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『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』スペシャルインタビュー!監督・福田己津央が映画の裏話を語る!!

2024.03.15

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 監督 福田己津央インタビュー 月刊ホビージャパン2024年4月号(2月24日発売)

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 監督

福田己津央
スペシャルインタビュー

監督・福田己津央

 TVシリーズ放送開始から約20年、待望の公開となった『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。本作は『ガンダムSEED DESTINY』に続くストーリーということで、新たな設定が盛り込まれている。これらの設定がどのように構築されていったのか、また福田監督が本作で表現したかったことはどのようなことなのかをお聞きした。

聞き手/桑木貴章

福田己津央(フクダミツオ)

 日本サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)にて『無敵ロボ トライダーG7』や『超力ロボ ガラット』などで設定制作を担当。独立後に『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』で監督デビューを果たし、『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』においても監督を務める。


■『ガンダムSEED FREEDOM』におけるコズミック・イラ

――今回、キラたちが所属する新組織「コンパス」が登場します。どのような経緯で設定されたのでしょうか?

福田:『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の最後の戦いで、地球連合軍はボロボロ、ザフトはそんな戦力がない。正直、もう敵がいないんですよ。戦える勢力がいない。戦力があるのはオーブだけでも困るし、そもそも中立だから他国の争いには介入できない。ただ、紛争はあって、でも鎮圧部隊がもういないと思ったので、国連軍の平和維持活動部隊みたいな形で考えてみようかなと思いました。

――組織自体はどのように成立したのでしょうか?

福田:カガリですね。そうでなければキラはやらないです。キラは絶対に自分からやるとは言わないでしょう。また、キラがやらない限り、ラクスも総裁の職を引き受けないです。なので、前提としてカガリ主導は必須になってきますね。いずれにしても今のところ、現状である程度の力があって、それなりに指導者が継続しているのはオーブくらい。逆にオーブ=カガリでも発言権がある。カガリが言いたいことを言えるくらいに、世の中が弱体化しています。

――一方で「ブルーコスモス」は残存勢力が反コーディネーター活動を続けていますが、どのくらいの勢力なのでしょうか?

福田:本作におけるブルーコスモスの状況は、残存勢力がまだ一定箇所に残っているみたいな感じです。世界中にあるんじゃないですか? いまだにコーディネイターへの差別心はなくなってはいない。軍事力、武力を持ったりしない宗教を見ればわかると思います。まず、金集め。次にいわゆる政治的な影響力、最後は武力を手に入れる。今のところは弱体化して、武力はもう限られたところしか持っていない状況になっていますが、支援する人たちはたくさんいると思いますよ。現状は経済力や軍事力はほとんど残っていない状況です。戦争なんてお金を食うだけですよね。そんな武器、弾薬にお金突っ込んでいたら破産するよ。

――新国家「ファウンデーション王国」についてはいかがでしょうか?

福田:ユーラシア連邦から各地域が独立していることは『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』でも言っていますが、いわゆる地球側の勢力を削ぐために結構戦力が持っていかれている。大西洋連邦は『機動戦士ガンダムSEED』の時点でかなり疲弊していて、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』ではユーラシアが弱体化させられている。そのなかの一環として独立するなら、ザフトはどんどん応援しますよ、と。なので、その頃からファウンデーションは活動を続けていました。

――すでに火種はあったんですね。

福田:紛争はずっとあるという前提なので、「独立したい」よりは、そもそも大国の思惑のままに「戦争しなさい」となったら、兵隊を出し、税金も持っていかれるわけじゃないですか? 小さい集団は貧しくなっていくので、どうしても反抗は起きると思います。なので、ファウンデーションはいち早くデュランダル指導のデスティニープランを実行し、V字回復しています。

――そもそもザフトから支援のあった組織なのでしょうか?

福田:技術供与が行われていましたが、ファウンデーションの軍事力自体はそんなに強くないです。いろんなものを中古で買っている感じですね。

――現状、地球のエネルギー問題はどうなっているのでしょうか?

