HOME記事スケールモデル実機写真とともに見るセンチュリーシリーズ「F-100 スーパーセイバー」の1/32 ビッグスケールキット作例!【トランぺッター】

実機写真とともに見るセンチュリーシリーズ「F-100 スーパーセイバー」の1/32 ビッグスケールキット作例!【トランぺッター】

2023.12.11

ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー【トランペッター 1/32】●石原 肇 月刊ホビージャパン2024年1月号(11月25日発売)

実機写真とともに見るセンチュリーシリーズ「F-100 スーパーセイバー」の1/32 ビッグスケールキット作例!【トランぺッター】
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 

 ビッグスケールで楽しむ
最初の超音速戦闘機スーパーセイバー

 1955年から量産が開始されたアメリカ空軍のノースアメリカンF-100スーパーセイバーは、朝鮮戦争で活躍したF-86セイバーの正常進化型であり、初めて音速を超えた制式戦闘機、さらに「センチュリーシリーズ」と呼ばれる一連のアメリカ高性能戦闘機群の嚆矢としてその名を残している。F-100の唯一の1/32スケールモデルはトランペッターから発売されているが、その最初のリリースとなったF-100Dのキットを製作。1960年代のベトナム戦争中に施された迷彩塗装を迫力のビッグスケールで楽しむ!

トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 整備員フィギュア添えて
▲機体表面にははっきりとしたパネルラインとリベットがモールドされる。パイロットの乗降ラダーも付属、他のキットから流用の整備員フィギュアを添えてみた
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 内部エンジン
▲胴体後部は整備などで取り外された状態で製作できるようになっている。内部にはプラット&ホイットニーJ57-P-21Aエンジンを内蔵、金属系カラーで塗り分けた
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 尾部単体ディスプレイ
▲尾部は単体でもディスプレイできるように専用のドーリーも付属。無塗装が基本のノズル付近は高熱で焼けた色合いを再現している
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 胴体後部取り外し
▲F-100Dは主翼の再設計、垂直尾翼の拡大などでC型までの飛行特性を改善すると同時に、主翼下のウェポン搭載量も増加した
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 機首先端
▲細く絞られた機首先端に高効率のエアインテークを設置。下部にはピトー管の基部と主武装である20mm機関砲4門の砲口が見える
トランぺッター ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー 胴体後部取り外し2
▲トランペッターの1/32 F-100Dのキットは2007年に発売。その後2020年にF-100F 、2021年にはF-100Cもリリースされている

センチュリーシリーズの嚆矢
 第二次世界大戦後、「F」で始まる空軍戦闘機の呼称が100番台になると、超音速戦闘機整備計画として「センチュリーシリーズ」の開発がスタートし、最初に制式に採用された戦闘機がノースアメリカンF-100スーパーセイバーとなった。以降、マクダネルF-101ブードゥー、コンベアF-102デルタダガー、ロッキードF-104スターファイター、リパブリックF-105サンダーチーフ、コンベアF-106デルタダートが制式に採用され、欠番の機体は、試作または計画のみに終わっている。
 F-100スーパーセイバーは空軍に制式採用された初の超音速戦闘機で、機首先端のエアインテークから胴体を貫通したダクトでアフターバーナーを装備したエンジンと結ぶ直結構造で、後退角45度の主翼を採用したため、それまで開発された戦闘機と比べると先進的なスタイルとなった。試作機は1953年5月25に初飛行に成功し、量産型はF-100AのほかF-100CとF-100Dが生産され、複座型はF-100Fと呼ばれた。特に本格的な量産型となったF-100Dは核弾頭付き爆弾、ABM-12ブルパップ、AIM-9サイドワインダーなどの運用が可能となり、ベトナム戦争にも投入された。

キットについて
 センチュリーシリーズの機体のキットは、世界中で使用されたF-104スターファイターを除けば意外と少ないが、F-100Dスーパーセイバーのキットはモノグラム(1/48)、ハセガワ(1/72)、エッシー(1/72)などが発売され、トランペッターから1/32のF-100Dのほか、1/48のF-100Dと複座型のF-100Fが発売されている。
 今回製作するのは、トランペッターが続々とビッグスケールの新製品を発売していた2000年代の全盛期に登場した1/32キット。胴体前後が分割されJ57-P-21Aエンジンのほか、胴体後部を載せるドリー、機首側面の20mm機銃など機体内部までパーツ化された超豪華キットで、それだけにパーツ数もかなり多めだ。

組み立て
 コクピットの計器パネルは主なメーター部分がクリアーパーツで、メーターが印刷されたフィルムを組みあわせる方式で実感が高いが、その他の計器やサイドコンソールなどはデカールが用意されていないので、塗装で仕上げることになる。また、射出座席にはエッチングパーツが付属しているが、説明書には特に取り付け指示はない。ビッグスケールのキットの場合、尻りもち防止用バラストを入れるスペースなどが苦労するが、このキットでは機首の形状に合わせたオモリがセットされている。
 機首から伸びるダクトと直結するJ57-P-21Aエンジンは詳細にモデル化されており、内部のファンまでもがエッチングパーツで再現されているが、完成後はまったく見えなくなるのが残念。作例では胴体後部を外した整備シーンとして、エンジンは部分的に色調を変えて金属感を出した。エアダクトパーツとエンジンパーツは接着部分が少ないため、プラ板で補強してある。作例は各点検パネルを塞いでいるが、胴体下面の20mm機関砲もパーツ化されているので、パネルを開状態にすればリアルな機銃を見ることが可能だ。
 胴体後部は分割式で、専用のドリーもセットされている。胴体前後を分割しない場合は、左右片側の胴体前後のパーツを最初に接着してから、左右の胴体パーツを接着すると隙間などの処理が楽にできるだろう。
 主翼の前縁スラット、エルロンや尾翼ラダーなどの各動翼は分割されているため作動状態でも再現可能だが、若干の工夫は必要。胴体下面のエアブレーキは、駐機状態では油圧の関係で開いた状態になるのが基本。キャノピーも開閉が選択可能で、パイロットの乗降ラダーも付属している。
 脚柱はブレーキパイプまで再現されたプラパーツとメタルパーツ(別にブレーキパイプはプラパーツあり)の両方が付属するので、強度を考慮して好みのパーツが選択できるのがうれしい。
 空中給油プローブ(上面は迷彩塗装されている)は初期型の直線タイプと、後期型の曲線タイプが選択でき、機首のピトー管も折り畳んだ状態のパーツも用意されている(意外と太い)。
 ウェポンはAIM-9サイドワインダー空対空ミサイルやロケット弾ポッドなどが付属しているが、F-100スーパーセイバーが装備しなかったパーツも含まれているので、搭載する場合は注意が必要だ。

塗装
 デカールは、無塗装時代の511FBS/405FBWと309FBS/31FBW、ベトナム迷彩時代の309TFS/31TFWの3種類が用意されている。作例のカラーリングはベトナム戦争に投入された309TFS/31TFWを選択した。
 迷彩パターンは型紙を自作して塗装、色調は市販されているカラーを個人の好みで調色している。F-100の胴体後部エンジン周辺はエンジンの熱で塗料が溶けるため無塗装の機体が多いが、無塗装部分は機体によって異なるほか、胴体後部まで塗装して熱で溶けている機体などさまざま。また、キットには機体各所のコーションデータが付属しているが、ほとんど描かれていない機体も存在していた。

トランペッター 1/32 スケール プラスチックキット

ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー

製作・文/石原 肇

ノースアメリカン F-100D スーパーセイバー
●発売元/トランペッター、販売元/インターアライド●17600円、発売中●1/32、約46.9cm●プラキット


 F-100 スーパーセイバー
実機写真集

松島基地の航空祭で撮影されたと思われるF-100F
▲撮影場所は不明だが、松島基地の航空祭で撮影されたと思われるF-100F。無塗装は目立つため、ベトナム戦争に投入されると東南アジアに特化した、上面ダークグリーン、ミディアムグリーン、タンの迷彩塗装(通称:ベトナム迷彩)が導入された。複座型のF-100Fは主にベトナム戦ではFCA(前線空中指揮機)として使用された(写真/高橋泰彦)
QF-100D 実機写真
▲QF-100Dはベトナム迷彩を残したままで、視認性を高めるため機首、垂直尾翼、水平尾翼全面と主翼先端をインシグニアレッドで塗られている。折り畳まれたピトー管にカバーが付けられているのに注意(写真/石原 肇)
QF-100D 実機写真
▲用途廃止になってデビスモンサンABで保管されていたF-100Dは、民間機テストセンターで無人標的機(フルスケールドローン)のQF-100Dに改造された。撮影当日は、エプロンとハンガー内で計10機ほどのQF-100Dが確認された(写真/石原 肇)
フライト・システム社のF-100D 実機写真
▲フライト・システム社のF-100Dは全面ホワイトで、ダークブルーのストライプが描かれた美しいカラーリングに、民間籍を意味するNナンバーが胴体に入れられている(エプロンで4機確認)。同社のエプロンでは、民間籍のNナンバーを付けた、同社のF-4CやT-33Aを同時に撮影することができた(写真/石原 肇)
960年代に横田基地で撮影された8TFWのF-100D
▲F-100D/Fは、アジア地域の8TFWや18TFWなどに配備されていた。写真は1960年代に横田基地で撮影された8TFWのF-100Dで、垂直尾翼にはPACAF(太平洋航空団)のパッチが描かれている。胴体に描かれているのはバズナンバーで、F-100を意味する「FW」とシリアルナンバーの下3桁(写真/高橋泰彦)
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石原 肇(イシハラハジメ)

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