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【ネタバレ注意】『トランスフォーマー/ビースト覚醒』をナナメに楽しむ方法!?

2023.09.09

ビースト覚醒をナナメに楽しむ方法!?●島田康治[TURKUS] 月刊ホビージャパン2023年10月号(8月24日発売)

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』場面カット

トランスフォーマー/ビースト覚醒

ビースト覚醒をナナメに楽しむ方法!?

 ハリウッドムービー最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』が大ヒット公開中(配給/東和ピクチャーズ)!! 男の子が大好きな要素が詰まったシリーズ最高傑作の映画を、公開後ならではのネタバレ込みのマニアックな視点からご紹介しよう。

構成・文●島田康治(TARKUS)
資料協力●赤尾将義

ネタバレ

このページにはネタバレが含まれております。映画を観る前にお読みになる際はご注意ください!!


まずは前作『バンブルビー』のトリビアから。

 『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の舞台は1994年。あの『バンブルビー』から7年が経ったことになる。映画第1作『トランスフォーマー』は2007年の出来事。果たしてこれが、ベイバース(マイケル・ベイ監督作品の通称)のリブートなのかつながっているのか? どうやら本作は『バンブルビー』の続編かつベイバースの「前日譚」という位置づけであるらしい。「上手くはつながっていないが、つながらないわけでもない」という印象。なによりTFたちが地球にやってきた描写が作品ごとに異なるのだ。
 実は『バンブルビー』製作の際、ベイバースとのつなつながりは、当初よりも曖昧にされたという。元々はあの冒頭のサイバトロンのシーンは存在せず、バンブルビーは当初から地球に滞在。つまりは『最後の騎士王』であかされた第二次世界大戦から2007年にサムの愛車となるまで、彼は地球で過ごしていた。当然、オプティマスたちは最後まで地球には到着しない。ラストでバンブルビーが並走するトレーラーも、似ているトレーラーという解釈なのだろう(とはいえ『最後の騎士王』と過去シリーズも上手くはつながらないのだが)。
 しかしベイバースとのつながりを否定しているわけでもない。多くの人類がその存在を知らぬまま戦いが行われる点も、第1作へのつながりを意識したものだろう。クライマックスにおける、第1作から引き継がれたオプティマスのテーマ曲とも呼べる旋律、「Humans and Autobots United」は、ベイバースとのつながりがまだ残っていることを示す証拠ではないだろうか。

ミラージュとノア・ディアス

 ともあれ『バンブルビー』の正当なる続編である本作は、時代設定が前作から7年後と明示された一方、新規の観客に向けて人間側のキャラクターも一新。バンブルビーが人間を友人だと語る(?)姿にその残滓を感じることができる程度に抑えられている(あのシーンでチャーリーと撮ったインスタント写真を見せるというプランもあった)。
 主役級のオートボットとして新たにミラージュを設定。トランスフォーマーを知らない人間を主役に据えることで、冒頭のノア・ディアスを乗せたミラージュのカーチェイスシーンは「ごく普通の車がエイリアンだったら?」というトランスフォーマーの極めて根幹となる面白さを堪能することができるだろう。
 求職活動中のノアが車泥棒に手を染めるはめに陥りミラージュを盗もうとするくだりやそのあとの友情は、アニメ第1作『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』のトラックスとラウル少年を彷彿させる。お調子者でボディの塗装を気にするナルシストチックな性格にも、トラックスっぽさを感じるところだ。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』場面カット2
▲チャラいが友情に厚く約束を守る男・ミラージュ。『ダークサイドムーン』のディーノと同一人物かどうかは不明

原語か吹替か?

 今回日本では、大ヒットした90年代の『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』をリスペクトして、音響監督に岩浪美和を起用。当時のキャストの参加や、自由奔放な吹替を思わせる予告編や舞台挨拶も話題を呼んだ。極めて丁寧に原語のニュアンスを拾った吹替のなか、高木渉演じるチーター(和名:チータス)が、語尾に「じゃん」と付けてくれるのが嬉しい。子安武人演じるオプティマスプライマル(和名:コンボイ)は、地上波時代のアドリブ禁止だったこともあり、違和感なし。夢のダブルコンボイが語り合うシーンは胸熱だ。
 とはいえこの作品、ぜひ原語でも観てほしい。いわゆるトランスフォーマーらしいワードがセリフの中に紛れ込んでいるのだ。マクシマルの誓い「No Matter The Cost」は、1986年全米公開のアニメ映画『トランスフォーマー ザ・ムービー』におけるオプティマスのセリフの引用。おなじみ「more than meets the eye」の言葉も登場する。

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』場面カット4
▲マクシマル側のセリフが少ないなか、チーターの「じゃん」が心地よい

とある組織のサプライズ登場!?