福田:本作のスタート時点において、地上ではニュートロンジャマーキャンセラーのプラント、発電施設が世界中に建造されています。いわゆる核燃料が使える状態です。劇中で核爆発ができちゃったのはそれが理由です。このあたりの設定は説明していないのですが、劇中のニュース映像で少しだけ触れています。ただ、オーブでは核エネルギーは使っていません。オーブには他のエネルギー資源がありますからね。

■やり残したことと挑戦

――本作について発言されていた「TVシリーズでやり残した部分」と「新たな挑戦」についてお聞かせください。

福田:やり残した部分は、基本的にはキャラクターで描けなかった部分や、ちょっと描写が足りてなかった部分ですね。挑戦に関しては、主に作品としての表現。今回は上手くいってるのかな? その辺はわからないですね。

――描写が足りなかったと思われたのは、どのキャラクターですか?

福田:全員ですね。やりたいことを描くのがドラマなので、そういう意味ではひと通りまだまだやり足りない部分もありますね。それぞれのキャラクターがドラマにおいて選択、行動をしています。足りていない……むしろ彼らの魅力がまだ表現しきれていないのかな、と。これは毎回やればやったぶんだけ新たな表現の可能性が生まれていく。実際に出てきますね。

――キラを中心にストーリーが展開しているのは、キラもやり足りないところがあったからでしょうか?

福田:正直言ってしまうと、「映画を支えられるだけのキャラクターは誰?」となると、キラしかいない。

――シンについてはTVシリーズから比べると、だいぶ落ち着いた印象があります。

福田:本来、想定していたのは今回の性格なんですよ。『SEED DESTINY』のシンは行き過ぎというか、ひねくれすぎ。キラは悩みがちで沈みがちなタイプですが、シンは意外とカラッと落ち込んでカラッと持ち上がるタイプで考えていて。怒る時のエッジの立ち方もあるけど、可愛いところは可愛げのあるキャラクターで考えていたのですが、TVシリーズでは上手くいかなかった。それは『SEED DESTINY』の心残りでしたが、今回はそのあたりを少し補正できたかなと思います。ルナマリアとの関係性はまだ描き足りないところはあったけど、それはいいかなと。

――アスランはかなり成熟したイメージがあります。

福田:相変わらずトンチキなこともしています。ただ、アスランは悩ませようがないんですよ。ただちょっと嫌だなと思っていたのは、いつもキラが正しくてアスランが間違っているみたいな流れがあって。今回は逆の立場、たまにはアスランが正しくて、キラが間違っている展開もやってもいいかな……と思ったのですが、考えてみるとヤツは何かが間違っている(笑)。正しいことを言ってるんだけど、なんか違うなと思った。ただでさえかっこよく描かれすぎちゃう可能性があるので、ラストのほうで“ミソ”をつけるのに苦労しました。少しスケベだとかね。

――このあたりの「何か間違っている」とかは父親であるパトリック・ザラの影響もあるのでしょうか?

福田:それもあるかもしれないですけど、一番はやっぱりあれじゃないですか? 「アスラン、キラをそんな好きだっけ?」と思ってしまう。アスランはそんなキラ大好きじゃありませんから。大好きじゃなくて放っておけないんですよ。

――カガリも指導者として成長している印象でした。

福田:カガリはトーヤとの関係や存在が謎と言われていますが、「あれは謎でいいよ」と思っています。ただ、カガリとしては数年以内にオーブ代表の座を降りて、アスランのところに行くつもりだと思っていて、今のうちから後継者としてトーヤを仕込んでいます。

――新キャラクター、オルフェ・ラム・タオたちブラックナイトスコードについてお聞かせください。

福田:とりあえずこの子たち全員が挫折を知らないエリートです。そして、自分たちのあらゆる価値観に対して疑問を持ってない。この2点は絶対必要かなと思います。

――これは遺伝子によるものでしょうか? それとも後天的な教育によるものですか?

