HOME記事スケールモデル1/72「バッカニア 海軍型S.2C」をディテールアップ! スクラッチした空母ベースから飛び立つ姿に刮目せよ!

1/72「バッカニア 海軍型S.2C」をディテールアップ! スクラッチした空母ベースから飛び立つ姿に刮目せよ!

2023.06.13

ブラックバーン バッカニアS.2C【エアフィックス 1/72】 月刊ホビージャパン2023年7月号(5月25日発売)

ブラックバーン バッカニア S.2Cイメージカット

“女王陛下のバッカニア”いざ発艦!

 1/48スケールよりひと足早い2019年に完全新金型でリニューアルされたエアフィックスの1/72バッカニア。全世界のモデラーから再モデル化が久しく待たれていたが、その期待に十二分に応える素晴らしい出来の決定版キットとなっている。海軍型、空軍型、アフガニスタン紛争参加機の3種類のキットが発売済みだが、今回は海軍型S.2Cをセレクト。さらに機体各部にディテールアップを加え、飛行甲板のベースを自作し、空母「アークロイヤル」のカタパルトから機首を持ち上げて発艦態勢を取ったバッカニアとして製作。女王陛下の名のもとに、いざテイクオフ!

ブラックバーン バッカニア S.2C全体画像
▲全面をエクストラダークシーグレーに塗った空母「アークロイヤル」搭載の第809海軍飛行隊所属機を選択。キットには空母「イーグル」搭載機のマーキングも用意されている
ディオラマ正面
▲飛行甲板のベースはスクラッチビルド。0.5mmプラ板で甲板を張り、カタパルトとシャトルは細切りにしたプラペーパーの積層などで自作している
ディオラマ背面
▲発艦態勢としたため主翼のフラップとエルロンはダウン状態に。全遊動式の水平尾翼もトリム・フラップやマスバランスに角度を付ける改修を行った
ブラックバーン バッカニア S.2C 側面画像1
▲空母からの発艦時、尾部をカタパルトに固定し主翼の迎え角を約11度とするため、前脚は甲板から浮き上がった状態となる
ブラックバーン バッカニア S.2C 側面画像2
▲製作では発艦準備状況再現のため各部に加工を施した。また現用機のため控えめではあるが外板のうねりとリベットを追加。プラが柔らかいのでケガキ針で繊細に打ち込める
機首左側アップ画像
▲機首左側。エアインテーク周辺は胴体との合いがよくないので、インテークダクトを切り離して自由に動かせるようにしておき、ぴったり合わせるように工作
コクピットアップ画像
▲フェイスカーテンハンドルなどコクピット内部や乗員フィギュアもディテールアップ。キャノピー上面の破砕コードは極細の金属線を曲げて自作している
尾部アップ画像
▲エリアルールを採用し大きくふくらんだ尾部。エンジンノズル周辺は隙間が出やすいのでプラペーパーを貼り付けて整形。水平尾翼も角度を変更している
コクピット内部のパーツ
▲コクピット内部のパーツ構成。各部のスイッチ類は伸ばしランナーを輪切りにしたものを貼り立体感を出す。計器盤のメーターはキットのデカールを使用
回転式爆弾庫内部
▲回転式爆弾庫内部も実感のある出来。今回は閉状態としたが、後方隔壁のモールドを追加、電気系や油圧系の電線も赤や黒のエナメル線で追加している
カタパルトのシャトルと100円の大きさ比較画像
▲プラ板の積層から削り出したカタパルトのシャトル。機体とシャトルをつなぐブライドルワイヤーは古いギターの弦から自作、ピンは極細の針金を使用した