※この項目、最大のネタバレになるので映画を観ててからお読みください。

 あえて仔細は省くが当初『バンブルビ−』にも登場した秘密組織「セクター7」が予定されていたところ、監督が「G.I.ジョー」を提案。その撮影は極秘で行われ、セクター7の名刺を使った撮影すら実施された。役者にも直前まで知らされなかったというから驚きだ。
 1964年にハズブロが発売した12インチアクションフィギュア「G.I.ジョー」は、男の子向け着せ替え兵隊人形というこれまでにないコンセプトの商品としてヒットを記録した。そして1982年、3.75インチの個性や能力を備えたキャラクターフィギュアとビークルによる玩具ライン「G.I.JOE A REAL AMERICAN HERO(和名:地上最強のエキスパートチームG.I.☆ジョー)」としてリブランドされる。日本でG.I.ジョーというと着せ替え兵隊人形を思い浮かべる人もいるだろうが、こちらが実写映画にもなり今回言及されたG.I.ジョーにあたる(ロゴも映画第1作のものを使用)。
 ちなみにG.I.ジョーとトランスフォーマーの縁は深い。G.I.ジョーの設定やコミックを展開するため、ハズブロはマーベルコミックスと提携。この成功を応用したのがトランスフォーマーの展開だった。さらにはG.I.ジョーのCMに使われるアニメーションを、東映動画(現・東映アニメーション)が受注。これがサンボウ・プロダクションの設立にもつながり、トランスフォーマーを東映動画が請けるきっかけにもなった。つまりはG.I.ジョーがなければ、あの伝説のアニメは存在しなかったかもしれないのだ。

ハズブロユニバースの始まりか!?

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』 オプティマスプライムに乗ってゴキゲンの監督
▲オプティマスプライムに乗ってゴキゲンの監督は、ビーストウォーズ世代でコミックも愛好。クロスオーバーコミックを引き合いにあの組織を登場させた張本人である

 さらに劇場パンフのインタビューによると、監督のスティーヴン・ケイプル・Jrはインスピレーションを受けたタイトルとして、『ザ・ムービー』と『トランスフォーマー:ユニクロン』というタイトルのコミックを挙げている。これはコミック出版社IDWが2005年から展開してきたG1コミックの総決算として、2018年に発表した最終エピソード。ハズブロが保有するG.I.ジョーはもちろん、英国版「アクションマン」、ミクロマンの海外版「マイクロノーツ」、玩具タイアップコミックの先祖「ロム スペースナイト」、80年代には日本導入も検討された変形ビークル「M.A.S.K.」や「ヴィジョナリーズ」などをまとめた「ハズブロユニバース」を前提としたコミックである。現在IDWはトランスフォーマーのライセンス契約を終了しているためさすがにありえないだろうが、あるいはスクリーンでこうしたドリームチームを楽しめる日がくるのかもしれない。
 いくつかのトリビアを取り上げてきたが、こうしたことはあくまで枝葉の話でもある。シリーズ最高傑作と呼ばれる本作には、認められず悶々とする若者たちという現代的な人間ドラマと、兄弟愛、さらにはロボットとの友情、変形ロボ同士がおりなすアクションと冒険が詰まっている。脚本に強引な側面はあるものの、このボリュームを2時間にまとめた監督の手腕は評価されるべきであろう。トランスフォーマー映画の今後に期待しつつ、まずは『ビースト覚醒』を愉しもう!!

『トランスフォーマー/ビースト覚醒』場面カット3
▲ユニクロンとスカージの会話シーンは『ザ・ムービー』のガルバトロンのオマージュ

(文中・敬称略)


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 『ビースト覚醒』冒頭、テラーコンに襲われるジャングル惑星(ユーカリスとも?)にて先代マクシマルリーダーとして登場する、ゴリラのエイプリンク。その原典となるのが、このファンイベント「BOTCON 2000」で発売されたメタルスコンボイのリカラー品となる。BOTCONアイテムを出自とするキャラクターが映画に取り上げられたことも、大きな驚きとなった。

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