひとつとして、サイコフレームへの挑戦というものがありました。ホビーディビジョンではこれまでさまざまなサイコフレームの表現にチャレンジしてきました。まずは最初のMGユニコーンガンダムVer.Kaではユニコーンモードからデストロイモードへの「変身」。続いてνガンダム Ver.Kaでは装甲内に搭載されたサイコフレームを露出させる「発動モード」。Ver.Kaではないですが、PGでは可動の追求と「発光」の両立。RGでは1/144スケールでの「変身」。MGEXでは極限の発光表現による「色調変化」。それらを踏まえて今回の新たなサイコフレーム表現としては、改めて資材面や造形面でのアップデートという案が上がりました。それに際してカトキさんからは、ウィスキーグラスのような質感や江戸切子といった伝統工芸のような情報量の増加をさせたいというお話をいただきました。そちらをヒントに発光状態のサイコフレームはすべて新造パーツで再現しています。
小林 形状自体はMGユニコーンガンダムVer.Kaのサイコフレームのアップデートなので、大きく変えないことが前提になります。この変えないというのがむしろ難しかったのですが、サイコフレームから透けて見える裏側の表現をカトキさんがかなり意識してくださいました。そのおかげもあり、MGナラティブガンダムVer.Kaとしてのサイコフレーム表現ができ上がり、さらにこのサイコフレームはMGユニコーンガンダムVer.Kaに取り付けることも可能になっていますので、ユニコーンガンダムのアップデートにもつながるという相乗効果を生み出しています。
──非発光状態のグレーのサイコフレームを付属させた理由はどのような理由からでしょうか?
小林 グレーのサイコフレームはMGユニコーンガンダムVer.Kaの成型色替えですが、これもカトキさんの狙いで、今まで商品として存在していなかったサイコフレームの非発光状態を再現できるものとなります。
稲吉 これはナラティブガンダムのサイコフレーム非発光状態を再現するものなのですが、サイコフレームの共用がここでも活きてきて、MGユニコーンガンダムVer.Kaにこのグレーのサイコフレームを取り付けることで、劇中で数秒しか出てこないサイコフレーム非発光状態のユニコーンガンダムも再現できます。
小林 ナラティブガンダム単体でも素体、C装備(サイコフレーム非発光)、C装備(サイコフレーム発光)という、劇中の登場順に合わせた遊びができますが、ユニコーンガンダムと連動させることで、MGユニコーンガンダムVer.Kaをアップデート&サイコフレーム非発光状態を再現できるようになります。
■3Dメタリックシール
■サイコフレームの表現
■太モモ部の隙間を隠す工夫
コア・ファイターの主翼は本体に巻き付くような変形
──特徴的な形状を持つコア・ファイターは、劇中でも象徴的に扱われている「鳥」のイメージが盛り込まれています。こちらのこだわりポイントを教えてください。
稲吉 ナラティブガンダムのコア・ファイターは翼が長い、カトキさんのお言葉をお借りするとアスペクト比が長い、本当に鳥をイメージした形状になっています。そういったシルエットをしっかり再現しつつ、コア・ブロック形態で胴体に収納する必要があります。また、他の部分がしっかり可動するのに腹部周りだけ可動しないというのも違和感がありますので、特徴的なフォルムを再現しつつ、コア・ブロックを収めるスペースを確保して、なおかつしっかり可動させることが課題でした。
小林 これまでのコア・ファイターの翼は単純な開く閉じるという構造が多かったと思いますが、ナラティブガンダムでは複雑に折り畳みながら胴体に巻き付く構造になっています。この構造の再現が非常に難しく、コア・ブロック形態での腹部の細さを維持しつつ、コア・ファイター形態では翼を最大サイズにできるように設計しています。パーツが180度回転したり、各所折れ曲がりながら胴体に巻き付くので、カトキさんと相談させていただいて、極力安定するように、要所要所にロック機構を設けています。コア・ブロック⇔コア・ファイターの変形プロセスについてはカトキさんが細かく設定画を描いてくださっているので、これらを参考に翼の可動機構を相談させていただきました。例えばコア・ブロック形態で主翼先端パーツを所定の位置にするためにはどこにどういった可動機構が必要かということなどは、カトキさんが早い段階でキット用の概念図を起こしてくださったので、非常に助かりました。劇中でも格納庫でコア・ブロックが背面から見えるシーンがありますので、そこと違和感がないように最少サイズでできる限りの可動を盛り込んでいます。
■〈鳥〉モチーフの盛り込み
■コア・ブロック時の翼の折り畳み
──最後に本アイテムを心待ちにしているファンの皆さんに一言お願いします。
稲吉 ユニコーンガンダムから始まるサイコフレームの伝統と、2024年の今だからできる革新的な機構の融合。これはカトキさんが手掛けるMG Ver.Kaブランドのナラティブガンダムというアイテムだからこそできたことだと考えています。じっくり組み立てて堪能していただけたら嬉しいです。
小林 これまで積み重ねてきたガンプラの系譜を連綿と伝えていきたいという思いがあります。また、こういった連動遊びを通じてユーザーの皆さんが組み立てるだけではなく、組み立てたあとも楽しんでいただけるような仕掛けをたくさん入れさせていただきましたので、そのあたりもぜひ楽しんでいただきたいです。
──本日はありがとうございました。
(2024年2月、BANDAI SPIRITSにて収録)
MG ナラティブガンダム C装備 Ver.Ka
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●7700円、4月予定●1/100、約20cm●プラキット
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