福田:教育的な部分も大きいと思いますけど、彼らは実際に何でもできるからタチが悪い。もちろん彼ら同士でも対抗心とかライバル心みたいなのがあるんでしょうけど。

――ファウンデーション側も、まだまだ深掘りできそうなキャラクターたちですよね。

福田:映画でやればあんな感じですよ。ただ、そのあたりはあまり描く必要もないと思っています。

――監督は音声収録にだいぶこだわりがあるとお聞きしています。

福田:アフレコは重要ですよね。ほんのちょっとのイントネーションの違いが効いてくる。ただ演じる、感情の抑揚をつけてセリフを読めばいいわけではないんです。

――キャラクターの設定、バックボーンも踏まえて演じてほしいということでしょうか?

福田:やっぱりね。そこが上手いのが関 俊彦さん。あと関 智一さんも。彼らは上手いですね。三石琴乃さん、桑島法子さんも上手いです。やはり上手い人は毎回お願いしますよね。

監督・福田己津央インタビュー2

■ズゴックの登場

――今回、映画ではサプライズな展開も多かったですよね?

福田:驚く要素が映画にはいっぱい入れられると思うんですけど、そのあたりはやっぱりちょっと驚いてほしかった。そういう意味では盛り上がるのは公開直前がよくて、公開後のネタバレはもうこれはしょうがないですね。人の口に戸は立てられないですから。“出オチ”はズゴックくらいですよね。

――ズゴック登場はどのように決まったのでしょうか?

福田:あれは「ガンダムビルド」シリーズの都合ですね。「ガンダムビルド」シリーズ以前から本作の企画は動いていて、最初はアッガイの予定でした。ただ、すでに使われてしまったので、アッガイはなしになり、じゃあ…と。実は最初に大河原邦男さんにメカデザインを発注したとき、完全にジャスティスのアーマーとして描かれていて。「もうズゴックそのもので!」、と改めてデザインをお願いしました。

――ズゴックといえば、今回の追加装備キャバリアーは、かつて監督が演出として参加していた『機甲戦記ドラグナー』のサブメカがモチーフですよね。

福田:そうですね。『機甲戦記ドラグナー』については思い入れがあるというより、忘れ去ってはいけないような感じがしますね。実は今回、『機甲戦記ドラグナー』最終回と同じカット割りでデストロイガンダムを倒しています。

■『ガンダムSEED FREEDOM』公開

――TVシリーズ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』から約20年経過しました。その間、社会状況も大きく変わり、世界では新たな紛争も起こっていますが、作品を作るうえでの影響はいかがですか?

福田:シナリオでは、その時の自分の心境で変わる部分もあるし、絵コンテは絵コンテで変わる部分があるので、こればっかりは実際に向き合ってみないとわからない。ただ、世の中がキナ臭くなればなるほど、やりたくない気分になりますね。

――その理由をお聞きしても?

福田:身近に紛争が起こることで、どうしても現実と比べられてしまうので。言ってもこちらは漫画、フィクションですから。こちらとしては現実の社会情勢などは意図してはいない。あまりにも状況が悲惨な場合は、こちらではどうにもならないですからね。そういう意味ではあまり現実に左右されないようにしたいんです。ただ、現実があると、そう言ってくる人も多いので。できれば平和な世の中で作品を観てほしい、というのが正直なところですね。

――公開後、すでに多くのファンが鑑賞していますが、監督としての見どころはいかがですか?

福田:観方は人それぞれかな、ある意味ね。メリハリはつけようと思っていましたが、後から考えてみると、どこがメリで、どこがハリなのか分からなくなってるなと思って(笑)。ただ、映画が2時間あるとしたら、30分くらいずつに分けて起承転結で観てもらえればいいですね。音楽は佐橋俊彦さんが気合い入れて曲数を作ってくれて、劇中鳴りっぱなしなくらいなので、聴き応えはあると思います。あと、やはり西川貴教さん、See-Sawの曲はすごくいいですよ。「2000年代が古い」なんて声もありますけど、いや2000年代でも充分いける気がしています。今、漫画すら読まない、映像は倍速で観るなんてことも聞きますが、
言ってしまうとそれは面白くないからなんですよ。その受け手の理屈があるとしたら、その理屈を壊すくらいのパワーが欲しいなって思います。まあ、ファンが喜んでくれたらいいですね。

――本日はありがとうございました。

(2024年1月、バンダイナムコフィルムワークスにて収録)


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