『聖戦士ダンバイン』の「旧 1/72ビランビー」をほぼほぼスクラッチで完全攻略! 最新キットと比べても遜色ないスタイリングをご覧あれ!【サンライズ・メカニック列伝】
2023.12.18サンライズ・メカニック列伝 第59回 ビランビー【BANDAI SPIRITS 1/72】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2024年1月号(11月25日発売)
ビランビー(『聖戦士ダンバイン』より)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は新生HGシリーズの登場で俄然盛り上がりを見せる『聖戦士ダンバイン』から、新HG第2弾にも抜擢されたドレイク軍主力オーラバトラー(AB)「ビランビー」の1/72作例をお届けしよう!
ビランビーはドラムロに続く新型として開発されたAB。オーラ力の低い搭乗者でも容易にオーラ・マシンを扱えるようになる「オーラ増幅器」を搭載した最初の機体である。劇中ではバーン・バニングスをはじめとする、ドレイク軍の名のある戦士のほぼ全員が搭乗し、ダンバインやビルバインと激戦を繰り広げている。
作例を製作したのは、本誌連載「HJ A.R.M.S. 聖戦士ダンバインスペシャル」コンセプターを務めた田仲正樹。放送当時の『ダンバイン』キットでも特に製作が困難なキットとして知られる旧1/72ビランビーを完全に攻略するには、作例を最低でも3体製作する必要があると判断。本作例は3部作の2作目と位置付け、多分に実験的要素を盛り込み再製作を行った。限界を超えた作業量で完成させた、前作とはまったく別のビランビーをご覧いただこう。
[製作途中状態]
素組み
作例
全身のバランスと曲面表現の両方に問題があると言わざるを得ない旧1/72ビランビー。HJムック「HJ A.R.M.S. SP 聖戦士ダンバイン編」(以下、「ムック」)に掲載された田仲氏1作目の作例は「ゲドやダンバインよりは大きく力強いが、火器を多数内蔵したレプラカーンほどは強そうに見えない」ようにスマートな体型でまとめられているのに対し、本作例は目標を意図的に変え、「手脚にボリューム感のある、ガッシリした体型のビランビー」を狙い製作されたもの。ご覧のとおり全身がプラ板とパテの塊である。作例完成後になってまさかのHG化が発表されたのだが、最新キットと比べても遜色ないスタイリングになっているのがお分かりいただけるだろう
[頭部]
接着面を削ってくさび形に幅詰めした後、上下も幅を詰め、エラ周辺を削り込んで全体を小型化。アゴ前面にはプラ板を接着して形状を修正。目のモールドは削り取り、プラ板で作り直し。トサカはプラ板で自作し大型化。後頭部はエポパテでボリュームアップしている
[腕部]
肩外装はプラ板で前後左右に幅増し。ケーブルのリード線は可塑剤でプラが溶けるのを防ぐため、埋め込んだ真鍮パイプに差し込んでいる。上腕はキットのパーツを、前腕はHGガザCのものをそれぞれ芯にして、エポパテを盛って削り出し。拳はHGガンプラのジオン系機体のものと市販の丸指ハンドを加工したものに交換している
[脚部]
太モモはHGガザCの横ロール機構を内蔵させながら前後左右にプラ板で幅増しした後、エポパテで丸みをつけ、彫刻刀とヤスリで溝のモールドを彫った。ヒザ関節はHGガンダムF91とHGペイルライダーのものを組み合わせ、エポパテでコード状のモールドを追加したもの。ヒザ装甲はひと回り小さく削り込んだ1/48ビランビーのものに交換して大型化。スネは前面とふくらはぎ上部にエポパテを盛り付けて形状とボリュームを変更。足首関節には30MMアルトのものを移植し、ボールジョイント化。足のツメはエポパテでボリュームアップし、市販の小型ボールジョイントで足首に接続し可動化した
[胴体/オーラ・コンバーター]
胴体
オーラ・コンバーター
腹部と腰部を切り離し、それぞれ横幅を詰めた後、エポパテを盛って形を出している。首、肩、腰の各関節はHGデスアーミーのものを、股関節はHGザク・マリナーのものをそれぞれ移植して可動範囲を拡大。オーラ・コンバーターは1.5mmプラ板で上下に幅増しし、エポパテを側面に盛り付け大型化しつつ形状を修正。オーラ・ノズル内部と裏面にはスリット状のディテールを追加。翅パーツは表面のやや粗い梨地をペーパーでならし、小さい翅は左右を入れ替えて使っている