■女王陛下のバッカニア(海賊)
 コークボトル形の胴体、丸眼鏡形のエアインテーク、小さく頑丈な主翼、猛禽類の頭を思わせる機首をもつ黒い機体が、海面スレスレを弾丸のように接近する。搭乗員の練度の驚くべき高さも見て取れ、この亜音速機の超低空飛行には感動さえおぼえる。この機体は、1950年代のソ連海軍のスヴェルドロフ級巡洋艦の大量建造に対抗して生み出された。レーダーに捕捉されない超低空で飛行し、核爆弾によって艦隊をせん滅するための専用機である。この攻撃機は「女王陛下のバッカニア(海賊)」である。
 キットは、機首部と後部を左右に、中央胴体部を上下にパーツ分割して、エリアルールを取り入れた機体形状を正確に表現。内部の再現も見事で、複雑な主脚庫は特筆に値する。主翼両端をクリアーパーツ化。メインフラップは別パーツ。タイヤは自重変形。尾部のエアブレーキの開状態と主翼の折り畳み状態のパーツも備える。爆弾庫扉も開閉選択式。パネルラインはやや太目で一部省略はあるが、非常に美しい。スリッパタンク、マトラ・ロケット弾ポッド、通常爆弾が付属。
 マーキングは空母「アークロイヤル」と「イーグル」搭載機の2種。デカールは扱いやすく、細かい注意書きを貼るのも苦にならない。機首のレドーム部に15gほどのオモリを入れれば、みごとな雄姿で自立する。良質なバッカニアのキットを永年待ちわびた全世界のファンの要望に充分応える、このスケールの決定版的内容である。

■組み立て
 まず仮組みをして、胴体各パーツのすり合わせを充分に行った。その後に、外板のうねりとリベット、一部のパネルラインを追加。装備する兵装などを決め、主翼に必要な穴を開けた。発艦準備状況再現のため、エルロンを切り離し、水平尾翼全体は2度ほど下に向ける加工をした。ブライドルワイヤーを引っ掛けるフック部を開口し、カバーを自作した。
 機首部には、操縦席と前脚庫が要領よく組み込まれる。デカールで再現される計器盤は、スイッチ類を伸ばしランナーの輪切りで追加すると立体感が増す。マーチンベーカー社の射出座席はフェイスカーテンの持ち手が省略されているので、0.3mm銅線を輪にして追加。背当てシートの側面を覆うカバーを鉛板から切り出して置き換えた。パイロットはヘッドを切り離し、バイザーを下ろし酸素マスクを装着した状態に整形。キャノピー天井の内側に、極細針金で破砕用の爆薬の線を設置した。パイロットは組み立ての後半で着座させる指示だが、座席とともに組み込んだ。バスタブ型の前脚庫に極細針金で配線を追加。発艦準備状況のため、前脚のアームのフォークの角度を伸びた状態にした。念のために、胴体最後部に10gの板鉛を入れた。
 中央胴体部については、爆弾庫と主脚庫には極細の銅線などで配線をした。主脚にはブレーキパイプと主脚カバーに繋がるアームを追加。要所にエナメル塗料のクリヤーオレンジとクリヤーレッドを塗って、オイルの滲みを表現した。切り離したエルロンは20度ほど、メインフラップは45度ダウンした。エンジンのジェットノズル周辺部(パーツA3、A5、D31、D32)は分厚いので内側を削りシャープにした。機首の空中給油受油プローブには金属で軸を打ち、ピトー管は虫ピンに交換した。アンテナなどはエッチングのランナーから切り出して交換した。
 組み立てでの注意点は、エアインテークのダクト(パーツC1、C2)が長すぎ、外部エアインテーク部のパーツと胴体の間に隙間ができることである。左右のダクト部を切り離して整形し、先に外部エアインテーク部に接着しておくと上手くいく。
 後部については、水平尾翼のマスバランス部から上の角度を変え、着艦フックのディテールを追加した。ホールドバック基部を削り取り、プラ板とステンレス線で自作して発艦状況にした。

■塗装
 コクピット内にGSIクレオスのMr.カラーC72ミディアムブルー、脚、脚カバー内側、脚庫はガイアカラーの071ニュートラルグレーIを使用した。機体全面はスケールエフェクトを考慮して、Mr.カラーC333エクストラダークシーグレーBS381C/640にガイアカラーの071ニュートラルグレー1を少し加えて使用した。デカール貼り付け後にクリアー塗布、研ぎだして半ツヤクリアーで落ち着かせた。
 空母「アークロイヤル」のアングルドデッキは、飛行甲板を0.5mmのプラ板で、カタパルトとシャトルは細切りにしたプラペーパーの積層などで自作した。ブライドルワイヤーは古いギターの弦と鉛板などから製作。フィギュアは、イタレリのNATOパイロット&グランドクルーセットを改造して使用している。

エアフィックス 1/72スケール プラスチックキット

ブラックバーン バッカニア S.2C

製作・文/高橋祐二

ブラックバーン バッカニア S.2C
●発売元/エアフィックス、販売元/GSIクレオス●4510円、発売中●1/72、約26.8cm●プラキット

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高橋祐二(タカハシユウジ)

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