HOME記事キャラクターモデル待望のキット化「1/144 エンゲージSR3後期型」をキット攻略! プロモデラー桜井信之氏が製作ポイントを解説!【ファイブスター物語】

待望のキット化「1/144 エンゲージSR3後期型」をキット攻略! プロモデラー桜井信之氏が製作ポイントを解説!【ファイブスター物語】

2023.12.17

エンゲージSR3 後期型【アワートレジャー 1/144】 月刊ホビージャパン2024年1月号(11月25日発売)

エンゲージSR3 後期型 イメージカット

アワートレジャーの注目キットを攻略する

『ファイブスター物語』より、1/144 エンゲージSR3 後期型がアワートレジャーより待望のインジェクションキット化。キットはこれまでもF.S.S.造形で敏腕を振るってきたSyujyu氏が手掛けた1/100レジンキットの原型をもとに、T-REXの元木博行氏がインジェクションキット用に設計。一部ポーズ選択式の固定モデルとして完成させている。作例はMHキットを数多く手掛けてきた桜井信之が担当。PVC製左右ハンドパーツとダイキャスト製左右ソール(足底)パーツが付属する初回生産版をモチーフに、キット攻略のポイントも合わせて解説してもらった。ぜひ製作の参考にしていただきたい。

エンゲージSR3 後期型 正面1
▲コミックス第3巻に登場した後期型ジュノーン。コーラス・サード(23世)が自ら設計した初期型をもとにレディオス・ソープが改造。L.E.D.ミラージュのイレーザーエンジンを2基脚部に搭載し、ケタ違いのパワーを発揮する
エンゲージSR3 後期型 正面、背面
ベイル、スピア
ベイル裏面

▲ベイルとスピアは本体から取り外し可能。スピアから伸びるコードは市販のものを用意し、本体に接続できるようにした。デカールはキット付属の水転写式デカールを使用している


POINT1

頭部は2セット付属

上半身側面1
上半身側面2
頭部パーツ2種
▲頭部は2タイプ用意されている。左が原型となったレジンキットと同じ形状で、右が今回のオリジナルパーツ。この部分はどちらが正解というわけではなく、好みで選択して問題ない

POINT2

初回生産版はダイキャストパーツとPVC製左右ハンドパーツ付き!

足裏アップ
足底パーツ
足底パーツ 側面

▲足底パーツにはダイキャスト製のパーツが入っている。一般的にダイキャストパーツはディテールが甘い印象があるが、本キットのダイキャストパーツは非常にシャープなディテールが刻まれている。側面部は組み立て後も露出する部分なので、ペーパーをかけて表面の荒れをきれいに整え、フラットな面に仕上げると完成後の見映えがアップする

プラパーツとダイキャストパーツの比較写真
プラパーツとダイキャストパーツの組み立て時比較写真

▲足首・太モモの接続パーツはダイキャスト製のものも入っている。脚部を重くして安定性をアップさせる目的と思われる。通常のプラパーツとダイキャストパーツの比較写真。上が太モモ側、下が足首側で形状が異なっている

ランナーについているパーツ
ランナーから切り離したパーツ
▲このパーツはアンダーゲート仕様になっているので、プラ製のパーツを選択する場合は、ゲートを確実にカットし取り付ける
右腕アップ
▲右腕は設定画のようにストレートに伸びたタイプと、スピアを持たせるための曲がったタイプの選択式になっている
上腕パーツとシャフト
カットする部分にマークがついた写真
曲がり具合の比較写真

▲上腕内部で金属シャフトで接続する構造だが、マーク下部分をカットしておくと、後ハメが可能になる。そればかりかパーツの差し替えで右前腕をストレート⇔曲がりに交換することも可能だ。また初回版には軟質樹脂のハンドも入っているので、これと組み合わせれば剣を持ったポーズへの変更も可能だ

エンゲージSR3 後期型 正面2

1/144エンゲージSR3後期型キット攻略法

 ここからはキットの攻略法をポイントを絞って解説。ポイントはパーツの合わせ目の調整とアンダーゲートにあり!

❶ボディの調整

ボディパーツ各種
▲エンゲージSR3 後期型のボディは非常に複雑な面構成をしている。そのためパーツ分割も複雑で、多数のパーツを組み合わせることで、独特の形状を再現できる設計となっている
パーツ(H11)とパーツ(D5)
パーツ(H11)の差し込み穴を削る

▲特徴的な緑に塗装するパーツ(H11)とその上に取り付けるパーツ(D5)。ここは渋めにセッティングされているので、奥まで押し込んでも若干パーツが押し返される傾向がある。そこで差し込み穴を大きく削るといい。大きく削り、少々ブカブカ気味のほうが位置調整がやりやすくなる

パーツ(H11+D5)にパーツ(D3)を取り付け
パーツ(D3)カット前
パーツ(D3)カット後

▲先ほどのブロックに背面パーツ(D3)を下側から取り付ける。ここもキツめにセッティングされているので、ピンをカットし調整すると組み込みが容易になる

胸部アップ
パーツ(H11)
基部となるパーツ(F6・F7)の片方
基部となるパーツ(F6+F7)