[武装類]
オーラ・ソードはエッジを立て、先端と鍔をシャープ化。鞘はボールジョイントでコンバーター右側面に接続させている。5連装オーラ・ランチャーは1/72バストールから流用し、グリップ基部をボールジョイント化して構えやすくした。専用オーラ・ショットはムックに掲載の作例を改修。旧1/72ダンバイン付属のオーラ・ショットにエポパテを盛り付けて形を出したものに、本作例が装備できるよう修正を加えている
■あえて変えてみる
第7話におけるニー・ギブンの手際の悪さに40年間イライラし続けているサンライズメカファンの皆さん、HGダンバインはご予約されましたでしょうか。「アニメ本編や設定画のスタイルを忠実に再現するぞ」という開発陣の強い意志を感じるその姿には、「そう、なぜかサーバイン風にアレンジが入ったものではなく、こういうダンバインがずっと欲しかったんだ」と心から思わされました。そして長年待ちわびた夢が現実となった今、我々がするべきは、「あの機体やあの機体もHGキット化されないかなあ…」と夢想することではありません。「HGダンバインに対抗して、他の機体の旧キットを作りまくること」です。これが俗に言う、キット化されるための「おまじない」というやつなのです。
2013年に始まった連載「HJ A.R.M.S. 聖戦士ダンバインスペシャル」では新HGダンバインと同じコンセプトの下で全オーラ・バトラーの作例が製作されましたが、これで完全に攻略できたとは未だに言い難いキットも存在します。そのひとつが1/72ビランビー。これはひとつやふたつ作って決着をつけられるほど生易しいキットではありません。そこで今回の作例は、申し訳ないのですが「近い将来に決着をつけるための習作」と位置付け、実験をさせてもらいました。過去の連載ではバーンのイメージでスマートな体型にまとめていましたが、半面、新型機の力強さを表現しきれていなかったという反省があります。ではこれとは逆に「こういう感じに描かれているカットがないわけではない」力強い体型…、具体的には手足が太く腰が小さい、昭和のレスラーのようなガッシリ体型(同時期の『バイファム』のラウンド・バーニアンがこれに当てはまると思います)で作ってみることで、新しい何かが見えてくるのではないか? と考えたのです。結果、なんだか海藻のようなものが見えて、その隙間から何かが見えた気がしています。3体目の作例をお待ちください。
■次は原色で塗ってみます
キットの組立説明書を参考に塗装。指定のコバルトブルーは爽やかすぎるので、敵メカ(悪役)らしく彩度を落とした青にしています。本編後半の地上編にはビアレスの色で塗られている機体が登場するので、これを色の塗り間違いではなく「ビショット軍仕様のビランビーである」と解釈して再現するのも面白いと思います。
本体青=コバルトブルー+純色シアンに純色バイオレットとクリアーレッドを各少量
腹部、ふくらはぎ=10色くらい混ぜた鈍い緑
関節等=自作の青紫系グレー
ツメ=自作の紫系ライトグレー
トサカはビビッドオレンジ+モデナイエロー1、眼はトサカの黄+クールホワイト微量。ソードは自作の緑系グレー。エナメル塗料でスミ入れ後に、半光沢とツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートして終了です。
次回もライバルが乗る機体の作例が登場します。…えー、ここでニュースが入ってきました。HGビランビー、発売決定だそうです! …このおまじないって、本当に効果あるよなあ…。
BANDAI SPIRITS 1/72スケール プラスチックキット
オーラバトラー ビランビー
製作・文/田仲正樹
ⓒ創通・サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
本誌ガンダム班および「宇宙船」誌の映像倶楽部所属。「旧1/72ビランビー製作のコツがわかってきたが、あまりわかりたくなかった気もする」とのこと。