『伝説巨神イデオン』アオシマ1/600「ギラン・ドウ」を2セット投入で各種ポーズを再現可能に製作!【サンライズ・メカニック列伝】
2024.01.22サンライズ・メカニック列伝 第60回 ギラン・ドウ【アオシマ 1/600】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2024年2月号(12月25日発売)
ギラン・ドウ(『伝説巨神イデオン』より)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『伝説巨神イデオン』から、バッフ・クラン宇宙軍制式重機動メカ「ギラン・ドウ」の1/600作例をお送りしよう!
亜空間戦闘(DSファイト)用としてドグ・マックをベースに開発された重機動メカがギラン・ドウである。ジグ・マック出現以前は大気圏内を除く空間戦闘用としてはバッフ・クラン最強のメカであった。亜空間戦闘に秀でたイデ探索隊隊長アバデデ・グリマデの指揮の下、第7話ではギジェ・ザラルが、第9話ではダミド・ペッチがメインパイロットとして搭乗し、イデオンに肉薄。圧倒的な戦闘能力でソロシップを絶体絶命の苦境に追い込んでいる。
作例は田仲正樹が私物を2セット投入して製作。キットの部品形状を最大限に活かし、強度を重視して可動部を固定した、頭部、胴体、腕部、脚部を各2体分用意。これらを組み替えることで、飛行姿勢をはじめとした各種ポーズの再現が可能な作例として完成させている。
[製作途中状態]
1/600ギラン・ドウは「アニメスケール」版キットを上回る形状の再現度と可動域を有し、腕部や腰の曲がり具合を選択式にすることで印象的な亜空間でのポーズも再現可能。現在でも高い評価を得ている秀作だが、設定に忠実なためにどうしても細かい部分が多くなり、それだけ破損もしやすい。ゆえに小さすぎる関節を無理に可動化すれば形状や強度が犠牲になると判断し、作例は関節をほぼ固定した腕部と脚部、そして頭部と胴体を各2セット用意して、組み替えることで直立姿勢と亜空間飛行姿勢を再現する仕様とした。製作中や完成後の破損とそれに伴うストレスを避けるための、もっとも現実的かつ健康的な製作法と言えるだろう
[頭部]
基本形状はキットのまま。正面加粒子砲の砲口はくりぬいて、レンズ状パーツから削り出した透明部品をはめ込んだ。側面の亜空間用加粒子ランチャーには4mm径のレンズ状パーツを接着。ホーミング・ミサイル発射口の内壁は合わせ目を消し難いため、削り取ってプラ板に置き換えた。スピード・ダウン・ストッパー(4本のアンテナ状パーツ)は薄く加工。胴体は30MINUTES MISSIONアルトの脚部ボールジョイントで、腕部は100円ショップのブロック玩具のボールジョイントで、それぞれ接続している。また第9話劇中で確認できる、正面加粒子砲上部のディテールが微妙に異なる頭部も製作。「修理中の重機動メカを出撃させてしまうハルルとは違い、アバデデは頭部外装を丸ごと交換してしっかり修理した機体にダミドを乗せた、と解釈しています」とのこと
[胴体]
脚の基部が上下に短いため、市販のバーニアパーツを加工したもので大型化。脚部とは市販のボールジョイントで接続した。進路変更用サブノズルは噴射口のフチを薄く削りシャープ化。直進用ノズル内部には3mm径のポリキャップを入れ、ベースを接続できるようにした。ベースはキットのものに錘を詰め、ネクスエッジスタイルシリーズの支柱を取り付けた
[腕部]
形状はほぼキットのままに、ヒケを処理しモールドを彫り直したものを2組製作。細く折れそうな部分はあらかじめ0.8mm径の真鍮線を入れて補強している。先端の高速ミサイルランチャーはネオジム磁石で展開状態との差し替えが可能。「開いたツメを設定の形状に作り直すと非常にもろくなるため、力がかかると壊れる前に外れるように調整しています」とのこと