▲先ほどの首周りのパーツ(H11+D5)にボディの基部となるパーツ(F6・F7)を左右から挟み込む。この時、H11のピンをカットしておけば、緑に塗装後に後ハメが可能になる。その際にはF6・F7パーツの接着面をほんのわずか(0.2mm程度、プラペーパー1枚ほど)に削って幅を狭くすることをお勧めする

パーツ(H11)+基部となるパーツ(F6+F7)
▲この作業を行うことで、首周り(H11)との接合ラインをよりフィットさせることができる。あまり神経質にならなくても良い部分だが、パテやプラペーパーで隙間を調整するよりも簡単で確実な方法だ
パーツ(D3)裏側 カット前
パーツ(D3)裏側 カット後

▲先ほどのD3パーツはF6・F7に取り付ける際、わずかに干渉する。ここのピンもカットして直接接着するほうが、ボディの組み上げが容易になる

D5パーツ
D5パーツ裏側
組み上げたパーツ

▲同じくD5パーツ裏側のピンもカットしておいたほうが位置調整の自由度が増し、最終組み上げが楽になる。この部分の組み立てに限らず、ボディブロックの各パーツはピンをカットし、形状優先で位置調整を行いながら接着・組み上げを行うほうが、より一体感のあるボディに仕上げることができるだろう

❷アンダーゲート

脚部アップ
ライナー
▲本キットでは多くのパーツにアンダーゲートが採用されている。これは側面部分の微妙な三次曲面や繊細なディテールを保護したい場合に用いられる成型方法だ
ゲートを少し残しライナーから切り離したパーツ2種
残ったゲートをヤスリで削り整える

▲まずニッパーで大まかにカットし、そのあとヤスリで丁寧に仕上げる。ここはパーツの合わせ目部分にあたるので、ゲート跡が平滑になるように削り取ることが大切だ

ヤスリ作業では整形仕切れないあまったゲート パーツ裏側
側面処理をした後のパーツ 裏側
パーツ表側

▲足首など一方向からのヤスリ作業では整形仕切れないパーツもある。このような場合、底面側を処理しても側面部にもゲート跡が残るので、側面からもヤスリをかけて丁寧に仕上げる。MHは繊細で複雑な面構成しているため、ゲートの設置部分も特殊なパターンを用いることがある

太モモパーツ 右側面
太モモパーツ 左側面

▲太モモブロックの内側は、分かりにくい場所にパーティングがあるので見落とさないように注意したい部分だ。なお、この部分の合わせ目は消さずにモールドとして利用するといい。外側は隙間なく接着し、通常通り合わせ目を消す

 先日、アワートレジャーからインジェクションキットのエンゲージSR3 後期型が発売となりましたので、今回遅ればせながら製作させていただきました。
 早速キットを見てみると、ランナーはすべてグレー単色で成型されており、僕の大好きなスケールキットのような格調高い印象を受けました。しかしインストとランナーを見てみると、機体の配色に合わせて細かくパーツ分割が施されており、それぞれの色となる部分が同一ランナーにまとめられています。これはエアブラシシステムを持っていない方でも、缶スプレーなどで塗装することも可能ですし、究極的にはランナー状態でそれぞれの色に一気に塗装、簡単仕上げで組み上げることも不可能ではありません(ゲート跡など、若干のリタッチ塗装は必要ですが)。加えて本キットは各関節可動式ではなく、完全固定ポーズでモデライズされています。そのため組み立て工程は可動キットに比べ格段に容易で、MH独特の雄々しい立ち姿を誰でも手に入れることができることを示します。古くからレジン製の無可動MHに慣れ親しんできた僕としては非常に馴染みがあり、同時に安心感のある仕様でした。実際に組んでみた感想も、他のメーカーでは感じることのできない、組み立て工程やパーツ分割や構造設計が新鮮で、大変楽しみながら製作することができました。
 塗装についてはパッケージ見本とは違うアプローチで塗っています。これまでも“白いMH”は何十騎も作ってきましたが、その時代や自分の年齢で好みも変化します。2000年代前半は、無条件にパール仕上げをしていたのですが、この十数年は真逆で、あえてパール仕上げを避けています。そこで今回は、ポルシェのレアカラーとして知られる「ムーンストーンホワイト」で基本色を塗っています。このかなりクールなホワイトはエンゲージ(ジュノーン)系には似合うのではないかと、かなり前から一度試してみたいと考えていました。現物はかなりの寒色ホワイトなのですが、月刊ホビージャパンの誌面ではどのように映っているでしょうか? 本騎のイメージカラーでもあるグリーンは、段階的なグラデーションを付けて、スネやベイルの特徴的なディテールを強調するように塗っています。
 いままで1/144でのインジェクションキットに恵まれなかったエンゲージ後期型。ぜひこの機会に体験することをお勧めいたします。

アワートレジャー 1/144スケールプラスチックキット

エンゲージSR3 後期型

製作・文/桜井信之

エンゲージSR3 後期型
●発売元/アワートレジャー、販売元/東京フィギュア●8580円、発売中●1/144、約15.3cm●プラキット●原型/Syujyu、設計/元木博行(T-REX)

ⓒEDIT,All rights reserved.

この記事が気に入ったらシェアしてください!

桜井信之(サクライノブユキ)

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2024年1月号

ご購入はこちら

ホビージャパンエクストラ vol.21

ご購入はこちら

月刊ホビージャパン2023年10月号

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー