HOME記事キャラクターモデル『太陽の牙ダグラム』の「ソルティックH8 ラウンドフェイサー」を製作!可動機構刷新&フォルム調整など徹底工作で仕上げる!【サンライズ・メカニック列伝】

『太陽の牙ダグラム』の「ソルティックH8 ラウンドフェイサー」を製作!可動機構刷新&フォルム調整など徹底工作で仕上げる!【サンライズ・メカニック列伝】

2023.07.15

サンライズ・メカニック列伝 第54回 ソルティックH8 ラウンドフェイサー【タカラ 1/72】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2023年8月号(6月23日発売)

『太陽の牙ダグラム』の「ソルティックH8 ラウンドフェイサー」を製作!可動機構刷新&フォルム調整など徹底工作で仕上げる!【サンライズ・メカニック列伝】
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 特撮

ソルティックH8 ラウンドフェイサー(『太陽の牙ダグラム』より)

 サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今月は本コーナー初登場の『太陽の牙ダグラム』から、コンバット(CB)アーマー「ソルティックH8 ラウンドフェイサー」の1/72作例をお送りしよう!
 ラウンドフェイサーは多脚型のアビテートF44シリーズを越える高い運動性能、汎用性、輸送効率を有した、地球連邦軍の二脚歩行型CBアーマーである。頭部キャノピーの特徴的な形状に由来する機体名だが、劇中では開発した企業の名前である「ソルティック」と呼称される。物語序盤では主人公クリン・カシムが搭乗し、地球評議会議長ドナン・カシムの救出作戦に参加。事実上の初代主役メカであり、それが後に手強い敵となる展開は視聴者に強いインパクトを与えている。
 タカラSAK(スケールアニメキット)の作例は田仲正樹が私物を3セット投入して製作。41年前の記憶を基に可動機構を刷新し、同時にフォルムも調整。前回のダイン同様、通常の作例を遥かに超える時間と労力を投入した徹底工作を行っている。

ソルティックH8 ラウンドフェイサー
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 後ろ
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 跳ぶ
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 駆ける

[製作途中状態]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 素組み
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 作例

 1982年発売の1/72ソルティックは「タカラSAK初期の傑作キット」と現在も高い評価を得ているが、2023年現在の目で見ればポリ部品を使っていない可動機構の古さに加え、広い肩幅が気になるところだ。作例は「設定画風の立ちポーズ」と「劇中(特に第1話)の作画や箱絵風の、リニアガンの両手構え」の実現を目標に可動部を刷新し、同時に各部のボリュームを調整してフォルムを変更したもの。キットの部品形状を可能な限り活かしながら、頭部の大きなメカならではのバランスを模索し、広い可動範囲、保持力、強度を確保するために各関節を換装していく際の膨大な工作量を、製作途中の画像から読み取っていただきたい

[頭部]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 頭部 コクピット
ソルティックH8 ラウンドフェイサー頭部

 コクピットは左右の部品を接着後に底面を切り取り、内部を塗装後に後ハメできるように加工。口部ダクトは0.5mm延長し、動力パイプはアルミ線の芯に密巻きスプリングと市販のパイプパーツを被せたものに交換した。アンテナは破損対策を兼ねて0.5mm径の洋白線と真鍮パイプを組み合わせたものに交換。その基部も市販パーツを組み合わせたものに置き換え、それぞれをシャープ化している

[胴体]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 胴体胸部
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 胴体 股関節
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 胴体

 胸部の両端を2.5mmずつ、計5mm削って幅詰め。前後にも1.5㎜弱詰めて小型化し、首、肩、腹部の各関節にはHGザク・マリナーのものを移植しボールジョイント化。これらはすべて「リニアガンの両手構えポーズ」をとらせるための工作である。腹部はプラ板で上下に延長。腰部装甲は脚部を動かした際の干渉を避けるため分割し、それぞれプラ板でボリュームアップ。サイドアーマーはHGギラ・ズールのものを加工した。股関節は30MMアルトのものとHG(UC)陸戦型ジムのものを組み合わせて新造し、可動範囲を拡大させている

[脚部]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 脚部      ヒザ関節
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 靴部
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 脚部

 太モモは接着面に1.5mmプラ板2枚を接着してクサビ形に幅増し。上部と後面にもプラ板を接着してボリュームアップしたのち、可動に支障が出る部分を削り込んだ。ヒザと足首の関節は後ハメ化しつつ可動範囲を拡大するため、HG(UC)ガンダムEz8のものに交換。スネはヒザ装甲を切り離した後、可能な限りゆがみを修正。靴部はソール部分を切り離した後、エポパテで形状変更。市販のボールジョイントで接続し、若干だが接地性を向上させている

[腕部]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 肩ブロック
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 腕部関節詰め
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 腕部

 肩ブロックは横幅を1mm詰め、上面にプラ板を貼って形状変更。中にはHGザク(THE ORIGIN版)の肩関節を入れている。上腕は幅詰め+削り込みと延長で縦長に形状変更。ヒジにはHG(UC)陸戦型ジムのヒザ関節を入れ、ポーズによって前腕の取り付け角度を90度変更できるように、2ヵ所目の横ロール機構を追加した。前腕は手首の関節軸隠しを追加してより細長い形状へ変更し、25mmチェーンガンの銃口に市販の極小ノズルを接着。手首関節はボールジョイント化し、拳は市販の丸指ハンドを加工したものに交換している

[武装]

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 武装  ミサイルポッド
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 武装 ライフル
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 製作途中 武装
ソルティックH8 ラウンドフェイサー 武装

 ハンドリニアガンは、本体をプラ板で自作し大幅にボリュームアップ。銃口部は1/100ベイブルのレーザード・ライフルのものに、フォアグリップはHGジムⅡとHGジェガンの各ビーム・ライフルの部品を組み合わせたものにそれぞれ交換した。右肩のミサイル・ポッドは前面のパーツの突き出しピン跡が消しにくいため、同径のタカラ1/72クラブガンナーのものに交換。両肩側面のシールドはボールジョイントで接続して可動式とし、裏面に1mmプラ板を接着して厚みを出している

ソルティックH8 ラウンドフェイサー 銃構え

■なでたくなる球形の頭
 1982年の春、ガンダムプラモが売り切れていたので代わりに買ったのがタカラ1/72ソルティックでした。「箱や説明書の雰囲気がなんだか大人っぽいぞ。部品同士がピッタリと合ってすき間もできないし、部品の角がすごくカッチリしている。透明パーツや注意書きのデカールもついていて、完成させた状態も強そうでカッコいい…。これはすごいプラモデルだ!」 …このキットの魅力は少年時代の私にも容易に伝わり、気合いを入れて濃い成型色の上に白を筆塗りしたものです。その年の夏にはクラブガンナー、秋にはデューイ戦闘ヘリを目の色を変えて探し回り購入しました。「そう、SAKダグラムシリーズは一味も二味も違ったんだよ、このニンニク入りのハンバーガーのように」 …サンライズメカファンのみなさんも、サマリン博士を意識した立派なヒゲを付けながら大きくうなずいていることと思います。
 「この思い出のキットを作例として製作しよう」、私はそう考えてタカラのソルティックを引っぱり出しましたが、プラがカチカチで思うように改造ができず、童友社の再販版(名場面シール付属)で再挑戦。胸部の幅を詰め、太モモはプラ板で幅増し。「設定画風の立ちポーズ」と「劇中や箱絵と同じリニアガンの構え方」、とにかくこのふたつができるようにすることを目標に、HGガンプラの可動部を各関節に移植し可動範囲を拡大させています。
 それから16年が過ぎました(前回と同じ展開じゃないか)。現在の目で見ると関節機構が少し古かったので、最近の製品の可動部に交換。そして各部のボリューム調整を締め切り前日まで行いましたが、結果として完全に納得はできていません。やはり、のべ1ヵ月半やそこらで41年ぶん進化させようというのは無理があったようです。今回の経験を活かし、あれやあれを背中に装備した機体の作例でリベンジをしたいと考えています。

■乾いていないのに4回もなでてしまった
 講談社刊「テレビマガジンロボット大全集9 太陽の牙ダグラム」のカラーページを参考に塗装。暗めの緑で塗装されることが多い印象があるので、今回はわりと明るい緑に写っている劇中写真を見ながら調色しました。
本体緑=純色グリーン+インディブルー+ビビッドオレンジに、純色バイオレット、コバルトブルー、ハーマンレッド、キアライエロー、クールホワイトを各少量
上腕、太モモ等=自作の茶系ライトグレー
ミサイル・ポッド=ハーマンレッド+モンザレッド
 動力パイプは上腕のグレー+タンにブラウン少量。関節部は自作の青紫系グレーにしましたが、もちろん装甲の色にしてもよいでしょう。デカールを乾燥させている時間がなかったので、肩のマークと各部の逆三角形はモデナイエロー1+ビビッドオレンジ+ピンク微量で塗装して再現。 
 連邦軍はCBアーマー2機につき最低でも40人程度の整備・補給班を配備しており、機体は作戦行動が終わるごとに彼らがきれいに直しているはずですが、デロイア星の荒野や森林地帯で戦っている際中にはもちろん土で汚れたり、注意書きや塗装が剥げたりもするでしょう。それを再現したい場合は1/72の戦車や装甲車の模型を傍らに置いて、同じ汚れ方になるように気を付けながらウェザリングをするとよいと思います。
 次回はツメが長いあのメカの作例が登場します。

ソルティックH8 ラウンドフェイサー

タカラ 1/72スケール プラスチックキット“ スケールアニメキット”

ソルティックH8 ラウンドフェイサー

製作・文/田仲正樹

ⓒ創通・サンライズ

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田仲正樹(タナカマサキ)

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