[脚部]
破損防止のため可動部をすべて固定したものを、直立姿勢用と飛行姿勢用の2組、計6本製作。一番上の関節側面の円筒は削り落とし、市販の丸モールドパーツを接着しシャープ化。ヒザ関節裏のパイプは0.6mm径のリード線に交換。飛行姿勢のつま先にはエポパテを盛って設定画に近い形状に変更している
■アス担当です
「アバデデ隊長が得意とする作戦〈アス、デル、トプの3段攻撃〉とは〈1、2、3の3段攻撃〉という意味か…。〈3段攻撃〉だけでいいんじゃないのかな…」と43年間思い続けているサンライズメカファンのみなさんは、「クラゲみたいで面白い」だけではないギラン・ドウの真の魅力をご存知のはず。ガタマン・ザンやドロワ・ザンから発進したギラン・ドウが艦内では折り畳んでいた脚部を展開する様子や、腰のサブノズルの角度を変えて方向転換をする描写には「これぞリアルロボット」と唸らされますし、ギジェ機が格闘には向いていなさそうなのに左腕(利き手)でイデオンに殴りかかり、さらに母艦を守るために右腕をあえて犠牲にし、その状態で零距離射撃をしてくるのを見ると「強い…!これは逃げるしかない」と納得させられます。劇場版には登場しませんが、視聴者の印象に残る名脇役メカだと思います。
1982年発売の1/600ギラン・ドウは前年に発売された「アニメスケール」版(1/550)よりもさらに設定に近い形状となり、脚部の可動箇所が増え、腕部や腰(頭部と胴体のジョイント)を選択式にすることで劇中のイメージを再現しやすくなった秀作キットです。ただ、設定に忠実すぎて「ここは細すぎて壊れそうだな」「この可動部はすぐにゆるみそうだな」という箇所が多く、これらをどうするかが製作における最大の課題でした。「腕にワイヤーを通してベンダブル化」「脚部の可動軸をポリランナーに交換」というのも考えましたが、形状が設定から離れ、関節がさらに壊れやすくなってしまうことが予想できるため、作例は関節をほぼ固定した腕部・脚部・胴体をそれぞれふたつずつ製作し、差し替えて各種ポーズを再現する仕様としました。ついでに頭の円盤も、設定画の形状と第9話で描かれている形状の2種を用意。…気がついたら完全に2機分作っていて、それなりに大変だったわけですが、差し替えパーツを大量に余らせるよりは2機並べて飾ったほうが楽しいので、これでいいのです。
■青白いメカに見えていました
日本サンライズ刊「伝説巨神イデオン記録全集1」を参考に塗装。ブラウン管テレビの画面を思い出しながら、明度はやや高め、彩度はやや低めに調色しました。印刷の具合によって色味が変わり、1/550キットの箱絵のように明るい青緑色になっている資料もあるので、これを再現しても面白いと思います。
本体青はスカイブルー+クールホワイトに、インディブルー、純色グリーン、ミッドナイトブルー、キアライエロー、純色バイオレットを各少量。関節の紺はミッドナイトブルー+純色シアンに本体青を少量。マスキングテープを貼ったり剥がしたりする際に腕や脚を折りそうだったので筆塗りです。腰は上が緑系、下が茶系の自作グレー。加粒子砲口の透明部品はクリアーピンクとクリアーイエロー+クリアーオレンジ少量。青系のグレーでスミ入れをして、ツヤ消しと半光沢を混ぜたクリアーで塗膜をコートし、透明部品をはめ込んで終了です。
次回もそれほど動かない2体(変形と装甲脱着を省略したあれとあれ)の作例が登場します。
青島文化教材社 1/600スケール プラスチックキット
ギラン・ドウ
製作・文/田仲正樹
©サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
本誌ガンダム班および「宇宙船」誌の映像倶楽部に所属。「デルとトプも、もちろん作っています」とのこと。